物理でライフ 第3回 気温とか湿度とか
2024年10月22日(火)20:00-21:00
Clubhouse内で行われた,
さらさら談話室「物理でライフ」第3回目の要約です.
※会話の順番と記載内容が多少異なっている場合がありますがご了承ください.
前回は圧力の話から気圧の話,台風の話題に話が転がっていきました.そんなこんなで,今回は湿度の話題に.
1.「湿度」って何?
「湿度」と聞くと高いとムシムシ...低いと乾燥というイメージをもたれているのではないかと思います.その感覚は間違っていなくて,まさにそのイメージ通りだと思います.
湿度はおおざっぱに言うと空気中にどの程度の水(水蒸気)が含まれているかということになります.湿度の表現方法もいくつかあります.大きく分けると,
・絶対湿度
・相対湿度
の2つがあります(細かく分けるともっとあるようです).
なぜ2つあるのか考えてみましょう.
空気の中にどのくらいの水蒸気を含むことができるかというのは温度によって変わります.気温が高いと多くの水蒸気を含むことができます.逆に気温が下がると含むことができる量が減ります.
空気の中に水を入れる仮想的なコップがあるとすると,気温が高いとコップが大きくなりたくさん水を溜めることができます,気温が下がるとコップが小さくなるので,溜められる水の量は減ります.すこしはイメージができるでしょうか?.
そのコップにひたひたまで水が溜まった状態が湿度100%ということになります.
ところで,コップの大きさは温度によって変わるので,同じ湿度50%でも夏の湿度50 %と冬の湿度50 %では,同じ体積に含まれる水の量が違います.大きなコップに半分まで水が入っているのと,小さなコップに水が半分まで入っているのでは,同じ50 %でも水の「量」は違いますよね?
その違いを表すために湿度の表現方法も大きく2種類あるのです.
(1)相対湿度
ある温度で空気中に含むことができる水蒸気の最大量(これを飽和水蒸気量といいます),つまり先ほど想像してもらったコップに対してどれぐらいの割合の水蒸気が含まれているかを表現したものが相対湿度です.
みなさんが日常的に使っている,湿度〇〇%というのはこの相対湿度です.割合なので単位は「%」が使われます.
相対湿度は水蒸気の総量ではなく,その温度のコップの何割まで水が溜まっているかに着目した量です.
(2)絶対湿度
コップの大きさに関わらず,空気中に今,どれだけの水蒸気の量が存在するかを表現したものが絶対湿度です.
一般的には,空気中の1 m × 1 m × 1 m( = 1 m$${^3}$$)の空間に何グラムの水蒸気が含まれているかを表すので,単位は「g/m$${^3}$$」が使われます.
絶対湿度はコップの大きさは関係なく,水蒸気の総量に着目した量です.
夏の湿度50 %と冬の湿度50 %では,相対湿度で表現すると同じ50 %ですが,絶対湿度で表現すると,夏の方が大きい値になります.同じ50%でも冬の方が乾燥して感じるのは,絶対湿度(空気中の水蒸気の量)が小さいためなのです.
エアコンで冷房をかけているときに室内の温度が下がったけど湿度がほとんど変わっていない,でもなんだかサラッとした感じがするという経験があるかもしれません.
これは,室温が下がり,部屋の中の水蒸気をためるコップが小さくなっているので,絶対湿度が下がったためです.
ちょっと具体的な量で表してみましょう.
こちらのサイトで計算してみると,
30℃で相対湿度50 %の時の絶対質量は15.2 g/m$${^3}$$
10℃で相対湿度50 %の時の絶対質量は4.7 g/m$${^3}$$
となります.同じ50%でも3倍くらい水蒸気の量が違いますね.
さて,Clubhouseの中で絶対湿度がどういうときに使用されているか質問されたのですが,私も詳しくは知りませんでした.
