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【39.水曜映画れびゅ~】『パンケーキを毒見する』~1mmもこの映画を観る気のないあなたに観てほしい~

『パンケーキを毒見する』は現在公開中のドキュメンタリー映画。先日退陣を表明した菅義偉内閣総理大臣の実態に迫った作品です。

作品情報

「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」などの社会派作品を送り出してきた映画プロデューサーの河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリー。ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で日本政治の現在を捉えた。秋田県のイチゴ農家出身で、上京してダンボール工場で働いたのちに国会議員の秘書となり、横浜市議会議員を経て衆議院議員となった菅氏。世襲議員ではない叩き上げの首相として誕生した菅政権は、携帯料金の値下げ要請など一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革を断行した。映画では、石破茂氏、江田憲司氏らの政治家や元官僚、ジャーナリストや各界の専門家に話を聞き、菅義偉という人物について、そして菅政権が何を目指し、日本がどこへ向かうのかを語る。さらに菅首相のこれまでの国会答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠された本心を探る。

映画.comより

菅義偉とは何者か?

安倍前首相が体調不良を理由に総理の座から退いたのが、今から約1年ほど前の出来事。

それに伴って行われた総裁選において「総裁選には出ない」という前言を撤回して出馬した菅義偉前官房長官が圧勝し、第99代内閣総理大臣 菅義偉が誕生しました。

就任当時は、携帯電話料金の値下げや不妊治療の援助を推進。

またパンケーキ好きや歴代首相と比べて可愛らしい容姿などもあって、世論のイメージは上々で支持率も高水準を維持していました。

しかし、学術会議の任命拒否や菅首相の息子が役員を務める「東北新社」と総務省の癒着など、次々と権力濫用と思われる問題が発覚。それなのに説明責任を果たそうとしない菅首相の姿が、毎日テレビで取り上げられるようになりました。

さらにコロナ対策に関しては感染拡大が未だ止まらず、緊急事態宣言の発令と延長を繰り返すばかり。

そして極めつけはゴリ押しして開催したオリンピック。
これらに関しても「国民の安心・安全を守る」と言い続けながら具体的な対策は棚に上げ、最終的には「コロナ対策に注力する」と言いつつ総理大臣の座を退こうとしています。

この映画ではそのような摩訶不思議な菅首相の答弁テクニック(?)の分析や、総理大臣に至るまでどのようにして自らのキャリアを築いてきたのかということ、風刺たっぷりに描いています。

それでも、なぜ自民党が選挙で勝つのか?

そんな菅首相の実態を辿っていくと、一つの疑問が生まれます…

では、なぜ彼が首相になのか?

この答えは至極簡単に見つかります。

それは…

「自民党が選挙で勝てる」からです。

選挙で勝てば、何をしても許されるのです。

極端な論に聞こえるかもしれませんが、実際問題としてそういう現実があります。

それならば選挙に行って国民が政治を変えなければ…と言いたいところですが、それは現時点で現実的ではありません。

投票率は年々減少し、特に若者の政治参加への意識は薄れるばかりと言われています。

さらにトドメと言わんばかり私の胸に突き刺さったのは、劇中での石破茂議員のセリフ。
次のような主旨のことが語られていました。

「有権者の皆さんの投票率を上げることはできると思いますよ。法律によってそういったことは可能だと思います。ただ、自民党はやりませんよ。

この映画が伝えたかったメッセージとは

作品は終盤にかけて、こういった政治参加への意識の薄れが主題へと転換していきます。

劇中には政治参加を呼び掛ける大学生団体"ivote"が登場し、日本の現状と若者の政治参加への意識の乖離を指摘していました。

実はそれこそがこの映画の最も伝えたいメッセージであろうと私は思いました。

「政治を変えるためには、政治を正すためには、やはり国民が動かなければいけない」ということにしっかり向き合わなければいけないのです。

劇場での違和感と、今回の副題

今作は色々と圧力がかかっているという噂がありながらも、小規模公開の各地でスマッシュヒット中。

実際に私が行った地元のミニシアターでも、連日満員を記録しています。

しかし鑑賞後に私は少し違和感を覚えました。
周りを見渡せば、客層はおそらく50~60代くらいが大半。20代に至っては、おそらく私一人ではなかったのではないでしょうか…

つまり、この映画の最大のメッセージである「政治参加への呼びかけ」を伝えたい層に実際には伝わってないということなのです。

まあよく考えれば単純なことで、年齢など関係なく本作を観に来る人はそもそも政治に関心がある人だと思われます。私も20代とはいえど、選挙へ投票に毎回行きますし…

しかし本当にこの映画を観るべきなのは、私を含め今日劇場に見に行った人ではないような気がします。

本当は投票なんて今まで行ったことがなく、政治に興味がなく、この映画になんて1mmも興味がない人こそこの映画を観るべきだと思います。

この映画を観ることで、少しでも投票してみようと感じること、少しでも政治を知ろうと思うことこそが、この映画の意義であると私は思います。

だから…

1mmもこの映画を観る気のないあなたにこそ、この映画を観てほしい。


前回記事と、次回予告

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これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

来週は、『孤狼の血 LEVEL2』の記事を予定しています。お楽しみに!