ブックカバーが素敵すぎる書店「正和堂書店」に行ってきた話
本屋さんって面白いんです。
何を今さらという感じですが、小規模の書店や個人書店などが増えて、本屋さんのバリエーションがすごく広がっています。
選書のオリジナリティだけでなく、コンセプトやお店作りから従来の本屋さんの枠を飛び越えているところもあって、本屋さんという存在の可能性がぐんぐん拡張されているように感じます。
それなのに。
思えば、行くのは通勤途中にある大型チェーンばかり。
仕事の新刊チェックとして売り場を眺めるだけで、「本屋さん」という場所にあまり向き合えていなかった気がします。
本屋さんが減っている今こそ、いろんな本屋さんに行くべきではないか。
いろんな本を買って、いろんな人と話して、いろんなことを考えて。
そして、「本屋さんって楽しいよ!」と発信しよう。
そんな当たり前のことを、ちゃんとやろうと決意したのでした。
というわけではじめた、「おもしろい本屋さんに行こう」企画。
モリが訪れた本屋さんを、誰に頼まれてもないのに勝手に紹介していくコーナーです。
今回のお店は、「正和堂書店」さん。
SNSでも有名な、ブックカバーが可愛すぎる書店です。
(★写真撮影、SNS公開の許可はいただいております)
※※※
今回ご紹介するお店
「正和堂書店」
大坂の人にはおなじみ、鶴見緑地公園。
花博の会場跡地に建てられた広大な公園で、球技場やキャンプ場などを備える憩いの地です。そんな鶴見緑地に繋がる地下鉄・鶴見緑地線に揺られて辿りつくのが、今福鶴見駅というところ。
駅から道なりに5分ほど歩くと、ピンク色の大きな看板が見えてきます。テナントビルの1階で、庇には「BOOK」と書かれた文字。
そうです、このお店が目的地の「正和堂書店」さんです。
庇が大きく張り出ているので、一般的な路面書店よりも軒下に余裕があります。そのおかげか、置かれている雑誌の量も豊富。
入口に目を向けると、「ゆ」と記された暖簾がかかっていて心が和みます。
僕がチョロいだけかもしれませんが、歓迎されている気持ちになるんですよ。肩肘張らずにお店に入れるというか。
「このお店、なんか好きだなあ」と入る前から親近感を覚えたのでした。
※
店内はけっこう広いです。これまで紹介してきた本屋さんの中で、最も売り場面積が広いお店でしょう。
入って右側に雑誌や児童書売り場があり、中央は雑貨など。
左側エリアが奥深く伸びており、その他書籍がズラーっと並んでいます。
このコーナーで訪れる本屋さんは「独立系書店」と呼ばれるお店が多いですが、正和堂書店さんはお手本のような「街の書店」。
雑誌から参考書まで、オールジャンルの本を幅広く取り揃え、地域に住む人々のニーズをばっちり抑えています。
僕が訪れた時も、お店はお客さんでいっぱい。
お邪魔にならぬようタイミングを見計らいつつそそくさと撮影させてもらったので、いつもより撮影が粗いですがご容赦ください。
※
この正和堂書店さん、とある特徴をお持ちです。
それは、「ブックカバーがめちゃくちゃ可愛い」こと!
