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【旅エッセイ】作家の数だけ旅がある?
ここに1冊の本があります。
村上春樹『遠い太鼓』
講談社文庫。
村上春樹の旅エッセイとしては
一番最初の本です。
これに出てくるのは、ローマ、アテネ、
ミコノス、スぺツェス、クレタ、
シシリア、トスカーナなど多彩。
村上春樹が『ノルウェイの森』や
『ダンスダンスダンス』を集中して
書くために日本を離れて、
地中海地域を住みかにしてた頃の
何気ない日常の体験を書いたものです。
この本が1990年に出版された
おかげ?せい?で、
ギリシアに村上春樹ファンが
日本からどっと押し寄せたほど。
他にも村上春樹には
旅エッセイが多く、
『雨天炎天』新潮文庫。
これはギリシア正教の寺院が
ひしめくアトス半島を巡礼する
ハードな旅がつづられるんですが、
なぜか自分も行きたくなる…。
『もしも僕らのことばが
ウィスキーであったなら』は
スコッチウィスキーの聖地巡り。
こちらは洋酒好きな方にオススメ。
新潮文庫。
禁酒中の今の私には刺激が
強いので我慢してます。
あと『辺境・近境』という
メキシコや四国を旅する
気さくな旅エッセイ集も。
新潮文庫。
『ラオスにいったい何があると
いうんですか』(文春文庫)も
ラオスやアイスランドや
アメリカに行った旅行記を
まとめたもの。
こう並べると、村上さんは
趣味が旅行なんだな?と
思いそうになるじゃないですか?
でも『使いみちのない風景』(中公文庫)
というエッセイを読むと、
若い頃、自分のプロフィールを
編集者が勝手に書いていて、
そこに、趣味:旅行と
書かれてあった時は
違和感を感じたそうです。
自分では旅行好きではないという。
村上さんにとって
「旅行」というより、
「移動」をしてるというのが
実感としてピッタリらしい。
その話を読んだときは、
うわ!作家のプロフィール、
私も編集者時代、少し盛り気味に
書いてた記憶があったので、
自分も叱られた気がしました。
少なくとも、プロフィール文は
テキストを一度、作家に確認で
見せるべきでしたね…。汗。
『やがて哀しき外国語』という
二年間のアメリカ滞在記も。
(講談社文庫)
これが一番、春樹自身がなんとも
寛いで書いているようなので、
私は旅エッセイでは一番好き!
でも、2年の滞在記は
「旅」ではないかあ?
他にも、オリンピックが
開催された時期に行った
『シドニー』(文春文庫)という
シドニー滞在記や
アメリカに3年住んだ滞在記
『うずまき鳥のみつけかた』
(新潮文庫)は異色の
外国エッセイ集でした。
また、共著でしたが、
名古屋や熱海、ハワイ等をディープに
散策しては思索する『地球のはぐれ方』
(文春文庫)もあったっけ。
やっぱり、村上春樹は
旅行が好きだと思うなあ(笑)。
でも「旅」自体を極めようとする
沢木耕太郎やたかのてるこさんとは
何かが違うことは確かですね。
また、吉本ばななや角田光代も
旅エッセイをたくさん書いてますが、
旅や現地の魅力を書こうとするより
自分がどう感じたかに力点があるので、
そこは村上春樹に近いでしょう。
旅エッセイとひと言で言っても、
作家によってすべて違うんですね。
作家の数だけ旅があるみたい。