スーパーやコンビニで買える多彩なビールたち。スタイルごとに解説します【買い物をより楽しく】
「スーパーを利用する際は最小人数で、昼や夕方のピーク時間帯を避けましょう」と言われたから、朝からビールを飲みながら1人でスーパーへ行った。
夫の出勤時間と被ったから、途中河原に寄りつつ草に埋もれたりして。
草はサイコー!!
なぜ5月に飲むビールはこんなにうまいのだろう。
そういえば4月もうまかった気がする。
外出が制限されるあまり、たまにふらっと出られる散歩や買い物が自由で幸せな時間に思える。
4月5月は花屋が繁忙期で、とにかく仕事帰宅ビール睡眠仕事帰宅ビール。朝5時台に起きて出社すると何故かワインよりもビールがほしい。仕事中に「ビールの残像」と呼んで炭酸水を飲んでいる。
そして思い出してほしい、スーパーのビールの棚の白く巨大であることを。伸び伸びとした蛍光灯を。
スーパーにおいての占有面積の偉大であることを。
ここで疑問がある。
あなたは一体どうやってその中から1本を選びとっているのだろうか。
ビアメーカーのCMを見ていると、どうやら全てうまいらしいことがわかる。うまいながらも人それぞれ好みがあるらしい。
「おれはアサヒスーパードライしか飲まない」とか「なんだかんだキリンがうまい」とか。
一体なぜ、いつ、その「お気に入りの1つ」が決まったのだろうか。
ある特定の銘柄を殿堂入りさせることで、他の選択肢を見えなくしてしまっていないだろうか。
それは勿体ないことだ。何故ならすべてうまいらしいのだから。
うまい上で、目にフィルターがかかっているだけならば、せめて手に取る機会を作ってもいいものだ。
ということで、今回はスーパー・コンビニで買えるビールについて調べ、タイプ別に解説した。
自粛生活の中徒歩で行ける圏内の店舗のみを対象にしているため、調査数は少ないが、参考になれば嬉しい。
以下、今回の目次である。
1. エールとラガー
この記事は「ビールよく飲むけどいつもキリンだわ」というような方を読者として想定しているため、「ファミマでシトラホップ使ったIPAが出たらしい」レベルの方が読んでもおそらく知っていることしか書いていない。
いつものワインの記事のように、京極夏彦の本を2ページにまとめるようなライトさで解説する。いわばこれはビールの上澄みである。
まず、ビールにはざっくりと2つのカテゴリがあることを覚えていていただきたい。
エールとラガー。発酵方法によって分類されている。
おそらくビール世界で最も大きなくくりであり、ビール世界に2つの国があるようなイメージだ。この中に細分化されたスタイルがある。
スタイルとは、パンで言えばフランスパン、ベーグル、コッペパンというようなことだ。原料は概ね同じだが、製造方法が違う。
ビールが充実したスーパー( +コンビニ) では、エールもラガーも入手可能である。
近所で買える銘柄だとこのあたりだろう。これ以上揃っているお店が近隣にある方のことが心から羨ましい。
この記事では、ビールをスタイルごとに分けて解説していく。
カテゴリに分けたところで、アサヒスーパードライは…ラガーだ!!(ドン) だけでは大して役に立たない。SNSの自己紹介文に日本に住んでますよろしく!とだけ書いているようなものだ。そんな人がいたら仲良くなれるか不安になってしまう。
2. ピルスナー、とりあえずいつもの。
カテゴリ: ラガー
スーパーで買える銘柄
・アサヒスーパードライ
・キリン一番搾り
・サッポロ生ビール黒ラベル
・プレミアムモルツ
・オリオンビール
〜ここから異国の風〜
・ハイネケン
・コロナビール
・バドワイザー
・シンハー など
ビールを普段飲まない人でも、名前くらいは聞いたことがあるだろう。錚々たる面子である。
シェア率の高さから分かるように、日本で「ビール」といえばほとんどはこのスタイルだ。
ピルスナーのオリジナルはチェコの都市ピルゼン。