確かに絶対湿度は日常的に耳にすることがほとんどないのですが,今流行のAIに聞いてみると,製造業における品質管理や農業分野などでは利用されているようです.確かに,錆びては困るような製品や,湿気で劣化するような材料を製造している分野,乾燥が品質に影響を与えるような農業分野では,相対湿度よりも,実際にどれくらいの水蒸気量があるかの方が重要でしょうね.
<参考>湿度の略語
相対湿度は,英語でrelative humidityといいます.したがって,頭文字を取って,「RH」と表現されることがあります.
一方,絶対湿度はいくつか定義があるのですが,先ほど紹介した空気の容積[m$${^3}$$]に対して含まれる水蒸気の質量[g]で表したものを容積絶対湿度といいます.英語ではvolumetric humidityというので,頭文字を取って「VH」と表現されることがあります.
2.「暑い」ってどういうこと?
気象情報などをみていると「|不快指数《ふかいしすう》」という言葉が時々出てきます.これは,気温と湿度をもとに算出される指標です(もともとは,アメリカで冷房を設計する際に考案された指標らしいです).
先ほどは湿度の話題でしたが,そもそも「暑い」というのは何なのでしょうか?
わたしたちが暑いと感じるのは空気の温度(気温)が高いときですね.空気は主に約79%程度の窒素(N$${_2}$$)と約21%の酸素(O$${_2}$$)で構成されています.その他に二酸化炭素(CO$${_2}$$)なども存在しますが,割合としては0.04 %程度です.
空気中の窒素分子や酸素分子は絶えず動き回っているのですが,温度が高いというのはこの動きが活発な状態です.動きが激しいというのは「エネルギー」が高い状態です.「熱」というのは「エネルギー」の1つの形態です.
気体の分子が皮膚にぶつかると皮膚を構成する分子がエネルギーを受け取ります.そうすると皮膚を構成する分子や体内の水分子の温度が上昇し,温痛覚を介して熱い(暖かい,暑い)と脳が認識するわけです.
さて,先ほど温度が高くなると空気中に含むことができる水の量が増えるという話題がありました.これは,水分子も温度が上昇すると活発に動くようになるので,水の表面から気体(水蒸気)に変わって空気中に飛び出す量も増えていくためです.
そういう視点で見ると,気温が上がると「空気中に含むことができる量が増える」というよりは「空気中でふらふらしている水分子が増える」といった方がわかりやすいかもしれませんね.
ちなみに100℃になると,水の表面以外の水もどんどん水蒸気として外に飛び出すようになります.これが沸騰という状態です.
3.「結露」はなぜできるの?
冬になると空気は乾燥しますが,窓に「結露」が生じます.子どもの頃,よく落書きをして遊んだのではないでしょうか?窓だけではなく,お風呂上がりに洗面所の鏡にもよく結露がついています.一方,夏場には冷たい飲み物を入れたグラスに水滴がたくさんつきますね.
この現象はどうして起こるのでしょうか?
例えば,先ほどの計算サイトで室温25℃,相対湿度50%の時の絶対湿度計算してみると,11.5 g/m$${^3}$$となります.
冬の窓が外気で5℃まで冷やされたと仮定してみましょう.
気温5℃の空気には相対湿度100%でも6.8 g/m$${^3}$$しか含むことができません.
つまり,
11.5 g/m$${^3}$$ - 6.8 g/m$${^3}$$ = 4.7 g/m$${^3}$$
はあふれてしまいます.
数字ばかりでむずかしいーと感じた人は,先ほど想像した空気中のコップを思い出してみましょう.
室温25℃,相対湿度50%の時のコップに11.5 gの水が入っています.このコップの水を気温5℃,相対湿度100%のコップに移そうとしても,このコップは最大で6.8 gしか入らないので,無理矢理注ぐとこぼれちゃいますね.これが「結露」として現れているのです.
4.「気温と「水温」同じ温度でもなぜ感じ方が違う?
