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お医者さん選びは突然に 後編

ある日 首元にちょっとしたシコリ
気になりだして数ヶ月
様々な検査を経て"悪性"の疑いがはれ、そのタイミングで転院を願い出ました。"転院"のワードを出すまで、何度も脳内シミュレーションをしました。"ああ言われたらこう返そう" "先生、いやな顔するかな"...しかし蓋を開けたら、先生は少し驚いていたものの直ぐに(転院を)認めてくれました。針生検の病理標本一式を別日に受け取り、転院先の病院へ"初診"としてかかりました。今回の経験から、"転院"と"セカンドオピニオン"の違いを理解しました。

セカンドオピニオンではなく転院

悪性腫瘍を疑われていることについて友人に相談したところ、"セカンドオピニオンを取ったら"とアドバイスがありました。名称は聞いたことがある...でも詳しくは知らない。本を買って必死に読みました。

セカンドオピニオンとは...
今現在かかっている担当医の診断で納得できない/不安がある場合、他の病院へかかり病名が合致するか見解(オピニオン)を聞くこと

セカンドオピニオンの注意点

・全額自費であること
相場は30,000円〜40,000円
(診察時間は45分ほど)
注)東京都の相場

・前医(現在の担当医)と後医(セカンドオピニオン先の担当医)の見立てが一致した場合は、前医のもとで治療を受ける

この2点とも、初耳でした。セカンドオピニオンはいわば"贅沢品"、転院手続きをするルートではありませんでした。医師は患者からセカンドオピニオンの申し出があったら拒否はできないとのこと。ただ...そうは言っても、患者の心情として現在の担当医にセカンドオピニオンや転院を言い出すことは勇気が必要です。少なくとも、私は覚悟を持って申し出ました。

現在の担当医へ転院申し出
↓  1週間経過
病理標本と共に紹介状をもらう
(病理標本は前医の病院へ術後返却)
↓   1週間経過
転院先で初診受付

担当医に申し出てから転院先で初診予約ができるまで2週間程。病理標本の取り寄せ、担当医が紹介状を書く時間、転院先の初診受付状況等を考えて、事前に問い合わせて転院の初診日予約を入れました。

リンパ節生検のため入院

次の大学病院へ転院をした頃
家族や友人、同僚はよかったねと皆んな労ってくれました。悪性の所見がない、しばらく通院が続いても心は軽く気持ちは前向きです。引き続き、転院先の病院で検査を受けます。結核を調べる血液検査や心電図検査、レントゲン、首元の超音波検査。漸く"結核ではない"という診断がくだり、残すはサルコイドーシスという病名がチラつきます。

リンパ節生検(シコリ摘出)
しましょう

頭頸部外科でやっと手術/入院できる日にちが決まりました。予想はしていましたが、初診予約で診ていただいたベテラン先生から若い先生へ引き継ぎされました。前医と同じく担当医が代わりましたが、今回は納得しました。

悪性腫瘍そっくりの画像ですが
悪性の所見を認めません
私は悪性腫瘍の患者を中心に診ているので、他の医師へ引き継ぎます

非常に明確で無駄のない説明
このベテラン先生は、頭頸部外科の権威で"頭頸部の悪性腫瘍で悩んでいる人の最後の砦"として本に紹介されていました。このような先生にコネのない私が初診予約を取れる。それだけで安心、公平に診てもらえる日本の医療に感謝しました。日本全国/海外からも問い合わせが来るこの先生は、物腰柔らかいダンディなイケおじ。漂う雰囲気は悟りを開いた仙人のようでした。この先生から"悪性ではない"の一言を貰いました。これ以上は望みません。一人でも多くの悪性腫瘍で苦しむ方を優先して欲しい。
 こうして、数ヶ月すったもんだした結果は1泊2日の入院というハッピーな着地ができました。局部麻酔による摘出手術、意識がある手術台での体験は初めてでした。首元へヨードチンキ1瓶が放出される感覚、頭上には水色シートが貼られて何も見えない。若い先生が看護師さんへ指示を出す声が聞こえます。
手術室に流れるJ POP
福山雅治の家族になろうよ
音楽は執刀医のセレクトだと術後に看護師さんが教えてくれました。

シコリよシコリ さようなら


シコリは肉芽腫

退院してから2週間が経ち、耳鼻咽喉科/頭頸部外科の診察は終わりました。シコリは肉芽腫でした。原因は不明のまま終わる可能性が高そうです。その後、肺に小さいツブが見える所見を調べるため呼吸器内科へ転科しましたが、いまだに病名は確定しません。もしサルコイドーシスであったとしてもそうでなくても、慌てずしっかりと向き合いたい。摘出したシコリからアクネ菌が出たそうです。サルコイドーシスとアクネ菌は関連がある模様。引き続き"その路線を探る"通院が続きます。

人まかせにしない病院選びと周囲への伝えかた

いざ、病院へ通うとき

信頼できるドクターに出会えるかどうかで自分の心持ちが変わることを学びました。2つの病院で沢山の検査をした結果、病名の見立て/着地は同じでした。本によると、患者には前医より後医の方が良く映ると記載があります。前医はゼロの状態から病名へ辿りつかなければならないのに対して、後医は整ったデータを基に診断をくだせるから。
 私は卵巣の疾患があるため、婦人科へ定期的に通っています。かかりつけ医があるつもりでした。今後、身体のアチコチが困ったサインを出すかもしれない年頃。近所の耳鼻咽喉科なら〇〇、整形外科なら〇〇など地域で評判のいい医院を探る重要性を実感しています。同時に、もし大きな病院へ紹介をうける事態になるときは予め縁のある病院を指定したいと思います。他科であっても自分のカルテがある病院は話しがスムーズに進みます。そして、もし目の前のドクターに気持ちが分かってもらえない、こわくて質問しづらい等の不安はそのままにしない。自分の身体の責任は自分が取るしかありません。転院は慎重に、ドクターへの質問は端的に。転院するタイミングは病名がつくときが好ましいと思います。タイミングを逃すとドクターに迷惑ですし現場を混乱させて紹介状の受け取りが遅れかねません。双方のためにも限られた時間を有効に使うことでストレスが軽減できると振り返っています。また、これまで自分の親を含めて悪性腫瘍である人の報告は"すぐに病名がつく"場合のみでした。しかし、最近は悪性腫瘍の病名がつくまで"数ヶ月以上待ち"はよくある話しのようです。その間、悪性所見が進行したらどうしようという不安が募る患者、対して病理検査で"原発"を確定しなければ治療方針が決められない病院。癌は初期であれば治るというイメージが定着しているから、ドクターも伝えることへのハードルが下がるのかもしれません(原発不明癌は簡単に言わないでほしい)。癌に限らず日常に支障が出る病気にかかったとき、職場へ伝えるタイミングや周囲へどこまで開示するかも悩みました。深刻な病名は周りを驚かせ、一瞬ブームに乗って人気者になります。しかし、それが過剰診断であった場合は、注意しなくてはなりません。"よかったね"と言ってもらえることは当たり前ではない。寄り添ってもらえることに感謝を
込めて日常を真摯に送りたいと思いました。
長い記事をお読みいただき
ありがとうございます。

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