ピアノ伴奏者の選ぶ、JPOPの「スタンダード曲」15選
カバーとオリジナル
アーティストが楽曲を演奏したり歌ったりするとき、その選曲は大きく「カバー/アレンジ」か「オリジナル」かに分かれます。
アーティストにとって、作品自体を表現のアイデンティティとしてみた場合、「オリジナル」であることは非常に重要です。洋楽史で言えばこの傾向が強まったのはビートルズ以降でしょうか。
一方で、演奏や歌唱力に表現の主眼を置くパフォーマーも少なくなく、その場合、オリジナル曲の場合でも、別の作詞家/作曲家から提供されたものを歌ったり、カバー曲が披露されることも少なくありません。ニコ動やYouTubeでの歌ってみた文化もこちらでしょう。
スタンダード曲とは?
アメリカでは、ロックの登場以前からポピュラー音楽として大衆に広く親しまれ、年月を超えて多くのミュージシャンに演奏されたりリスナーに親しまれている「スタンダード曲」というものが存在します。スタンダード曲が集められた簡易的な楽譜集も広まっており、現在までジャンルを問わず全ミュージシャンの必修事項と言っても良いでしょう。
また、そのようなスタンダード曲を含め、ジャズのセッションにおいて必ず取り上げられる「ジャズ・スタンダード」など、それぞれのジャンルにおいてのスタンダード曲というものもあり、共通認識となっています。
日本のスタンダード曲ってある?
日本のミュージシャンにおいても、非常によくカバーされて親しまれている曲というものは数多く存在していると思います。にもかかわらず、日本においてはアメリカの「スタンダード曲」ほどのしっかりとした概念が確立されていないのも事実でしょう。
そこで、今回の記事では、日本で特にカバーされ続けているような「J-POP」の楽曲を選んでみようと思います。筆者の僕はピアノを演奏しますので、シンガーの方の伴奏をする機会がしばしばあります。そのような経験の中で「こういう曲が親しまれやすいんだなあ」という傾向が分かってきたので、その目線で選曲していきたいと思います。
なお、あくまで「名曲であるかどうか」ではなく、「カバー曲として選曲されがちかどうか」を重視しています。そのため、ヒット曲や名曲であっても、ここに入らない場合もあります。ご了承ください。また、数値的なデータは一切調べず、独断と偏見でテキトーに選んでみますので、偏っていてもあしからず。異論のある方は自分でも是非選んでみて、コメントや自分のnote記事に書いてみるなどしてみてくださいね!
それでは行ってみましょう!
丸の内サディスティック / 椎名林檎
邦楽でカバーやセッションをすると言ったときに真っ先に思い浮かんでくるのは、この曲です。コード進行が、ファンクセッションの定番曲「Just the two of us / グローヴァー・ワシントン・ジュニア」と同じで、「Just the 進行」「丸サ進行」とも呼ばれる定番進行となっています。特にYOASOBIやあいみょん、米津玄師、星野源など、近年のヒット曲にこの進行が急激に増加した印象で、日本人に染み付いた親しみやすいコード進行となったようですね。ライトな音楽ファンからオシャレな音楽を好む人々、さらに斜に構えるような層まで、幅広く支持されていると感じます。
糸 / 中島みゆき
この曲も本当に非常に多くの方がカヴァーしますよね。特にピアノ伴奏をやる機会がある僕にとっては、いろいろな方のサポート伴奏の現場においてこの曲が選曲される率がダントツだと感じました。老若男女問わず支持されていると思います。
ハナミズキ / 一青窈
先に挙げた「糸」に並ぶ、Jpopのバラードの定番曲ですね。こちらも演奏頻度が非常に高いです。
Story / AI
こう並べると、バラードが多いですね。日本人の習性なのでしょうか?