もしかしたらtiktokやインスタで見かけたことがあるでしょうか。まるでクリームソーダのような。アイスキャンディのような。
遊び心とセンスに満ちた、とってもデザイン度の高いブックカバーを。
この正和堂書店さんでは、お店オリジナルのブックカバーを作成されており、本を買うと好きなカバーを巻いてもらえます。
このカバーが本当に素敵で、ブックカバー目当てに足を運ぶお客さんも多数。ニュースでもよく取り上げられており、大人気の本屋さんなのです。
かくいう僕もブックカバーがどうしても欲しくて、でもどうせならお店で買いたくて。年末の帰省のついでに足を延ばして訪れてみたのでした。
ちなみにブックカバーは単品で購入することもできます。
ミニチュアサイズのようなメッセージカードも売られていて、文房具好きとしては悶絶……
※
このように正和堂さんといえばブックカバーばかり紹介してしまいがちですが、僕がお店で感動したのは「本屋さん」として魅力的なところ。
いろんな切り口で売り場が作られていて、そのどれもが面白いんです。
たとえば「おうち喫茶」。
これは先ほどの「ブックカバー」と「お店のセレクト本」と「読書のおとも」の3つがセットになったオリジナル商品です。
本のタイトルは隠されていて、ヒントはカードに書かれた内容のみ。あとはカバーの雰囲気を頼りに、自分の感性を信じて好きなセットを選びます。
新しい本との出会いに繋がるし、帰ってから袋を開くワクワクもあるし、「体験」を楽しむことができる素晴らしい企画だなあと思いました。
正和堂書店さんは各SNSを巧みに活用されていることでも有名で、総フォロワーは10万人以上!(ぜひ検索してみてください)
SNSで毎日投稿されている「おすすめ本」をまとめたコーナーも発見しました。
色んな本屋さんがSNSを駆使されていますが、「お店のSNSで紹介した本の棚」って、ありそうで意外とないんですよね。
これ、実はすごく大事だなあと。
ほかにも「おお!」と思わず声が出たのは、「フォロワーさんに教えてもらったランキング」。
フォロワーさんにおススメの本を教えてもらい、その本をフェア展開しています。「本屋大賞の中で一番好きな一冊」や「○○さん(作家名)のおすすめの本」など、切り口も様々。
SNSを巧みに使う正和堂書店さんならではですが、見せ方としても目を惹きますし、なにより読者目線なのが素晴らしいですね。
情報の信頼価値が変わってきていて、権威性より口コミが重要視されつつあります。自分と同じ感覚の人たちが勧める本というのは、有名な人の推薦よりも受賞の帯よりも、なによりも刺さるのかもしれません。
※
正和堂書店さんの売り場をうろついていて、すごく印象的だったことがあります。
それは、店員さんの元へひっきりなしにお客さんが話しかけに来ること。
「あの本はありますか?」「この本どこにありますか?」
年配の人もいれば若い人や子供もいて、年齢性別問わずたくさんの人が本について問いかけていました。
その光景がなんとも嬉しかったんです。
尋ねている人たちはおそらく地元の方々で、ブックカバー目当てではなく日常の延長として本を買いに来ているように見えました。
普通の人たちが、ふらっと訪れたくなる本屋さん。そしてまた来たくなる本屋さん。
ああ、これこそ街の本屋さんの理想の姿だなあ、と。
雑誌やマンガ・文房具を買いにきたついでに、「ちょっと気になるな……」と思って知らない作家さんの本を手に取る。ブックカバーが可愛いからもう一冊文庫本を買っちゃったりする。
この地で当たり前の日々を営む人たちが、少しずつ本を好きになっていく様子が瞼の裏に浮かんできたのでした。
それらはひとえに正和堂書店さんが読者目線でいろんな取り組みをされているからでしょう。
ブックカバーはもちろん、売り場づくりやSNSの活用もすべて。
本屋さんが苦しいと言われますが、まだまだやれることはある。
そんな希望を貰えた素敵な本屋さんでした。
正和堂書店さんは大坂の中でも北東に位置して、少し乗り換えなども必要ですが、ぜひ一度足を運んでみてください。
ちなみにブックカバーはオフィシャルサイトからオンライン購入もできますよ!
★★★
<最近読んだ本>
原田マハ『本日は、お日柄もよく』
言葉には力がある。言葉を信じて、私たちが一歩を踏み出すことで、きっと世界も変えられる。 スピーチライターという仕事に魅せられた主人公の、まっすぐで熱い物語。 こんな世界でも、きっとより良くできるはず。
★過去の記事はこちらのマガジンから。
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