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(本)ファーストペンギン シングルマザーと漁師たちが挑んだ船団丸の奇跡

自分の経験・体験というのは読書をする際のアンテナにも影響するようで。

例えば、ナイチンゲールの自伝なんかは小学生くらいの時から何度も耳にし、ストーリーは知っています。
位の高い家に生まれたナイチンゲールが自ら志願し、当時、地位が低かった看護師になり、戦場で白衣の天使となる。小さい頃は、「すごい、立派だなぁ」その決意・行為に純粋に感心していたのですが、今は「お主のモチベーションはなんだったんだ、ナイチンゲールよ」とその背景なり思想の部分にフォーカスしてしまいます。
偉人の自伝や伝記に関わらず、自分の周りの人を見ても「なぜ、この人はこんなに頑張れるのだ?」と考えることが少なくありません。

本書を読んだ時も「坪内さん、なんで自分をそこまで犠牲にして走り続けられる?」というのが第一に思ったことでした。
シングルマザーだった坪内さんは、(別に出身でもない)山口県萩市で翻訳の仕事や旅館の仲居業を務めながら、何とか生計を立てていた。 そんなある日、1人の漁師との出会いを機に、漁業立て直しを懇願され、周囲とぶつかり合いながらも萩大島船団丸を軌道に乗せるというあらすじ。ちなみに、事業としては本来捨てられてしまうような魚も含め、お客のリクエストに応じて鮮魚を箱詰めし、送るというもの。

船団丸事業を企業に乗せるまでの苦労が半端ない。
漁師さんたちは魚を取ることに人生を賭けてきたとも言える人たちばかりで、悪く言えば、それしか知らない頑固者ばかり。各種申請は全部、坪内さん。
営業をするにしても、俺様の魚を送ってやるんだという態度を表に出してしまう漁師さんたちではうまくいくはずもなく、もちろん全部坪内さん。朝に子供を預け、そのあしで新幹線に乗り大阪へ。大阪では飲食店を分刻みで周り営業という日々。注文していたのは刺身がメインだそうですが、10kgも太ってしまったのだとか。さらに、溢れる熱意は温泉の脱衣所まで名刺を持って行って、配るレベルに笑

子供に「お母さん、僕が死んだら家にいられる?(保険金で)」などと真顔で言われたり、仲間だと思っていた漁師にぶん殴られたり。
これ、キレてやめるだろ・・・と思うようなところも、萩の漁業、ひいては日本の漁業を救うために私が頑張らないと、マジでダメになる!という強い思いのもと、乗り越えていく姿は痛快でもあります。
別に、漁師の家に育ったわけでもなく、アジとサバの区別ができなかった1若い女性がここまで本気になれる。
彼女を突き動かすものはなんなのかなと思いました。

もしかしたら、若い頃に数度、死に近づく経験をしているのがその肝っ玉を作っているのかもしれません。
TVドラマ化もされていたので、気になる方はチェックしてみてください。
元気になれる、そんな1冊。

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