見出し画像

"監督賞"編:第93回 米アカデミー賞 大予想!!

今月、4月26日(日本時間)に行われる米アカデミー賞。
それに先立ち、先月の3月15日(日本時間)に各部門のノミネーションが発表されました。

アメリカはもちろん世界中が注目する最高峰の映画の祭典。

その開催まであと約1週間。

今回はオスカー主要6部門の中の一つ、監督賞の予想をしたいと思います

本命・クロエ・ジャオ (『ノマドランド』)

文句なしの大本命は『ノマドランド』の監督クロエ・ジャオ

監督としてだけでなく、製作・脚本としても今作に携わっています。

注目すべき点は、映画を通じて映し出された、ノマドとして生活を送る人々と名優フランシス・マクドーマンとのリアルな交流。実際にノマドの人々との会話の大半はアドリブだったらしいです。

ちなみに、今作のように非俳優を映画に起用するという手法は、『ザ・ライダー』(2017)などのクロエ・ジャオのこれまでの監督作品でも度々用いられたきたものでした。

それで物語を成立させるなんて、それだけでこの監督が只者ではないことがわかりますね。

また、映画のどの部分を切り取っても美しいといえるほどの映像や、その映像を際立たせる音楽も、評価が高い要因となっているといえるでしょう。

すでに、ゴールデングローブ賞とBAFTA(英国アカデミー賞)のオスカー2大前哨戦を制したジャオ監督。

今回受賞となれば、2010年に監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』)以来史上2人目の女性監督のオスカーとなるとともに、中国系アメリカ人としては史上初となります。

対抗・デヴィッド・フィンチャー (『Mank/マンク』)

『Mank/マンク』で監督を務めたディビット・フィンチャー

今回で3度目のノミネートで、もう常連組と言ってもいいでしょう。

『市民ケーン』(1941)の共同脚本家 ハーマン・J・マンキーウィッツ、通称”マンク”を中心に描かれる『市民ケーン』の製作秘話的な映画ですが、なによりすごいのが、その『市民ケーン』で用いられた技法を現代風に今作に取り入れていること。

『ファイト・クラブ』(1999)などからもわかるように、大胆な演出に躊躇なく挑戦するフィンチャー監督。

時に前衛的すぎてその評価が遅れてくることがありますが、今作の場合は監督賞を含め最多10部門でのノミネーションを獲得し、監督としての評価の高さがうかがえます。

2011年のアカデミー賞では『ソーシャル・ネットワーク』(2010)で監督賞を最有力といわれながら、トム・フーパ―(『英国王のスピーチ』)に負けてしまったフィンチャー監督。

今年こそ、そのリベンジを!…といいたいところですが、『ノマドランド』と比較するとちょっと今年も厳しいかもしれないですね。

単穴・リー・アイザック・チョン (『ミナリ』)

3番手は、『ミナリ』より韓国系アメリカ人監督のリー・アイザック・チョン

1980年代にアメリカのアーカンソー州へ移住してきた韓国の移民家族を描いた一作で、実際に移民第1世代だった両親を見て育った監督自らの体験を基に脚本も手がけました。

アメリカ国内で大ヒットしている今作。

中でもキリスト教信者が多く劇場に足を運んでいるらしく、その要因は映画に散りばめられた聖書へとつながるヒントが関係しているらしいです。

そのような脚本の巧みさもあり、今回の高い評価につながったと思われます。

ポン・ジュノが韓国映画の監督として初めてオスカーを手にした昨年。今作はアメリカ製作のアメリカ映画ではあるものの、韓国人俳優と韓国系アメリカ人が主要なキャストとして出演し、チョン監督も韓国系アメリカ人です。

BTSなども含め韓国の文化的エッセンスが近年エンターテインメント界を席巻していることも、今作にファンが多い関係しているかも。

穴・エメラルド・フェネル (『プロミシング・ヤング・ウーマン』)

女優としても活動しているエメラルド・フェネル

初の長編映画監督作『プロミシング・ヤング・ウーマン』でいきなりのオスカーノミネーションです。また今作の脚本も手がけ、脚本賞にもノミネートされています。

女性レイプへの問題意識を前面に出したストーリーでありながら、映画全体のカラーリングは非常にポップに描かれており、それゆえに今作全体に漂う狂気感が見事に演出されました。

セクハラやレイプなど女性の権利を訴える映画というのは、女性監督だからこそ描ける観点というものがありますよね。

ちなみに、監督賞で女性監督が2人ノミネートされることは史上初。

93回の歴史で今回が初というのはなんだかさみしい気がする一方で、今年を境により多くの女性監督の活躍されることも期待したいです。

大穴・トマス・ビンターベア (『アナザー・ラウンド』)

デンマーク映画『アナザーラウンド』の監督トマス・ビンターベアがノミネート。

ストーリーを簡単に言えば、高校教師が酒におぼれていく話です。

日本では今年の9月3日公開予定ということで、未試聴の私は具体的な感想を述べることはできませんが、トレーラーを見る限りお酒の取り方がすごくおいしそうですよね。

観てるだけで酔ってきそうです(笑)。

BAFTAで非英語作品賞を受賞し、オスカーでも国際長編映画賞(以前の外国語映画賞)の最有力とされている今作。

『ROMA/ローマ』(2018)のアルフォンソ・キュアロン、『パラサイト 半地下の家族』 (2019)のポン・ジュノというように、ここ2年連続で国際長編映画賞を制した作品の監督が監督賞を受賞していることもあり、注目の一作です。

前哨戦の結果

ゴールデングローブ賞
クロエ・ジャオ(『ノマドランド』)

BAFTA(英国アカデミー賞)
クロエ・ジャオ(『ノマドランド』)

前述のとおり、前哨戦では無双状態のクロエ・ジャオ。これで選ばれなかったら、もう意味わかんないですね(笑)。

また、個人的にジャオ監督のゴールデングローブ賞でのスピーチが印象的だったので、オスカーの壇上での彼女のスピーチにも注目したいです。


他の予想記事が気になる方はこちらを!!!