デビュー35周年➕1年を迎えた森川美穂氏との、あれこれそれ。その1。
先週の日曜日、7月25日、森川美穂さんのコンサートがあった。
昨年デビュー35周年記念で行われるはずだったが、コロナゆえ今年に延期。
だから、35プラス1周年記念コンサート。
長いこと誰もいないライブハウスで歌い続けなければならない状況は、いかがなものだったろう。今回も、緊急事態宣言下、人数を大幅に減らしはしたが、ファンの方々の前で歌えたことは、とてつもない喜びだったに違いない。
どどん。
そして、こんなん、いただいたら、嬉しいんちゃいます?
と、関西弁で言うてみる。
間違えてたら、ごめんなさい。
関西に住んだことは、ありません。
初めて森川美穂の名前を知ったのは、1987年の冬。打ち合わせに行き、担当ディレクターが「教室」という曲を聴かせてくれた。
たまげた。
17才だというのに、音程がしっかりしていて、全くブレていない。
物凄く透明感のある声。なのに、芯の強さを感じる。周りがキャーキャー騒いでいても、我が道を行くタイプだろう。
ディレクターが言った。
「竹を割ったような性格だから」
おお。
餅をついたような性格の私は、どんな詞を書けばいいのか、少しだけひるんだ記憶がある。
「失恋の曲にしませんか?自分は、付き合っていたと思っていたんだけど、彼はそう思っていなかったという悲しさを書いてください」
エスパーか?と思った。
その日、私は失恋直後で、打ち合わせに行くのも、やっとだった。
自分だけが本気だったかも。というシチュエーションも同じだった。
「それだったら、即、書けます!」
と、引き受けた。
そして出来上がったのが「ひとりぼっちのセレモニー」という曲。自分だけで始まった恋を、誰にも伝えないまま葬るという内容。
作曲は、のちにSMAPのシェイクなどでヒット曲を世に送りだした小森田実氏。めちゃくちゃ明るい曲に、失恋の詞を17才の森川美穂氏が、どう唄うか。
心配は、無用だった。
森川美穂氏は、詞を受け取って軽く2〜3回唄っただけで、すっかり自分のものにしていた。
おそろしや、17才。
その曲は、ASKAさん作詞作曲の「おんなになあれ」のB面に。あの頃は、B面と呼んでいました。レコードだったのでね。
以降、エスパーのようなディレクターのもと、森川さんのアルバムやシングルに沢山、書かせてもらった。
とは言え、私は1992年から、イギリスへ移住してしまったため、森川さんに詞を書くのは、そこまでになった。
テレビアニメ「らんま1/2」のエンディング曲になった「Positive」という曲が最後だった。
イギリスにいる間も彼女のことは、いつも思い出していた。類い稀な表現力と歌唱力。
物凄く大切なものを無くしてしまったような気持ちだった。
自分から日本を抜け出したのにね。
逢わない間に彼女は、アニメ主題歌「ブルーウォーター」をヒットさせたり、ミュージカルに出演したり、結婚したり、出産したり、離婚したり、007の映画に出たり、、、めちゃくちゃ多忙で、ジェットコースターのような日々を過ごしていた。
2012年。
すでに帰国していた私は、その年もエスパーのような、あのディレクターN氏と仕事をしていた。
ある日、
「森川美穂が渋谷でライブをやるんだけど、一緒に行きませんか?」
と、お誘いがあった。
「今でも、連絡をとってるの?!」
と、私が驚くと、疎遠になっていた森川美穂さんがSNSを駆使して彼を見つけだしたらしい。20年ぶりに森川さんとN氏は、大阪で再会。
彼女は、大阪芸術大学で教授になっていた。
開口一番、
「私、歌うまくなりたいんだよね」
と、言ったらしい。
あんなにうまいのに。
学生に歌を教えているのに。
ディレクターは驚いたけど、彼女の向上心に感服したと言う。
じゃあ、ひとまず、20年ぶりにコンサートにお邪魔するね、と約束し、うどん屋で奢ってもらったらしい。
「奢ったのではなく、奢ってもらったんだよ!森川美穂に!」
こんな日が来るとは!と、N氏も、いたく感動していた。
「で、思うんだけど、あなたもさあ、美穂に連絡とったほうがいいと思うんだよね」
と、エスパーN氏が言った。
なんで?
私の疑問には答えずに、エスパーは彼女の連絡先を伝えてきた。
「連絡先、私が知ってしまってもいいの?あとで問題にならない?美穂ちゃんが私に連絡をとりたいって言ったの?」
矢継ぎ早にそう聞くと、
「言ってないよ。でも、連絡したほうがいい気がするから」
エスパーの予言か。
しかたない。ライブにもお邪魔するし、挨拶だけはしておこう。
と、エスパーに従うことにした。
「突然で驚いていると思います。N氏から連絡先を聞きました。今度、久しぶりにライブに伺います。楽しみにしています」
みたいなメールを送った。
20年も疎遠だったのに、失礼だったのではないか。ほんとは、私になど会いたくないのではないか。N氏は、いったい何を根拠に連絡を取れというのだろう。
いろんな気持ちが、ぐるぐると揺れ動いた。
迷惑だったら、ごめんなさい。
私のことは忘れてください。(笑)
恋文を送ったような気持ちになっていた。
翌日、知らない番号から、電話が鳴った。