見出し画像

映画に見る女性の妊娠・中絶のリアル、おすすめ3選

ここ最近の映画のトレンドとして女性の妊娠や中絶をテーマにした作品を見かけるようになってきました。
日本よりも特に欧米では宗教的な理由で中絶が禁止されていたりしますので、進歩的なイメージもありますがこの分野かなり保守的だったりもします。

アメリカの中間選挙でも重要な争点のひとつが女性の中絶する権利だったりもします。そのくらい世界的に問題となっているテーマなんです。

今回は、現在公開中も含めてこのテーマを持った傑作を3本紹介したいと思います。


『あのこと』(12/2公開)

2021年 フランス 100分
監督:オードレイ・ディヴァン 原作:アニー・エルノー
出演:アナマリア・バルトロメイ、サンドリーヌ・ボネール、ルアナ・バイアミ

<あらすじ>
1960年代、中絶が違法だった頃のフランス。成績優秀で明るい未来が期待される女子学生のアンナは大事な試験前に予期せぬ妊娠が発覚し、いろいろな手段を試みるが…

公開したばかりの本作。この作品は、思ってた以上にハードな作品でした。
しかしながら間違いなく傑作でこの時代を象徴する作品のひとつです。
フランスって先進的なイメージがありますが1960年代ではなんと中絶が違法だったとのこと。
何かの本で読んだんですがフランスはカトリックなので中絶には今でも反対が多いらしいのですが、制度としてシングルマザーに対する補償が手厚かったりするとか。

主人公のアンヌは成績優秀で両親は労働者階級ですがそのままいけば両親とは違って高級取りになれるかもしれない学生です。
妊娠はその将来を阻むことになってしまいます。しかも中絶は違法で加担した方も罰せられる世の中。
アンヌは様々な手法を試そうとします。
終いには観ていて「もうやめてくれ〜!」と言いたくなるほどに。

今まで映画の中で中絶といえば、病院に入る前と出てきた後を描写するものがほとんどでしたが、中絶の実際のやり方や手術に伴う出血などを映すことはありませんでした。
ところが本作ではそこまでやります。
そこまでやることで、妊娠すること、中絶することの悩みや痛みを観客も共有することになります。
女性だけが被る苦痛。これを体験することになります。

この辺りが今っぽいなと思います。
映画は時代を反映するメディアですがその先端をいってるのが本作です。

映画館でボクの隣に座っていた若い男性は痛いシーンで「うわっ」って思わず反応してましたし、反対の隣に座っていたおじさんは映画見終わった後に「ふぅ」って声に出ちゃってました笑
「わかるぞー」って思いましたね、男子はご注意ください笑

中絶が罪とされていた時代。言葉にすることすら憚られた「あのこと」。
このタイトルにはそんな意味が込められています。
映画館で公開したばかりなのでぜひ劇場でご覧ください。



『セイント・フランシス』

2019年 アメリカ 101分
監督:アレックス・トンプソン 脚本:ケリー・オサリヴァン
出演:ケリー・オサリヴァン、ラモナ・エディス・ウィリアムズ、他

<あらすじ>
34歳、独身、アルバイト。イマイチ冴えないブリジットは家政婦の仕事をゲットする。レズビアンカップルやその娘でお転婆なフランシスとの出会いで、ブリジットの生活も変わってゆき…

こちらは今年の8月に公開された作品。
Filmarksでもかなり高評価で話題となってました。
等身大の女性を主人公が新しい出会いによって少しだけ成長する物語。
コミカルで『ブリジット・ジョーンズの日記』みたいに女性の共感が多いタイプの作品かと思います。

30歳を過ぎて独身で彼氏もおらず、定職にもついていない。
親とか周囲の目線も気になるし、将来についての投資をしている訳でもない。
そんな中でブリジットは知り合ったばかりの年下男性との間で、妊娠してしまいます。
結婚する訳でもなく中絶を選択するのですが、本作でも今までは描かれなかった中絶に伴う出血までをしっかり描いているところが新しくて今の時代に作られた作品って感じがします。
ブリジットが言う「私ばっかり損をしている!」ってセリフが妊娠・中絶に対しての女性の苦痛と、男の無力さをよく表しています。

本作を作ったのは主演女優でもあるケリー・オサリヴァン。自ら脚本を書き、プライベートのパートナーでもあるアレックス・トンプソンに監督を依頼して完成させた作品なんです。
グレタ・ガーウィグのようにまた新しい才能が出てきて嬉しいし、応援していきたい。

今年の8月公開なのでまだレンタルや配信はありませんが、一部劇場公開まだしてますし、もう少しで配信も始まると思います。
今の時代を象徴する作品なのでこちらもおすすめです。



『17歳の瞳に映る世界』

2020年 アメリカ/イギリス 101分
監督・脚本:エリザ・ヒットマン
出演:シドニー・フラニガン、タリア・ライダー、他

<あらすじ>
ペンシルベニア州に住む高校生のオータムは予期せぬ妊娠をしてしまう。
従兄弟であり親友でもあるスカイラーはバイト代をため、中絶の禁止されているペンシルバニアから中絶手術を受けるためニューヨークへ向かう。

この作品は、昨年公開で個人的にもかなり好きな作品でした。
アメリカは州によって法律が違うのでこの主人公たちは自分達の住むペンシルバニアでは違法な中絶を、他州に行って行おうとするのですが、これはアメリカではあるあるらしいです。

高校生のためアルバイト代をかき集めても交通費と手術代を捻出するのはとても大変です。ギリギリのお金を持っていったのに病院からは「明日また来てくれ」と言われて、宿泊費なんかない。。
ここでも女性ばかりが負担する苦悩が描かれていきます。

オータムが訪れたのは望まぬ妊娠をしてしまった女性をサポートするプランドペアレントフッド(全米家族計画連盟)で、そこでは手術前にカウンセリングも受けます。
その時にオータムが受ける質問が、
「この1年間で相手がコンドーム装着を拒否した?」
「相手が避妊の邪魔をして妊娠させようとした?」
「相手に脅された?」
「相手に殴られたり、暴力をふるわれた?」

それを、
「一度もない/めったにない/時々/いつも」(Never/Rarely/Sometimes/Always)から1つ選び答えていくのですが、思い出したくないことの辛さなどが伝わってきて、涙が出るほど印象的なシーンなんです。

そしてこのシーンのセリフ「Never、Rarely、Sometimes、Always」がこの映画の原題だと知った時にまた感動しちゃいました。
タイトル原題のままでいいじゃん!って思いました。

この作品はアマプラで配信中でした。
他でもレンタルしてますので、この機会にぜひ。おすすめ映画です。



最後に

今回は、ここ最近のトレンドでもある女性の妊娠と中絶に関するテーマの映画を取り上げてみました。
アメリカ中間選挙の重要課題のひとつでもあることでも明らかなように、欧米を中心に世界の関心事項でもあります。
映画は時代を反映するメディアですのでこう言うところをしっかりと見出してチェックしておくのは大事です。

今回取り上げた3作品はどれも傑作でおすすめ作品ですので、ぜひこの機会に鑑賞してもらえると嬉しいです。


最後までありがとうございます。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?