Everything / MISIA
この曲も、ハナミズキやStoryと同じノリでよく伴奏させられるんですが、重鎮・冨田ラボこと冨田恵一さんによる、MISIAさんのR&BやJazzの出自を生かすようなアレンジが光っており、シンプルなように聴こえてけっこう複雑で癖のあるテンションノート(コードの構成音に対して付加する音のこと)が連続するので、伴奏する側としては、他の曲よりも難易度が高かったりします。笑
愛をこめて花束を / Superfly
Superflyさんのパワフルな歌声に惹かれて目標にするシンガーさんも多いのではないでしょうか。バラードでありながらここまで歌唱力で圧倒させることができれば、歌っていて非常に気持ちいいでしょうから、カバーされる頻度も高いのだと思います。
First Love / 宇多田ヒカル
宇多田ヒカルさんの定番曲と言えば他に「Automatic」などもありますが、やはりカバー頻度という面ではこちらかな、と思います。
涙そうそう / 夏川りみ
沖縄の要素の入ったバラードというのも安定した人気がありますよね。15選からは外してしまいましたが、THE BOOMの「島唄」なども同じ傾向の支持を集めていると感じます。
366日 / HY
沖縄出身のアーティストで定番のバラードといえば、こちらも外せません。非常に人気の高い楽曲です。
M / プリンセス プリンセス
こちらもバラードではありますが、上記までの曲と異なる点として、三連符のビートの曲なので、セットリストに入るとリズム感に変化が出てきて良いなと思いますね。
チェリー / スピッツ
ここからは男声編です。スピッツの楽曲は「空も飛べるはず」や「ロビンソン」なども迷いましたが、こちらを選んでみました。
LA・LA・LA LOVE SONG / 久保田利伸
ここに来てビートのある曲が登場しましたね。シティポップやブラックミュージック系の雰囲気の人気が高まっている中で、たくさんの人が知っていてかつ、カバーするのに丁度良い立ち位置となっている気がします。
花束のかわりにメロディーを / 清水翔太
お恥ずかしながら、ピアノ伴奏をする機会があるまでこの曲を知らなかったのですが、伴奏でかなり弾く機会が多いと感じたので、ここに選んでみました。R&B系を志向するシンガーさんからの人気が非常に高いと感じますね。
夜空ノムコウ / SMAP
SMAPの楽曲も名曲が非常に多いですが、カバー率で言えばこの曲になるのかなあ、と思います。「世界に一つだけの花」なども国民的な楽曲ですが、意外と現場でのカバーは少なかったりする印象です。
小さな恋のうた / MONGOL800
パンクロックでありながらここまで幅広い人に知られて歌われるのは、そのメロディの普遍性の所以ですね。
番外編・インストの定番曲
情熱大陸 / 葉加瀬太郎
ここで、歌の無い所謂「インスト曲」で選曲されやすい曲もピックアップしてみます。インスト曲のカバーと言って真っ先に挙げられるのはダントツでこの曲でしょう。特にバイオリニストであれば必ず求められる楽曲の代表例ですね。
ルパン三世のテーマ
名探偵コナンのテーマ
やはり一般のお客様に向けて演奏するに当たってインスト曲の知名度があるものはテレビ番組やアニメのテーマソングになってきますよね。どうしても上記に挙げたような選曲でないとがっかりされるので、選択肢が狭まってしまうのがインスト業界の課題であると感じてしまいます。
おわりに
いかがだったでしょうか?今回挙げた楽曲は本当に演奏される頻度がダントツで多いので、演奏者は覚えているだけでかなりのアドバンテージとなると思います。また、音楽リスナーの方も改めて意識してみることでJpopの傾向を面白く聴くことができるのではないでしょうか。
(ちなみに「いかがでしたかブログ」のような存在が揶揄されていることはもちろん知っていますが、何かを複数紹介して最後にシメの言葉を書こうとしたらどうしても「いかがでしたか?」って書きたくなってしまいますね・・・気を付けたいと思います。余談でした。)