いまでは世界中に広まっている。
わたしが大好きな漫画『もやしもん』で、「ジャブジャブ飲めるビール」という表現があるが、ピルスナーはまさにそれにふさわしい。キレのある辛口。まろやかな泡が立ち、黄金色に輝く。バケツ1杯飲める。
居酒屋などで生を頼むとビールジョッキで出されるが、ジョッキは非常に重く、力を込めて持ち上げなければいけないので一口が大きくなりやすい。また、口が広く気が抜けやすいので、美味しく飲み切るためには急いで空けなければならない。
店でビールを飲むと酔いやすい理由がこれだ。
ジョッキに残った最後の3口の味を想像して、落ち着かない気持ちにならない方が難しい。
関係ないことだが、大学時代に音声学の教授が「アサヒスーパードライの発音は間違っています」と言っていたのが印象に残っている。
3. ピルスナーのライバル、ヘレス。
カテゴリ: ラガー
スーパーで買える銘柄: レーベンブロイ
以前はよく見かけたが、いまではかなりレアになってしまった。
ドイツ産のこのビールの国内販売を担っていたアサヒビールが、2018年に販売を中止してしまったからだ。
いま販売されているレーベンブロイは韓国で生産され国内に「再上陸」したものだそうだが、飲んでみた感想は「やっぱ普通にうまいな」だった。
この香りをかぐと、なぜかChristian Diorの名作・Miss Diorをかいだときと同じ気持ちになる。味は穀物の甘さ、香ばしさが楽しめてたいへん美味しい。テイスティングメモに「おにぎり」と書いてあった。
ヘレスはピルスナーの対抗馬としてドイツで開発されたスタイルだ。苦くてドライでキレのあるピルスナーとの違いは、麦らしい豊潤な甘さ。もし見つけたら飲み比べてみてほしい。
ちなみにレーベンブロイは「獅子のビール」という意味らしい。超かっこいい。
4. 黒ビール地方からこんばんは、シュヴァルツビール。
カテゴリ: ラガー
スーパーで買える銘柄: エビスプレミアムブラック、アサヒドライブラック、キリン一番搾り黒生など
なんとなく、ざっくりとした雰囲気で「黒ビール」と呼ばれている括りがある。
分類する際に色で分けるのは間違っていない。三毛猫、さび猫、黒ビール。赤パジャマ青パジャマ黒ビール。
このコーヒーのような黒色は麦を焙煎した色で、実際に「黒ビール」の多くはコーヒーのような香りをもつ。
シュヴァルツビールもここに分類されるが、ラガー製法であるため、後に紹介するスタウトよりも比較的すっきりしている。
ラガーの黒ビールでスーパーで買える→シュヴァルツビール
エールの黒ビールでスーパーで買える→スタウト、ポーター
と覚えていてほしい。
5. ここからはエールの国、ペールエール村。
スタイル: エール
スーパーで買える銘柄: よなよなエール、TOKYO CRAFTペールエール、キャプテンクロウ・エクストラペールエール、LUCKY DOG など
ビールを飲むとき、冷たい缶のまま飲むのは乙なものだ。夏場などは特にすばらしい。このまま春夏秋冬のビールについて謳ってフリースタイルの清少納言になったっていい。
しかし、エールカテゴリのビールを飲むときは、ぜひグラスにそそいでほしい。
ドリンカビリティを追求したラガーと異なり、エールはそれぞれに個性的な香りを持つ。
缶ビールの口では小さすぎて鼻まで香りが届かないため、冷やしたグラスに注ぐと魅力を100%感じられる。
また、エールを飲む際の適正温度はラガーよりも温かい。「ちょっとぬるくなってもうまい」優しいビールである。
もしいま、あなたが何か食べながら(または飲みながら) この記事を読んでいるなら、ぜひ鼻をつまみながら次の一口を食べてみてほしい。
味の大半が失われてしまうはずだ。
人間の味覚は嗅覚に大きく左右されている。咀嚼して飲み込んだ後でもなお、自分の内側からくる香気は鼻を抜ける。
