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アダンの海辺
新しい図書館で別冊太陽の田中一村氏の本を見つけた。
この雑誌は以前にも読んだ記憶があるが、久しぶりに触れる田中一村氏の絵は雑誌の小さな画像ではあるにもかかわらず、観る側に息を飲むような驚きを与えてくれ、久しぶりに読みたいという衝動が生まれた。
私は日本画はなじみが薄いが、田中一村氏の日本画には執念のような情熱に、純粋性なエネルギーに惹きつけられる。
生前はほとんど評価されなかったようだが、NHKの日曜美術館を通して一気に世に知られるようになった。
田中一村氏は50代になった頃(私が生まれた時期)に単身で奄美に移り、貧しい暮らしをしながらも、染め物工場で働きながら奄美の植物や鳥等の絵を数々生み出した。
その独特の色合いとシャープな構造は、観る者を予定調和に終わらせない独特の世界観を含んでいる。
特に田中一村氏の奄美に移られてから描かれた絵には、情熱的でとても強く惹かれる。
美術大を2か月で退学して、画壇からは認められず、生前は世の中にはほとんど知られずに、ひらすら自分の世界を求め抜いた。
田中一村氏の絵の評価は、すべてのものにピントがあっていて日本画ではないとか、全てのものが激しい存在感で飛び込んでくる南国の植物や鳥を見事に表現しているとか大きく分かれる。
田中一村氏も晩年、知人に以前に売るために描いた絵を別の絵と差し開けて欲しいと訪れ、以前の売るために描いた絵はその場ですべて焼いたという逸話もある。
このエピソードだけからすると偏屈な絵描きというイメージが伝わってくるが、やはり晩年は、売るためではない本当に自分のためにあの世に携えていくための絵を求め続けてこられた純粋性の裏返しではと感じた。
本には、二眼レフカメラで一村氏が撮影されたモノクロ写真も掲載されている。
アダンやビロウの背後に広がる奄美の海辺の風景は絵の構図と重なる。
モノクロのフィルム写真はやはり趣があるなと思う。
以前に田中一村氏の絵を観た際は、単にその南国の情熱的に惹かれた感じであったが、今回は、「裸の天才画家 田中一村」大野芳著を合わせて読み、奄美に移り住んで経緯や、奄美でのエピソード、そして亡くなってから世に広まっていく流れに触れて、本当に波乱万丈の生涯を送られたのだなと感じさせられた。
奄美の田中一村記念館にもいつかは訪れてみたい。
東京都美術館で9月19日~12月1日に田中一村展があるようで、何か上京と合わせて訪れてみたい。
東京都美術館で「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」が今秋開催へ|美術手帖 (bijutsutecho.com)
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