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少子高齢化が障がい福祉にもたらす影響
少子高齢化が及ぼす影響
少子高齢化や人口減少という言葉は、日々生活しているとよく耳にする言葉である。しかし、どこか自分とはかけ離れたコトのように、そういった現象を捉えている節があり、自分にとってどのような影響があるのかなど、深く考えたことはなかった。そこで、今回はこのことについて自分なりにまとめていきたいと思う。
資料から見えてくる日本の人口動態
厚生労働省の資料によると、現在我が国には約1億2千万人の人が存在している。これだけ聞くとたくさんいるし問題がないように思えるが、人口ピラミッドを元に年齢別に見ていくと課題が明らかになってくる。それは、子どもの年齢層に比べ、大人(特に高齢者)の割合が高いということだ。急速な高齢化のスピードは世界でトップであるとも言われている。危惧すべきなのは現在の50代が亡くなる頃で、それを機にさらに少子高齢化に拍車がかかると言われている。1億2千人いた人口がその頃には8700万人まで減少する見込みもある。
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社会を支える人・社会に支えられる人
なぜそれが問題なのか。社会保障の視点から考えてみたい。私たちが携わる福祉サービスなど、我が国には優れた社会保障が整備されており、何か有事の時はこの社会保障の制度を活用することができる。つまり、社会に支えられることで生活を維持することができるということだ。この社会保障の運営には「税金」がまかなわれている。つまり、「税金を国に納めて社会を支える存在」と、「税金でまかなわれている社会保障を享受し社会に支えられる存在」がいるということだ。これらは誰しもが双方の立場になりうるため、どちらが優れているという類の話ではない。要は、そういった役割を日本人全体でまかない、うまく機能させ続けていくことが大切ということだ。
社会を支える人が減って、社会に支えられる人が増える
話を少子高齢化に戻そう。これらがなぜ問題かというと、この社会を支える人と支えられる人のバランスが大きく崩れる可能性が高く、社会保障の仕組みがうまく機能し続けることが難しいと考えられることだ。これは「労働人口」にも大きく影響する。労働人口とは、生産活動を中心となって支える人のことである。労働の中核な担い手として経済に活力を生み出す一方で、社会保障を支える存在でもある。
労働人口をいかに高めるか
戦後のベビーブームをピークとして、現在ではこの労働人口も減少傾向が続いている。これは当然、経済にマイナスな影響を及ぼすとされている。社会保障の担い手(人)が減ることによって、当然お財布(社会保障費)事情も悪くなる。支え手に対して、支えられる人が多くなる。支え手も、お財布も苦しい状況で、支えらえる人は増えていく。悪循環は続いていく。なんとかして、労働人口の増加に向けた打開策を見出さないと取り返しのつかないことになる。現在、その打開策として①女性、②高齢者、③外国人の労働力化が盛んに議論されている。私は④障がい者の戦力化も水面下では進んでいるものと考えている。
報酬単価削減に伴う福祉サービスの現場で起きていること
最後に、少子高齢化に伴い、障がい者支援の現場で起きていることをまとめておきたい。それは、なんといっても人材不足の問題である。これは他の業種と同様、障がい者支援の現場でも間違いなく起きている問題でもある。昨今行われた福祉サービスの報酬改定によって、福祉事業所に対して、より一層厳しい制約が課されることになった。これによって、事業所に入ってくるお金(報酬)は少なくなったところが多いと思われる。事業所に入ってくる報酬額が減ると、当然運営費が厳しくなり、人件費等にも影響が出る。専門職として、ある一定の専門性も求められるため、スタッフには業務時間以外に勉強したりする時間が必要となる。しかし、給与は安い、頑張れない。という悪循環の中では当然、人材の質も劣化していく。
一方で、人口減少により税収は減少しつつあるので、少しでも出費を避けたい行政側の事情も伺われる。就労系のサービスが拡充傾向なのは、就労者をたくさん輩出することで、福祉事業の予算を削減し、逆に税収を高めたい意図も垣間見れる。これらは決して悪いことではなく、合理的な判断であるように思う。しかし、それが解決策かというと、まだまだ不十分であるようにも思われる。
10年20年30年先を見据えて、障がい福祉の現場には今、ビジネスの手法を使って、持続可能なサービスの提供と人材も含めた品質の向上が求められているのではないだろうか。民間企業で支援の仕事をしている者として、こうした公費に左右されることなく、誰しもが安心して生活することができる仕組みづくりに、これからはより一層真剣に取り組んでみたいと思っている。