ペールエールは本来「淡い色のエール」という意味だが、実はペールエール村の中にもいくつかの地区がある。多様な出身地をもつビールが住んでいる他民族な村だ。
よなよなエールは「アメリカンペールエール」に分類される。
アメリカンペールエールと比較すべきはイングリッシュペールエールで、よなよなエール公式によると「コクのイングリッシュ」「香りのアメリカン」だそうだ。
よなよなエールは香りがいい。
カスケードホップという、柑橘系の香りがあるホップが使用されている。
6. エールの多様性
スーパーで買える銘柄: 赤濁、SORACHI1984 など
エールの国は他民族国家だ。面積の大きいラガーの国に比べ、とにかく多様でレイヤーがある。
赤濁。
ある程度ビールの知識がある方が見たら「レッドエール?」と訊きたくなるだろうが、公式HPによるとただの「エール」と紹介されている。
本来のレッドエールは樽熟成によって色を変化させたり、焙煎した小麦を使ったりするが、赤濁は 特殊な酵母+焙煎した大麦麦芽 によって美しい赤銅色を生んでいるらしい。酵母なんでもできるかよ。
SORACHI1984はお気に入りのビールの1つだ。
ソラチエースというホップを使用したゴールデンエールで、檜様の香りがあって癒される。誰も共感しなくていいがホヤみたいな風味を感じる。
7. IPAってなんの略?
カテゴリ: エール
スーパーで買える銘柄: インドの青鬼、LUCKY CHICKEN、TOKYO CRAFT I.P.A.(限定醸造) など
ビールを飲み始めたとき、ビアバーでとりあえずIPAって言っとけば通ぶれるだろと思って頼みまくり、口をめちゃくちゃにしていた記憶がある。
IPAの特徴はその爽やかな香り、強い苦味にある。
ビールの原料がホップだと思っている方がたまにいるが、歴史的に見るとその用途は保存料だ。
-----ここから数行は歴史のはなしだからダルかったら読み飛ばしてよい-----
かつて、人々は船でビールを運んでいた。大航海時代はイギリスからはるばるインドまで。低アルコールのビールはなにかと腐りやすく、当時の衛生技術では不安が大きい。
どうにか安全なビールを海運しようと、当時の人たちは防腐剤として大量のハーブ (=ホップ) を入れた。そうして苦味の効いたビールが出来上がった。
-----歴史のはなし終わり もどってきてね-----
IPAとは、India Pale Aleの略である。
スーパーで買える確率が高いのが「インドの青鬼」。じんわりとした苦味と、グレープフルーツのような爽やかな香りが楽しめる。
ちなみにGRAND KIRINからIPLというややこしいおいしいビールが出ているが、こちらはIPAのラガー版である。
8. 多様な小麦のビールたち。ヴァイツェン、ヘーフェヴァイツェン、ベルジャンホワイト。
カテゴリ: エール
スーパーで買える銘柄: ヒューガルデン・ホワイト、ダルグナー、銀河高原ビール、水曜日のネコ、LUCKY CAT、BLUE MOON、YEBISU 華みやび など
ヴァイツェンとヘーフェヴァイツェンとベルジャンホワイトの違いについて書こうとすると記事がもう1つ必要なため割愛する。すべて小麦のビールである (その他のビールは大麦を主とする)。
念のため書くと、
ダルグナーヴァイツェン→ヴァイツェン
銀河高原ビール→ヘーフェヴァイツェン
水曜のネコ、ヒューガルデン・ホワイト→ベルジャンホワイト
に分かれている。が、これを覚えたからって誰が褒めてくれるというのだろう。
これらは通称して「ウィートエール」や「白ビール」と呼ばれ、しばしばコリアンダーやシトラスピールが加えられるために「発泡酒」扱いの憂き目に遭う。
柔らかさの中にスパイシーさ、ジューシーさが感じられる。ビールの泡の中でもウィートエールの泡は飛び抜けてうまい。
ウィートエールにはバナナの皮やクローブのような特徴的な香りをもつものがあり、ワイングラスなどで楽しむとマジでいい匂いがする。
