アナログゲーム・デザインにおける「エリアマジョリティ」の先手/後手有利について
こんにちは、ちゃがちゃがゲームズ/うずまきスイッチの@jun1sです。
twitterでみかけた、りかちさんとN2さんの「エリアマジョリティ」についての「先手が有利か、後手が有利か」というお話がとても面白くて、個人的にはどちらも自分でも感じていた事なので、納得感がありました。どちらの方もボードゲームデザインの大御所で、いつもここまで考えてデザインされているのだなぁと、尊敬しきりです。
エリアマジョリティとは、国盗りゲームのように、ある特定の地域に各プレイヤーが自分の駒を送り込み、最終的にそれぞれのエリア毎に一番たくさんの駒を送り込んだプレイヤーがそのエリア「獲る」というルール/システムです。
エリアマジョリティにおいて、先手が有利か後手が有利か、についてですが、エリアマジョリティの種類によって若干、変わってくるのだろうと思います。
エリアマジョリティを形作るルールの中には、例えば次のような要素があります。
1. タイ(同数)の場合の処理
2. エリアの駒の上限数
3. 2位以降の扱い
4. 決算タイミング
タイ(同数)の場合の処理
タイ(同数)の場合の処理とは、エリア内にある駒の数が同じだった場合に、どちらをエリアの勝者とするか、という事です。一般的に次のようなパターンがあると思います。
a) どちらも勝者
b) どちらも敗者(エリアの勝者なし)
c) 先に駒を置いていたプレイヤーが勝者(先置き有利)
d) 後に駒を置いていたプレイヤーが勝者(後置き有利)
先置き有利なら先手番有利ですし、後置き有利なら後手番有利です。どちらも勝者/敗者ならば、特に手番有利差はありません。最近のゲームは、手番差を無くすために、a)かb)になっている事が多い気がしますが、これが往年のユーロゲームらしさ(つまり「競り」らしさ)を失わせているのではないかとも思っています。
尚、どちらも勝者の場合に、効果を2人で分かち合う場合や、両方とも同じものが貰えるケースがありますが、これも手番差には影響しないと思います。
エリアの駒数の上限数
エリアに置ける駒に上限があるケースがあります。例えば「ビッグショット」では、1つのエリアには7個までしか駒が置けない為、先に4つ置いてしまえばそれでマジョリティが確定します。
つまり、先手が先に1個置いたエリアに後手番が追従したとしても、どこかのタイミングで上限に達し、先手番のマジョリティが確定してしまう訳です。
この為、エリアに置ける駒に上限がある場合、先手番が有利です。
2位以降の扱い
エリアに置かれた駒が、赤5個、青4個だった場合に、青になんらかの良い事があるかどうかというのは、プレイに大きな影響を与えます。
もし、青に一切の救済措置がなく、単に「無駄な投資」となって消えてしまうだけならば、そもそも青はここまでの競り上げをしたでしょうか?
まぁ、熱くなって競り上げてしまうことも多いのですが(笑)、冷静なプレイヤーであれば、そもそも先手番がそのエリアに駒1個を先に置いた時点で、そこへ追従しつづけた上で競り負けるデメリットについて思いを巡らせます。そして、とりあえずは先手プレイヤーの余力がある間は、仕掛けるのを待とうか、などと考えます。この時点で、既に先手番が有利です。
しかしもし、2位以降にも何らかのメリットがあるのであれば、「後追い」にも理が生まれてきます。必ずしも投資が無駄にならないのであれば、ここで追従しておいて、追い越せそうなら追い越せばよい、となるわけです。
つまり、2位以降にも何らかのメリットがあるならば、特に先手有利とはならない可能性が高くなりますが、そうでないなら、やはり先手有利と言えるでしょう。
決算タイミング
例えば「王と枢機卿」では、前半ラウンドが終わった時と、後半ラウンドが終わった時、それぞれで「決算」が起こります。決算とは、各エリアのマジョリティを解決して、それぞれの効果(主に勝利点の獲得)を得るという処理です。
エリアマジョリティのゲームでは、多くの場合、このように「ラウンド」または「ゲーム終了時」のタイミングで決算が起こります。各プレイヤーが得られる「エリアに駒を置く機会」の回数は平等に訪れる事になり、先行有利にはなりません(後述しますが、むしろ後手有利です)。しかし、決算タイミングが決まっていないケースもあります。
特に多いのが「エリアの駒数が上限に達した場合」に即時に決算が起こるケースです。例えば「フランチャイズ」では、エリアに出店する上限数がエリア毎に決まっており、そのエリアで誰かが「絶対的多数」を取るまでは決算が起こりません。逆に言えば、誰も多数を取らずにゲームが終わる、つまり決算が起こらずに終わってしまう事もあります。
