当事者も支援者も悩みは尽きない。。。
トライフルは障がいのある成人の方の生活や就労を支援している。支援者としての未熟さはあるものの、熱量だけは高く持つ支援者でありたい、そんなことを考えさせられたエピソードについて書いてみたい。
トライフルで支援をしていると、いろんな相談が舞い込んでくる。
(例)
・経済的な理由で通院ができず、早く仕事に就きたくても身動きが取れない。
・離職後の退職金がもらえるのか、失業保険の適応がされるのかわからない。事務手続きのやり方、相談の窓口もわからなくて困っている。
・自分では、家の近くの支援機関を探したいと思って行動しているが、親や医療機関から止められている。
・親も子も、お互いに年齢を重ねてきて、関係性がギスギスしたものになってしまった。時には激しく口論したり、暴力沙汰になってしまうこともある。
・自立を意識するあまり、不安にかられてしまう。親元を離れて生活することの具体的なイメージがわかず、モヤモヤしてしまう。
・親に相談するとひたすら自己反省を促されたり叱責を受けるだけで、具体的な困りごとにはコミットしてもらえず、解決策が見出せない。
などなど
飛び込みのような形で切迫した相談を持ちかけてくださる方もいるのだが、その相談の内容は多岐にわたり、トライフル1機関だけでは対処しきれないことも多い。なので、お話を伺い自分たちだけでは支援しきれないと感じた場合には、積極的にニーズに応じた支援機関へのリファー(支援機関を紹介し、支援をつなぐ)ということも行っている。このような表現をすると、とてもスムーズな接続がなされていると感じると思うが、実際にはスムーズに行かないことの方が多いため、歯痒く感じている。一言でいうと、現場では「たらい回し」が横行しているのだ。
今月だけでも、私は複数回、たらい回しの現状と向き合っている。飛び込みで相談のあった方で、経済的事情、医療受診の困難、行政手続きの困りごとを抱えており、その方が在住している複数の支援機関へ相談したところ、「うちでは支援できない」のオンパレードで、その理由はおよそ「管轄が違う」、「分野が違う」、「新規は受け付けていない」といった感じである。では、どこに相談したらよいか教えてほしいという質問には、歯切れの良い回答が得られない場合がほとんどだ。
深刻な問題は、ここに挙げた支援機関は、「なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)」や「基幹相談支援センター」も含まれていたことだ。確かに、そういった中枢機関にも限りがあり、登録者と職員数の関係等で、新たな相談を受けいれにくであろう事情はわからなくもない。しかしながら、そういった支援ニーズに応えることを担っている上記の機関がそれを公然とやってしまったらダメだろう、と思うのだ。もちろん素晴らしい取り組みをしている機関もあるため、それらを全て否定するものではない。
私たちも、そういったニーズに応えきれていないし、「リファーしているのだから同じではないか」ということも確かに言えると思う。確かに、実力不足は明白なのだ。だからこそ、むず痒いのだ。でも、このままただでは転びたくない。だから、リリースはしていないし、できる限りフォローアップも心がけている。
先日、とある地域の基幹相談支援センターの職員の方に支援を要請したところ「とりあえずお話お伺いをお伺いだけになると思いますがご了承ください」と言われ、「お話伺うだけでは本人が困ってしまうので、具体的な支援に接続する方法を教えてほしい」とこちらから働きかけて、ようやく腰をあげてもらえたということがあった。役割が逆ではないか、と正直思ってしまった。
また、別の就労支援する行政団体の体験実習のプログラムにトライフルのメンバーを紹介したいと思い問い合わせると、冒頭から「日程が難しいです」「すぐにはできません」「体験プログラムと言ってもマッチングが大切です」「準備性が整わない人は参加できません」と、できない理由を並び立てられてうだつのあがらない想いをした。いずれも、こちらの状況について伝える前段階の話である。終いには「マッチングがいかに大切か。本人の希望に基づいたものか」と講釈までお始めになられたので「このプログラムは就労の出口ではなく、職場体験が不足している方にその機会をつくることに重点を置いたプログラムと聞いていた。不足している体験を補い、自分の適性を知りたいというニーズがある方に対して、準備性という専門用語で人を限定し、まるで出口支援のようなマッチング理論をたてに、でも、就職はできない実習と言われたら、当事者の方はどう感じるのか」と伝えたところ、相手も同じようなうだつのあがらない反応を示していた。話は平行線のまま、答えはまだ見つかっていない。
なんらかのご縁で、私たちに援助を要請してくださった方々に対して、何も手立てを打たずに、リリースする(手放す)ということを、私は好まない。まずは私たちが自身の力で役に立てそうなことを全力で探す。その上で、私たちができないことは、できる支援機関に必ずリファー(紹介)するまではきちんと関わる。その後のフォローアップもできる限り協力する。そういった熱量を持ち、伝え続けていくことを大事にする支援者でありたい。技術以上に、そういった熱量から伝わるものがある、と考えている。