9. エールの黒ビール、スタウトとポーター
カテゴリ: エール
スーパーで買えるビール: GUINNESS、東京ブラック
白いビールの次は黒ビールを紹介しよう。
ラガーのシュヴァルツビール同様、焙煎した麦から造ったビールだが、ここはエール王国の土地。
コーヒーやキャラメル、チョコレートのような香りをゆっくりと楽しんでほしい。ぬるくなっても美味しいビールはいつまでも終わらない恋のようだ。
よなよなエールの仲間に、真夜中色の「東京ブラック」があるのをご存知だろうか。
このスタイルはポーターと呼ばれ、18世紀のイギリスで大きな人気を博した。
Porter(荷運び人) がよく飲んでいたからこの名前になった説がある。わたしはこういうトリビアが好きだ。
ギネスはスタウトと呼ばれる、ポーターの後に開発されたスタイルである。
定番品の中でも傑作と評価したいが、中でも素晴らしい特徴がこの泡。
実際に体験してみていただきたいが、シルクのように滑らかな泡に覆われている。洗顔のCMに使われるような泡だ。通常炭酸を使用するところを、ギネスは窒素を充填している。
空いたギネスの缶を振るとカラカラと音がするが、これは泡をクリーミーにするための装置(ギネス・ウィジェット)が缶の中に入っているためである。
生産の予算の中にこの装置を組み込んだ人が出世していますように。
10. セゾンのシーズン
カテゴリ: エール
スーパーで買える銘柄: 僕ビール君ビール (ローソン限定)
これからの季節、特におすすめしたい。
ベルギーの農家さんが冬に仕込み、夏に喉を潤すためのビールであり、セゾンとはすなわちシーズンである。
フランスではBière de Garde(ビエールドギャルド) と呼ばれることもある。名前が格好いいだけで試してみたくなるのは何故だろう。
セゾンの特徴はフルーティーさとスパイシーさであり、僕ビール君ビールはその飲み心地の爽やかさで群を抜いている。
瑞々しい桃や柑橘、ホワイトペッパーを思わせる香り。夏場、スポーツドリンクとしてどうにか会社に持ち込めないだろうか。
おまけ 第三のビールって何よ
もしも。
スーパーの棚でなにを買おうか悩んでいるときに、手に取った缶のどこかに「その他の醸造酒」または「リキュール」と書いてあったら、それはビールではない。
いわゆる「第三のビール」と呼ばれる新しいジャンルの飲料だ。
では第三のビールが何者かというと、
・麦以外の原料を主としているもの (その他の醸造酒)
・発泡酒に麦のスピリッツや焼酎を加えたもの(リキュール)
に大分される。
正直こんなことは覚えなくたっていい。
あなたが味に満足するのなら発泡酒だって第三のビールだって構わない。
ただいつもも手癖で買ってしまう銘柄から少しだけ目を逸らして、新しい味にチャレンジしていただけたら嬉しい。
グラスについては一応それぞれのスタイルごとに推奨されている形があるが、一般家庭で揃えだすと大変なことになるから、自分がうまいと感じるものを使って構わない。こういう時に大切なのは理論よりも自分の感性である。
人によっては「最寄りのスーパーにピルスナーしかなかったわ」という方がいるかもしれないが、
多種多様なビールはコンビニ、ドラッグストア、ホームセンターなど様々なお店に潜んでいる。
制限された生活の中で行動範囲が限られてしまっているだろうが、こんなときこそいつも見ないビールの棚をまじまじと眺めてみてほしい。小さな範囲から世界は広がっていく。
それでは楽しい生活を。
JUNERAYでした。
(お酒は20歳になってから)
●2020/05/30 追記
スーパーやコンビニの店内ですぐ確認できるように、まとめ画像も作りました。
よかったら使ってね。
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