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マティス展~やっとすごさに気がついた!
学生の時、西洋美術史を専攻し、20世紀に活躍したフランス人画家ブラックを研究していました。
マティスはブラックと同時代を生きた巨匠です。ブラックの絵がある美術館では大体マティスの絵が飾ってあり、作品数も多いので、今まで無数に見てきました。
わたしははっきりとした色が好きなので、マティスの色彩や装飾された部屋を描いたような作品が好きです。切り絵も好き。
マティス展を東京でやっていることは知っていましたが、もう十分にマティスの作品は見てきたし、いつも誰かの絵を見に行った時にそこにあるマティスの絵も見るスタンスだったので、わざわざマティス展に行くのもなあとも思っていました。
ところがたまに一緒に美術鑑賞しているみだれ髪さんの記事を読んでいたら、今回のマティス展にパリのポンピドー美術館の所蔵しているマティスがごっそりきていて、素晴らしいラインナップであることを知り、気持ちが一転、期間も20日までとあと3日しかない!と気がつき行ってきました。
ポンピドーは現代アートが専門だったわたしにとってホームみたいな美術館、フランスに住んでいるとき何度も行ったし、日本でポンピドー展をやったときも見に行きました。ゆえにマティスも何度も見ているはずです。
今までマティス主役の美術展を見てこなかったからか、自分が若かったからか、マティスのすごさに気付いていませんでした。ただ色彩が好き、個人的に「夢」が好き、その程度でした。
マティスは写実的な絵を描く画家ではありません。フォーヴィズムに傾倒していた時代もあるし、同じ構図で写実的な手法から4段階に分けて、超単純化した彫刻なんかもあります。地味ながらインパクトのある自画像から展覧会は始まりますが、その一点から驚きました。粗いタッチで描いているのに写真みたいにマティスの顔、すごみがわかるのです。人物画を見るたびにドキドキしました。油彩であろうが、ペン画で線だけで描かれていようがお構いなし、リアルな人間を感じるのです。
そしてこの作品のおじさんに完全に射すくめられてしまいました。
あぁ、そんなに厳しい目で心を読まないで。
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展覧会はマティスの長い画業を何段階に分けて紹介していました。
どの試みもマティスは丁寧に探究していたように感じました。
派手な色彩、黒の太い輪郭線だけで描かれた絵、大胆な切り絵などから思い付きでバンバン作品を作り上げていったように一見思えるけれど、よくライバルとして並び称されるピカソと違って真面目な人だったのでは?と説明を読みながら思いました。
きっとマティスの作品の中でも特に好きな「夢」に酔いしおれるだろうと思っていました。意外なところでマティスの底力を知りました。そして、美術史を勉強していた学生時代は何か思うと、根拠を資料から探したものだけど、「わたしこう思う、以上」となっている現在の自分。自由になったぁ。
新たに知ったマティスの魅力、買ってきたおじさんのポストカード(あってよかった!)をいくら見ても飽きない。
絵画の力をあらためて思い知りました。
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