ユニクロから学ぶ、失敗の哲学
テレビをつけると、今日も俳優の綾瀬はるかさんがユニクロのCMに出演しています。
サザンオールスターズの名曲が流れるのもお馴染みです。
僕たちにとってのユニクロは、ここ数年でグッと距離が縮まったように思います。
僕の場合、ちょうど10年くらい前までは、ユニクロはヒートテックを代表とする下着を買うお店でした。(それよりも少し前、2008年の第一次ブームの記事を見つけました。)
それが今では、ワードローブのほとんどをユニクロが占めています。
この理由は商品の質の高さもそうですが、何よりも使い勝手の良い「道具」のようなものとして捉えていることが当てはまりそうです。
それもそのはず。ユニクロは、「服装における完成された部品」「人それぞれのライフスタイルをつくるための道具」と明言しています。
世界一に近づくユニクロが、現在のユニクロに至るまでの軌跡を振り返ることができる。杉本貴司著『ユニクロ』を読んだ感想を述べたいと思います。
柳井正の逆算思考
今から30年前の話です。1991年、ユニクロが23店舗に過ぎない頃、突然社長の柳井さんから「全国にチェーンを展開する」「毎年30店舗ずつ新規出店する」「3年後には株式を公開する」という構想が語られます。
これは「なるべく早くに寡占状態を作る」という戦略がありました。つまり、カジュアルウェアのチェーンとしてはユニクロの認知を得ることです。
「それまでも私は努力してきた。でも、あまり成長がなかった。それはなぜか。行く先が定まっていなかったからです」
ユニクロが世界一を目指すことを決めたとき、柳井さんの進むべき方向が明確になったといいます。
そして、目標のない努力をしていた時代を「暗黒の10年」と表現しています。
つまり、逆算思考ですが、ビジネスにおいてこの考え方が重要であることは誰もが認識していると思います。
しかし、それを本当の意味で実行できている人は少ないのではないか?と思わされる内容でした。
柳井さんは、プータロー生活を終えて家業の小郡商事に入社し、そこから上場を経てアパレルの本場である東京に進出しました。
国内の店舗運営に人手が足りないと社内から悲鳴が聞こえてきても、海外進出を推し進めたのは、世界一を目指すという明確な方向を定めたからだといいます。
「三行の経営論」
これをもう少し掘り下げたのが、「三行の経営論」です。
三行の経営論とは、
です。
30店舗に満たない田舎の中小企業が、世界一を目指す道筋を描き始めたのは、この終わり(目的)を明確にし、「商売人」の視点から「経営者」の視点に変容できたからだと述べます。
これは、アメリカの経営者ハロルド・ジェニングスが書いた『プロフェッショナルマネジャー』という本に記されている一節です。
現実の延長線上にゴールを置いてはいけない
フリースやヒートテック、エアリズムなど、飛躍的な成長を支える大ヒット商品を世に送り出しているユニクロですが、これらは現実の延長線上では生まれなかった商品です。
これらが実現した理由は、世界一を目指すという目的意識があり、地に足の着いた経営をできたからだといえます。
世界一を目指すという目的がないと、どうしても理想だけが飛躍し、実現可能なプロセスも思いつかなかったと読み取りました。
経営者の柳井さん自身が、この信念を曲げることなく、歩み続ける限り、革新的な商品は生まれ続けるのかもしれません。
失敗の原因を考え続けること
この書籍、もっとユニクロを讃える内容かと思っていたため、正直に言うと想定外の読書体験でした。
ユニクロが現在の成功に至るまで、たくさんの失敗を経て辿り着いたことも深く理解することができました。
その一つが、世界一を目指す逆算思考です。
僕もビジネスにおいてはその重要性を理解していますが、つい感覚的な行動に走ってしまうことがあります。
この書籍はそれがビジネス成功にはつながらないことを示してくれました。
ユニクロや柳井さんの思考に触れることができ、非常に興味深いです。ぜひ一度手に取ってみてください。
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