人生の伏線をたどって
人生もとっくに折り返し地点を過ぎると、附に落ちることが結構ある。
私が学生の頃、私たち家族は当時、森林だらけの空港に隣接した町に引っ越した。今迄、住んでいた便利な大都会から、"ど"がつく位の田舎に家を買ったのだ。私にとってそこは、ただ空気が美味しいだけの町だった。
海外に移住した今となれば、空港のある町に実家があるというのは便利この上なかった。まるで両親は、私の将来を見据えていたのかとさえ思えてくる。今ではすっかり開発も終わり素晴らしい町に生まれ変わった。
そんな町で私の人生を変えるような恋愛もした。その彼と、つきあいだして数ヶ月した頃、お互いが一年前に既に会っていたことがわかった。それを知った時、私は人生の伏線を感じた。ほんの数分の出会いだったので二人とも忘れていたが、それは一年後に再会するという人生ドラマの伏線のようだった。
こう考えると人生はとても面白い。振り返ってみると色々なヒントやほのめかしがある。
昔、サイキックのアメリカ人に将来を見てもらった事がある。結婚を考えていた当時付き合っていた彼と私の写真を見せると「子供を持つ事はできるよ。でも、この人との子じゃない。それは自分でもわかってるんじゃない?」と英語で言われた。そして、すまなそうな顔をして、それ以上は語らなかった。
それは彼との別れを意味したし、英語で言われたのもあって心にストレートに届かずすっかりその占いの事は忘れていた。
それから数年後、ハワイに移住して今の夫との間にできた子供をあやしている時、ふとあのサイキックの言葉を思い出した。
当たっていた!
何年もたっていたのに不思議に彼の言葉が心に蘇った。
他にも、色々あった。仕事で救急車で転送した患者さんと着いた病院の横に、二十年前の子供の私が遊んでいた公園があったり、人生の伏線は郷愁も呼ぶ。大人になって再び、見たその景色は全てがとても小さく見えた。
最後にこれは伏線というか、偶然というか面白い話がある。
私が若い頃、ジャズダンスにはまっていた時期がある。ハワイに来てからも引き続きジャズダンスのクラスで踊っていたその頃、アメリカで人気のタレントサーチ番組をよく観ていた。ダンスや歌などエンターテイメントに長けている出場者の勝ち抜き戦は、レベルがどんどん上がるほど観ていて楽しい。
ある日、NYから来た日本の男性三人組がダンスで出場した。振り付けも踊りも飛び抜けてうまくて、ジャズダンスが好きな私は録画しながら観ていた。そして、彼らがアメリカ人の中で勝ち抜いていくのを同じ日本人として誇りに思った。
それから数年後、日本のテレビ番組を観ていて驚いた。なんと、その三人組のうちの一人がでているではないか!その人とは、人気歌手の振り付けをしているKちゃんだった。彼の踊りが好きでハワイで録画したビデオを何度も観ていたので顔はしっかり覚えていた。NYを引き上げたKちゃんは日本で振付師だけでなくタレントとして大活躍していた。
それから更に数年たったある日のこと、日本で私が通っていたジャズダンスのクラスを懐かしく思い、何気なくホームページを検索してみた。
一瞬、世界が止まった。そこには懐かしいダンスの先生と一緒に微笑むKちゃんのツーショットがあった。
なんとKちゃんは昔そこのクラスに通い、その後、渡米したらしい。そのあとに私はそこのクラスでKちゃんの踊る姿を写したであろう鏡を見ながらダンスを習い、数年後にタレントサーチ番組で踊るKちゃんをハワイのテレビで観たというわけだ。バラバラだった時系列の点と点がつながっていく様な驚きと同時に不思議な感覚があった。
次に起こる楽しいサプライズを期待しながら、この辺で……。