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「侍タイムスリッパ―」を観て

若いころはたくさん映画を観ていました。
大学時代に西洋美術史を専攻し、先生が九鬼周造の「いきの構造」を絡めながらいろいろな美しいものを教えてくれました。

絵画はもちろん、歌舞伎の「船弁慶」の船の表現(枠だけ)やある西洋の演劇の表現の共通点、井上八千代さんの舞踊とマイヤ・プリセツカヤの比較、「天井桟敷の人々」やパトリス・ルコントの映画などヨーロッパ映画のシーンなどたくさん紹介してくれて、今のわたしの美意識に多大な影響を与えました。

先日、ある方が久しぶりに連絡をくれました。「侍タイムスリッパ―」と言う映画が面白いからぜひ見てみて!と勧めてくれました。家族で楽しめる映画ということなので、今日は県民の日で息子が休み、夫は木曜で定休日だったので夕方家族全員で観に行ってきました。

(以下はざっとしたあらすじですが、予告編と同程度の内容です。)
「侍タイムスリッパ―」は幕末のお侍が現代にタイムスリップする話です。
初め何が起きたかのかもわからず、京都の映画村にスリップするので同じようないでたちの人がいるものの、そこを出ればなんだこれは!?徳川幕府が滅んでだいぶ後の時代に来たことがわかった彼は、こちらで生きていくために時代劇の切られ役という職に就く。

映画のサイトを読むと、監督の情熱が伝わってきます。
低予算で作られ、監督の預金は7000円になったとか。
自主映画でも主演の山口馬木也さんなど実力派俳優が脚本が面白いからと役を受け、資金がない中でも東映京都撮影所が手を差し伸べて撮影に協力してくれたという時代劇映画。

そして、映画を観てみての感想。ネタバレはないと思います。
まずおもしろい!江戸時代の人が現代に突然やってきて、常識のギャップがあるのは当然。ベタだけど面白い!山口馬木也さん演じる実直な主人公の人柄も相まってつい声をたてて笑ってしまいました。
江戸時代の侍である彼の言葉遣いと礼儀正しさは現代ではかなり突出したもの。言葉遣いは違うから当然だけど礼儀正しさ目立つことはどういうことだろうと思ったり。上様からの命令で長州藩士を討とうと刀を交えた時に被雷してタイムスリップしたわけですが、当然使命感がありひたむき。そんな縦糸を感じました。

横糸。時代が違えど人の情はいつも共通。現代の人の温かさが彼を助けます。
切られ役として生きていこうとする彼、舞台は映画やドラマの制作場所。そこで時代劇の殺陣が繰り広げられますが、へえこうやって時代劇って作られるんだと感心したり、様々な役割を担った製作チームの方々が真剣に作っていく様子は、この映画もこうやってつくられたんだろうなと思えました。そして殺陣に目を奪われます。すぐにできるようになるものではない、教わり鍛錬があってのこと。そういう時代劇がなくなっていく寂しさを感じました。

山口馬木也さんの演技がとてもよく、様々なことを感じ、見終わった後もじーんと思いを馳せています。
面白いながらも後に感動を残す良い映画だと思いました。

勧めてくれた方、誘いに応じてくれた家族に感謝。

よかった、ありがとう。

お勧めなので、ご興味ある方ぜひ!
ホームページも読み応えありです!



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