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【159.水曜映画れびゅ~】『ルックバック』~創作への賛美歌~

『ルックバック』は、先月から公開されている劇場アニメです。

あらすじ

学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…。

公式サイトより一部改編

「藤野先生は、漫画の天才です!」

小学4年生の藤野は、毎週クラスで配られる学級新聞で4コマ漫画を連載していた。

「将来、漫画家なれるよ!」

4コマ漫画は大好評。藤野はいつも得意げだった。

そんなある日、隣のクラスの不登校生京本も学級新聞に4コマを載せたいらしいと担任から聞かされる。藤野は“やれるもんならやってみろ”といった感じで、それを了承した。そして次の学級新聞で、藤野と京本の4コマが並んで掲載された。

藤野は、驚愕した。京本の画力は圧倒的なものだった。並んで載る藤野の絵が落書き程度に見えるほど、圧倒的だった。

藤野は心の底から絵が上手くなりたいと思った。京本に負けたくないと思い、必死で絵を描いた。友達と遊ぶ時間も家族と過ごす時間もすべて捧げて絵を描いた。

しかし、京本との差は埋まらなかった…。

藤野は諦めた。絵を描くことも、漫画を描くこともやめた。友達と遊び、家族と過ごす時間を取り戻した。描き溜めたスケッチブックを捨てた。

そして迎えた小学校の卒業式。藤野は担任から、京本の家に卒業証書を渡しに行ってくれと頼まれ、嫌々ながら引き受ける。

京本の家に行った藤野だが、誰も玄関先に出てこない。しかし物音がしたので玄関の扉を押すと、鍵が開いていた。京本の部屋の前まで行き、卒業証書を置いて帰ろうとした。しかし、そのついでに藤野は即興で4コマ漫画を描いた。するとその4コマが思わず、京本の部屋に入ってしまった。

焦った藤野は、急いで家を出た。すると後から追いかけてくる足音が聞こえた。

「藤野先生!」

後ろを振り向くと、京本がいた。京本は、まっすぐな目をして藤野に言った。

「藤野先生は、漫画の天才です!」

伝説の傑作を、映画化!

本作の原作は、『チェンソーマン』で知られる藤本タツキが2021年に「少年ジャンプ+」にて掲載した同名の読み切り漫画。配信されるや否や話題を呼び、多くの有名漫画家からも絶賛の嵐。物議を醸す内容も含まれていましたが、そういった経緯も含めて伝説的な読み切り作品となりました。

その映画化に際し、監督を務めたのが押山清高。ジブリ作品やエヴァに携わり、現在はスタジオドリアンの代表を務める押山監督ですが、本作の完成のために並々ならぬ熱量を注ぎました。

藤本タツキがⅩ(旧Twitter)にて、「絵の凄く上手い監督がほぼ一人で全部描いているらしい」と投稿。実際に、完成披露試写会で押山監督が「2ヶ月半ぐらいずっと会社に泊まってて」「昨日のお昼まで描いてました」と発言。このことからも、とんでもない熱量で本作が作り上げられたことがわかります。

創作への賛美歌

「なんで描いてるの?」

原作にもあり、映画の予告編でも流れるこのセリフ。これが本作の最大のテーマと言えます。

なんで漫画を描くのか?
何で創作を続けているのか?

私は2年前にたった4か月で会社を辞めて、それから色々あって、今は翻訳家の勉強をしながらnoteで創作を続けています。noteでは3年以上映画記事の投稿をしながら、エッセイなど様々な創作にも挑戦しています。

そんな特に、“ふと思うこと”があります。「なんで、こんなことやっているんだろう?」と。

翻訳家の勉強も、プロになって大成する保証が別にある訳ではありません。noteでの創作も、これまで一銭の価値になったこともありませんし、今後もそうなることはないでしょう。「じゃあ、なんで続けるているんだろう?」って考えてしまうことがあります。

そんなことに想いを巡らせることがある一方で、最近なんとなく思うことがあります。それは…

私の人生は、そうなるようにできているのだ

これまでの人生で、私には様々な選択肢がありました。

「会社員として再就職する道もあった」
「あの時、会社を辞めない道もあった」
「大企業に就職する道もあった」
「映画を趣味にしない道もあった」

しかし結局どの道を選んだとしても、行きつく先は同じではなかったのかと思うようになりました。

再就職しても働きながら翻訳家の勉強をしていたと思うし、前の会社をそのタイミングで辞めていなくても別のタイミングで辞めていたと思うし、大企業に就職しても、それはそれで嫌気が刺して辞めていたと思うし、どちらにせよ映画は好きになっていて、noteじゃなくてもどこかで映画レビューをしていて、結局は創作し続けていたと思います。

運命論って決めつけるわけではないですが、でもそんな気がするんです。色んな巡り合わせの結果で今があると思う一方で、別の巡り合わせの世界線にいる自分も、今の自分と大差ないような人生を送っているように思うのです。

そう思うから、自分の創作に「なんで?」と聞いても、理由なんて見つからないような気がするんです。それが自分であり、それが自分の人生だと思うからです。

だからこそ、過ぎ去ったことを振り返らず、私は創作を続けたい。


前回記事と、次回記事

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次回の更新では、入江悠監督、河合優実主演の『あんのこと』を紹介させていただきます。

お楽しみに!