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【63.水曜映画れびゅ~】『ちょっと思い出しただけ』~ちょっと思い出しちゃった…。~

『ちょっと思い出しただけ』は、2月11日より劇場公開された映画。

昨年の東京国際映画祭にて観客賞を受賞した作品です。

あらすじ

2021年7月26日、この日34回目の誕生日を迎えた佐伯照生は、朝起きていつものようにサボテンに水をあげ、ラジオから流れる音楽に合わせて体を動かす。ステージ照明の仕事をしている彼は、誕生日の今日もダンサーに照明を当てている。一方、タクシー運転手の葉は、ミュージシャンの男を乗せてコロナ禍の東京の夜の街を走っていた。目的地へ向かう途中でトイレに行きたいという男を降ろし、自身もタクシーを降りると、どこからか聴こえてくる足音に吸い込まれるように歩いて行く葉。すると彼女の視線の先にはステージで踊る照生の姿があった。
時は遡り、2020年7月26日。照生は部屋でリモート会議をし、葉は飛沫シートを付けたタクシーをマスク姿で運転している。照生は誕生日の夜に誰もいない部屋で静かに眠りにつく。また一年遡り、誕生日を迎えた照生は、昼間は散髪屋で伸びた髪を切り、夜はライブハウスでの仕事を終えたあとに行きつけのバーで常連のフミオとダンス仲間の泉美と飲んでいた。同じ頃、居酒屋で合コンをしていた葉は、煙草を吸いに店の外に出たところで見知らぬ男から声をかけられ、話の流れでLINEを交換することに。葉のアイコンを見た男が「あれ、猫飼ってるんですか?」と尋ねると、葉は「いや…今は飼ってないけど」と返し、続けて「向こうが引き取ったから」と切ない表情でポツリと呟く。彼女がLINEのアイコンにしていた猫は、いまも照生が飼っているモンジャだった…。
時は更に1年、また1年と遡り、照生と葉の恋の始まりや、出会いの瞬間が丁寧に描かれていく。不器用な2人の二度と戻らない愛しい日々を“ちょっと思い出しただけ”。

『ちょっと思い出しただけ』公式サイトより

二人の男女の6年間、ちょっと描き出す。

本作は、照明技師の照生とタクシードライバーの、二人の男女が歩んだ6年間を描いた物語。

映画序盤では、この二人が別々の視点で描かれており、特に交わるということもなく、その関係性が見えてきません。

しかし映画が進むにつれて、一年また一年と時が遡っていき、二人は恋人であったという過去がわかっています。

出会ったあの頃、

ラブラブだったあの頃、

そして…

そうやって、映画が進むにつれて二人の恋がちょっとずつ思い出されていきます。

自分も、ちょっと思い出しちゃった。

そのように、過去を遡りながら描かれる二人の軌跡の物語。

これが、めっちゃめっちゃ私に刺さりました。

その理由は、個人的にこの映画に対してすごく既視感を持ったから。

そしてそれは「今まで観てきた映画で同じようなの観たな」っていうのとは違うもの…

それは「自分もこんな恋愛したなぁ~」って感覚!(笑)

「自分も数年前こんなことあったなぁ~」って思う節が至る所にあったんですよね。

「付き合い始めた時はこんな風に、はしゃぎあってたなぁ~」とか「意地の張り合いでこんなケンカしちゃったなぁ~」とか私自身の過去に思い当たるシーンが満載なんですね。

もっと私事なことになると、伊藤沙莉演じる葉っていうキャラクターがこれまた顔も性格も昔付き合ってた彼女そっくりで…(照)

池松壮亮が演じるちょっとクールっぽい照生も、その時の自分に重なる部分が多くて…(照)

もうなんていうか、「自分のことがそっくりそのまま映画になってんじゃないの!」と思っちゃうくらいです。

映画を観終わっての帰り道は、私も色んなことをちょっと思い出しちゃっいました(笑)

そしてこの感覚は、たぶん私以外の多くの人も同じように持つと思うんですよね。

若い時の恋愛ってみんなこんな感じなんだと思います。

お互いまだ幼いから、好きな時はとことん好きだけど、別れる時は割とあっさりしちゃってる。

そんな誰しもが持つ”甘くも苦くもある思い出”を、私たちにもちょっと思い出させてくれる作品なんですね。

エンドロールで染みるクリープハイプ

そして、この映画で主題歌を含む劇中楽曲を担当しているクリープハイプが最高!

本作の松居大悟監督とクリープハイプとの関係性は非常に強いらしく、クリープハイプのMVを松居監督が多く手掛けていたり、別の松居監督作『私たちのハァハァ』(2015)の主題歌もクリープハイプであったり。

そんなクリープハイプが手掛けた主題歌『ナイトオンザプラネット』は、本当に映画のことをうまく表していて、ブッ刺さりましたね。

もとを辿ればこの曲をきっかけに、この映画の制作が始まったんですって!

歌詞といい、なんといい、映画を観終わった後に私のエモさを爆発させてきました。

ヘビロテでこの曲を聴きながら、またいろんなことをちょっと思い出す。

そんな映画館からの帰り道でした。


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

来週は、今回のアカデミー賞で3部門にノミネートされているアーロン・ソーキン監督最新作"Being the Ricardos"愛すべき夫妻の秘密を紹介する予定です。

お楽しみに!


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