【女の一生】母の読書会勧誘と宮本輝『錦繍』
私が中学生の頃、
なぜか、一度うっかりと
母の、聞いてはいけない話?を
盗み聞いてしまった。
40年前の和歌山の田舎町には
まだまだ珍しい読書会を
主宰しようとしていた、
とあるおば様が家にきて、
母にも参加の勧誘に来てたんです。
子供は妙に空気を読む生き物です。
照れ屋な母は、その催しを
嫌がってるのがわかりました。
2階から降りる階段の途中で
私は足を止めました。
一階の応接間に降りては
いかないほうがいい、、、。
おばさんの話が聞こえてくる。
次回の課題図書は宮本輝『錦繍』。
素晴らしいのよ、
ぜひお読みになって
読書会にも顔を出してよ、
と誘うおばさん。
その時、苛立ちが交じる
母からビックリな発言が。
『錦繍』は
素晴らしい名作だとも思う。
宮本輝さんも嫌いじゃない。
でも私の実人生にも
筆舌に尽くせない思いも体験も
ありました。
読書会で人生を語り合うなんて…
恥ずかしくて、私には…、、、
??!!
これは子供が聞いてはいけない話だ。
私はちょっと足が震えた。
まだ中学校一年生だった。
私の頭は、まだ
女子を追いかけ、
モテたい盛りの幼稚な男子。
宮本輝も錦繍も、知らなかった。
ただ、母の発言は、
私の知ってる母ではなく
「女」としての発言だと直感した。
息子には、衝撃が強い。
母ではなく、女性であることを
突きつけられるのは。
母はその後、話題をはぐらかし、
おばさんは帰った。
母は読書会に入らなかった。
母は、違う人が主宰した会なら
入ったろうか。
子供としては、絶対に
一緒には行きたくない…(笑)。
それよりも、40年前に、
しかも、和歌山県南部は
武骨で寡黙がよしとされる風土。
読書会は土壌には
合わないんでしょうね。
後日、ちらっとみたら、
母の本棚には
宮本輝『錦繍』の文庫が入ってた。
『錦繍』のような波乱万丈な
男女の運命の物語と
ためをはるような母の人生とは
どんなものだっただろう?
それは聞けない。
聞くのも怖いな。
その後、息子の私が
宮本輝を次々むさぼるよう
読んだのは、
私の知らない母の人生に
引っ張られたのか、どうか?
いや、それはないか(笑)。
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