ノミネーション落ち組にも、光を!【第94回アカデミー賞】
先月末3月28日(日本時間)に行われた第94回アカデミー賞授賞式。
私も、的中したかどうかは別にして、ノミネーション発表から受賞予想記事を投稿し、そして当日はWOWOWの生中継番組をリアルタイムで鑑賞し、存分に楽しみました。
みなさんご存じの通り授賞式では大事件が起きまして、そのことが世界各地で注目を集めてはいるのですが、賞自体は作品賞が『コーダ あいのうた』というハートフルな多くの人に愛される映画に贈られ、また注目を集めた『ドライブ・マイ・カー』も国際長編映画賞を受賞しました。
改めて、受賞した作品とノミネートされた作品に、「おめでとうございます」と言いたいです。
・・・
が、しかし!
アカデミー賞がすべてではない!
オスカーに値するといわれてたのに、ノミネートされなかった今シーズンの作品がいっぱいあるんですよ!
なので本記事では、そんなノミネーション落ち組の中から、私が完全主観で作品賞・監督賞・脚本部門(脚色賞)・主演男優賞・主演女優賞を選ばせていただきたいと思います。
作品賞:『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
全米興行収入で、『アバター』(2009)を抜き歴代3位の記録を叩き出している『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。
今回のアカデミー賞で作品賞へのノミネートを期待していましたが、結果的には視覚効果賞のみへのノミネート。相変わらずアカデミー賞はスーパーヒーロー映画への冷遇姿勢を崩しませんでした…。
確かに「一作で完結しない」というMCU映画への批判はわからなくはないですが、今回はそれを逆手にとっての大サプライズ。MCUファンのみならず、スパイダーマンファン、映画ファンへ史上空前の感動を与えてくれたこの作品は、作品賞へのノミネーションはもちろん、受賞してアカデミーの歴史を変えてくれるほどの作品でしたよ…。
監督賞:ドゥニ・ヴィルヌーヴ(『DUNE/デューン 砂の惑星』)
今回、サウンド賞・撮影賞・視覚効果賞・作曲賞・編集賞・美術賞という、いわゆる技術部門といわれるカテゴリー6冠を果たした『DUNE/デューン 砂の惑星』。
作品賞にもノミネートされていましたが、監督賞には監督のドゥニ・ヴィルヌーヴの名が連ねられていませんでした。
…はい、おかしいですね。
ここまで評価されているのに、それをまとめ上げた監督がノミネートされないなんて意味わかんないですよ。
しかも、ヴィルヌーヴはこれまで監督賞にノミネートされたのは『メッセージ』(2016)の一回だけで、『ブレードランナー 2049』(2017)でも監督賞ノミネートされていないんですよ。それなのにスピルバーグなどの巨匠には、あまいオスカー。
受賞級の働きを魅せたヴィルヌーヴ。DUNEの次回作で期待しています。
脚本部門(脚色賞):『最後の決闘裁判』
今回のアカデミー賞で総スカンを食らった『最後の決闘裁判』。
確かに興行収入的には振るいませんでしたが、批評的には絶賛された今作。
特に注目だったのが、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)のベン・アフレックとマット・デイモンが再タッグを組み、さらにそこに『ある女流作家の罪と罰 』の脚本家ニコール・ホロフセナーが手掛けた脚本。
黒澤明監督の名作『羅生門』(1950)をオマージュしたその手法は、ノミネーション間違なしと思われたのですが、授賞式にはベン・アフレックもマット・デイモンの姿もありませんでした。
一方で脚色賞にノミネートされた『DUNE/デューン 砂の惑星』は、原作のほんの序盤しか描いておらず、それでノミネートされていいの?って感覚。
そうあれば『最後の決闘裁判』が代わりにノミネートされてもよかったのではないでしょうか。
主演男優賞:ジョーニー・デップ(『MINAMATA-ミナマタ-』)
『ドリーム・プラン』がウィル・スミス史上最高の演技でオスカーを受賞した一方で、『MINAMATA-ミナマタ-』でのジョーニー・デップ史上最高の演技は無視されました。
ジョーニー・デップの演技はもちろん、映画としても評価が高い作品。しかし、水俣市が後援を拒否したり、ジョー二ー・デップの離婚裁判の話題が先行したりと、なかなか話題にしずらかった今作。事実、一時期はアメリカ公開中止の話が出たほどで、例年なら確実といえたジョーニー・デップのノミネートは、アカデミー賞をはじめ各映画賞でも敬遠されました。
ただ少し報われたこととしては、今回のアカデミー賞の企画として行われたTwitter投票で決める#OscarsFanFavoriteで、『MINAMATA-ミナマタ-』が3位になっていました。
この企画自体は大失敗ではありましたが、ジョ二デのファンなどがこの作品を埋もれさせないないようにしたのは嬉しいことでした。
主演女優賞:エミリア・ジョーンズ(『コーダ あいのうた』)
今回作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』。
作品賞に加えて、脚色賞と助演男優賞も受賞しましたが、ノミネーションもその3部門だけだったんですね。そこに、主演女優賞へのエミリア・ジョーンズの名前もあってよかったんじゃないでしょうか。
今作で主演を務め、聾者家族の中で一人だけ耳が聴こえる少女を演じたジョーンズ。手話というもう一つの言語を用いた演技、そしてあの歌声は、ノミネーションのみならず、受賞となってもおかしくなかったのですが…。
そもそも今回の主演女優賞は、ノミネートされた作品がすべて作品賞に選ばれていないという異例の事態。
オリヴィア・コールマンの『ロスト・ドーター』といった良作もありますが、実際に今回受賞したジェシカ・チャステインの『タミーフェイの瞳』は作品自体の評判は今ひとつ…。
そんな演技だけを評価するというスタイルには、「それでいいのかな~」なんて思う節もあります。
あとがき
ということで今回は私の完全主観で、アカデミー賞にノミネートされなきゃいけなかった作品や監督・俳優を紹介させていただきました。
この記事で最終的に言いたかったのは、私はアカデミー賞大好きではありますが、「アカデミー賞がすべてではない」ということです。
確かに、アカデミー賞にノミネートされた作品は面白いですが、アカデミー賞に引っかからなかった作品もたくさんあります。選ばれなかったからといって、その映画がダメ、その演技はダメというわけではないですし、そもそもアカデミー賞側のノミネート基準に?を感じる部分が多々あります。
オスカーフリークである前に映画ファンとして、アカデミー賞が前面に出て埋もれてしまう作品がないように、今回の記事を書かせていただきました。この記事をきっかけに、紹介した作品・監督・俳優に再注目していただければ幸いです。