左利きの人生
物心ついた頃
自分が左利きであることを
自覚しました
"左手から右手へ持ち替える"
この練習がはじまったとき
世の中をまだ知らず
親の言うことを素直に聞いて
真面目に取り組んでいました
やがて
右手で字がかけるようになり
周囲が褒めてくれました
一方
それ以外は全て左のままです
両親が諦めました
右手を使う練習の途中
鏡文字を書いていた私
右利きの人が
却って難しいと云いました
でも 自分の頭の中は
文字を見た通りに書こうとしたら
反転しちゃう
ごく自然のことでした
却って難しいこと
それが出来る
左利きは手先が器用
いつしか
そんな意見が周囲から聞こえて
気恥ずかしくなりました
何故なら 私は
ただの 不器用な左利き
家庭科の時間が憂鬱でした
調理実習の時間は包丁を持つ手で
左利きがバレてしまう
右利きの人から見ると
危なっかしく見えるようです
しかも 実際不器用だから
危ない危ない
綺麗に野菜を刻める人に
役目を代わってもらえたなら
先読みして
湯切り名人を引き受けました
縫い物も苦手です
用意されたミシンは右利き用
使いずらい..という名目と共に
被服の実習は気が重い
そこで
ずる賢い私は母に頼み
課題を代わりに作ってもらいました
母は器用な左利き
世に言う素敵な左利き
そんな中
中2の時の家庭科の先生は
親切にしてくれて
先生公認で課題を持ち帰り
母が代理で作業しました
左利きの味方に出会えると
記憶に残ります
今現在 左利きの私は
毎日ご飯を作っています
大人になって分かったこと
美味しいと思って
食べてもらえたら嬉しい
その気持ちが至極
包丁が苦手ならピーラーがある
湯切りは名人に越したことない
パパっと料理が作れる人
ささっと縫い物ができる人
心底憧れ羨ましい
テキパキ素早くは難しいけど
家族にふるまう料理は作る
左利きは
会話の潤滑剤になるときがあります
横並びに座って食事をするとき
腕がぶつかるから左に座るね
"左利き"の自己紹介
不器用を左利きのせいにして
呑気に過ごしてみたりする
左利きだよねと覚えていてくれると
大切にされている気がする
左利きの人生も悪くない
今後も左利きと付き合いが
続きます
文字は両手で書ける
筆圧が強い
Junko Summer