決算タイミングが上限数到達時に決まるという事は、後手番に平等に駒を置く機会が与えられていないという事であり、やはり先手有利となります。他にも「エスノス」のように、山札から3枚目のドラゴンが引かれた時点でゲームが終了する、つまり、各プレイヤーの手番数が同じだと保証されていない場合にも、後手番は不利となります。
しかし、エリアは1つではない
ここまで説明した中では、「先手有利である」とされるケースが多かったと思いますが、これらはあくまでも特定のエリアを複数プレイヤーが狙っている場合の話です。
実際にはエリアは複数存在し、エリアマジョリティの醍醐味とは「効果の高いエリアを少ない駒で獲る」ことにあります(言い切ってしまいました、すいません…)。
つまり、特定のエリアで競り合った結果、いくら先手番が有利とされようとも、後手番には「残ったエリアの中で、一番有利に少ない駒でエリアを獲れる選択肢を探す」という権利が残っているのです。
先手番にはエリアをくれてやるかわりにそれなりの投資をさせておき、後手番はゆっくり美味しい場所をノーリスクで選択する、という事ができるのが、エリアマジョリティの面白いところであり、後手番有利と言われる所以でしょう。
まとめ
エリアマジョリティは、(手番数が全員平等である場合には特に)一般的には「後手有利」だと思います。しかし、1つのエリアだけを見た場合、「先手有利」である事が多くなります。つまり、そのゲームにおいて、特定のエリアを獲る事が非常に強いようにデザインされている場合には、先手有利の色が濃くなり、そうなっていない場合には後手有利となるのだろうと思います。
最近のボードゲームはこの辺り様々な解決方法が探られていて、とても面白いと思います。そういった目でボードゲームを見ていくと、また一段とボードゲームを楽しめるかもしれません。
皆さんのエリアマジョリティ論も、ぜひお聞かせください。
おまけ:私がシュガートピアに施した、エリアマジョリティのある「仕掛け」とは
私が制作した新作のボードゲーム「シュガートピア」も、エリアマジョリティを取り入れたゲームです。見た目からご想像がつくように、往年の名作「カルカソンヌ」のエリアマジョリティをアレンジしたものです。繋がっている草原上にいる自分の駒が多い方が、その草原を獲ります(このゲームでは、自駒(グミベア)はカード自体に印刷されています)。
カルカソンヌはとても面白いゲームなのですが、実は私は「1位以外のプレイヤーの置いた駒は無駄になる」タイプの決算方式が好きではなく(ケチなもので…)、シュガートピアには、ちょっと面白い仕掛けを入れています。
それは、「エリアに自分のコマ(シュガートピアでは、タイルに印刷されている自分の色のグミベア)を置いた時に、繋がっている草原の勝利点(砂糖駒)を1個奪ってしまえる」という、エリアマジョリティの前提を覆す、割と衝撃的なものです。
つまり、そのエリアに自分の駒を参入させた時に、そのエリアの勝利点(砂糖コマ)を先取りできてしまうのです。これは、エリアマジョリティの大前提を崩してしまいます。なにせ、そのエリアを獲った場合の勝利点を、後から参入したプレイヤーが持って行ってしまうわけですから…。笑
これによって、そのエリアに先行したプレイヤーだけでなく、後追いのプレイヤーにもメリットが生まれ、エリアマジョリティ争いを活発にさせています。とはいえ、そのエリアの勝利点そのものが無くなってしまうのでは意味がありませんから、グミベアで奪えない「ハニー駒(黄色い駒)」も用意しました。レインボーのわたがしひつじがそれです。
このハニー駒はゲーム終了時まで残る為、エリアマジョリティの喜びも最後まで必ず残る事になります。もちろん、エリア(草原)に残っている砂糖駒もエリアの勝者が一緒に貰えます。
このようなルールにした理由は、このゲームの見た目から、ゲーマーではなくライトゲーマーが一緒に遊ぶ事が想定された為です。ライトゲーマーは、ゲーム終了時に起こる未来のエリアマジョリティよりも、「今、獲得できる砂糖駒」の方に喜びを感じます。そうやって目先だけを見て楽しく遊んでいるプレイヤーに、熟練のプレイヤーのエリアマジョリティ争いが邪魔される構図を作りたいと思った次第です。
もしよろしければ、2020年3月8日(日)のゲームマーケット大阪、2020年4月25(土)~26(日)のゲームマーケット東京春にて販売しますので、見に来て頂ければと思います(一部、ネット通販も行っておりますが、現在品薄中です)。
公式サイト
https://chaga2.jimdofree.com/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0/sugartopia/
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