暑くなると扇風機を回したりうちわで扇いで涼むと思います.このとき,扇風機やうちわで送られてくる風は冷たい風が送られてきていると思っているかもしれませんが,実は,周りの空気を皮膚表面に送っているだけなので,冷たい風が送られてきているわけではありません.
ん?どういうこと?
というみなさんお顔が目に浮かぶようですが,もし温度計を2つお持ちなら,扇風機の羽根の後ろ側(空気を吸い込む側)と羽根の前側(風が出てくる側)にそれぞれ置いてしばらくしてから温度を比較して見てください.どちらの温度計も同じ温度を示すはずです.
ではなぜ涼しく感じるのでしょうか?
それは,空気の熱伝導が関係しています.空気は金属などに比べると熱の伝わり方(これを熱伝導といいます)が悪い物質です.体の皮膚表面の空気は体温で温められていますが,熱伝導が悪いので,外に熱が逃げにくく皮膚表面でこもってしまいます.そこに扇風機やうちわで風を送ると,皮膚表面で温まった空気が次々身体付近から飛ばされて温まる前の空気が代わりに入ってきます.それによって涼しく感じるのです.
例えば,金属の表面に手を触れると冷たく感じると思います.これは金属の熱伝導がよいためです.皮膚温度が次々と金属側に移動して,金属に移動した熱のエネルギーも金属内に広がっていき,結果として皮膚から熱を奪う形になって冷たく感じるのです.
別の例を考えてみましょう.
「気温が35℃」と言われると,多くの方が「それは暑いね!」とおっしゃると思います.一方で,「35℃のお風呂」と言われると「それはぬるいねー」となると思います.
同じ35℃なのになぜなんでしょう?
水は「比熱」という物理量が大きい物質として知られています.比熱というのは1 gの量を1℃上げるのに必要なエネルギーです.比熱が大きい物質は「温まりにくく」「冷めにくい」性質があります.言い換えると温めるのにたくさん熱を与えないといけないので,熱を奪いやすいということになります.
空気の比熱は20℃で1006 J/(kg・K),水の比熱は4186 J/(kg・K)で4倍くらい水の方が大きいです(難しい単位が使われていますが,ここは,数字だけみてください).
ところで,同じ体積の空気と水では,830倍くらい水の方が重いので,同じ体積であれば3300倍くらい熱を奪いやすいということになります.
さらに熱を伝える能力(熱伝導率)でいうと
20℃の空気の熱伝導率は0.0257 W/mK
20℃の水の熱伝導率は0.597 W/mK
で,23倍くらい水の方が熱を伝えやすいという性質があります(難しい単位が使われていますが,ここも,数字だけみてください).
したがって,水は空気よりも23倍くらい熱を伝えやすくて,3300倍くらい熱を奪いやすいということになります.
同じ35℃でも水の中だとどんどん体温が水の方に奪われていくのでぬるく感じるんですね.
Clubhouse内ではそこまで話が進まなかったのですが,海風,陸風もこの水の性質が関係しています.
海風とは,昼に海から陸に向かって風が吹く現象,陸風とは夜に陸から海に向かって風が吹く現象です.
海水は比熱が大きいので「温まりにくく」「冷めにくい」のですが,陸はその逆で「温まりやすく」「冷めやすい」という性質があります.
昼間は陸が海に比べて温まりやすいので,陸で上昇気流が発生し,陸側の空気が海側に比べるとスカスカになるので,気圧が下がります.そうすると,陸に比べて気圧の高い海側から陸側に風が吹くことになります.
夜間は逆に昼間温まった海水に比べて陸の方が温度が下がるので,海側で上昇気流が発生し,気温が下がります.そのため,海側に比べて気圧の高い陸側から海に向かって風が吹くのです.
最後に前回の気圧の話とちょっとリンクしましたね.
5.次回は「熱」,冷蔵庫やエアコン?
次回は熱をテーマに冷蔵庫やエアコンの基本などをゆるゆると雑談したいと思います.
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