【数学】逆関数・媒介変数表示とその微分
こんにちは。Junです。
前回は、微分の応用について書きましたが、今回は、逆関数と、媒介変数表示、およびそれらの微分について書いていこうと思います。
今回は数学III以降の内容になります。
⒈ 関数とは
逆関数の話を始める前に、まず関数とはなんなのかについて書いていきます。
定義
$${y}$$は$${x}$$の関数である
$${\stackrel{\mathrm{def.}}{\iff}}$$
1つの$${x}$$の値によって、$${y}$$が1つ決まる
yがxの関数である例
・$${y=x}$$
$${x=1}$$の時、$${y=1}$$と、1つに決まります。
・$${y=x^2}$$
$${x=2}$$の時、$${y=4}$$と、1つに決まります。
・$${y=\sin x}$$
$${x=\frac{\pi}{4}}$$の時、$${y=\frac{\sqrt{2}}{2}}$$と、1つに決まります。
・$${y=e^x}$$
$${x=1}$$の時、$${y=e}$$と、1つに決まります。
yがxの関数でない例
・$${y^2=x}$$
$${x=1}$$の時、$${y=1, -1}$$と、2つ出てきてしまいます。
・$${y^2=4-x^2}$$(円の方程式)
$${x=1}$$の時、$${y=\sqrt{3}, -\sqrt{3}}$$と、2つ出てきてしまいます。
⒉ 逆関数
定義
$${y=f(x)}$$の、$${y=x}$$について対称な関数のことを逆関数といい、
$${f^{-1}(x)}$$と書きます。($${f^{-1}}$$は「エフ・インバース」と読みます)
逆関数の作り方
1)関数$${y=f(x)}$$を$${x}$$について解く。
2) $${x}$$と$${y}$$を入れ替える。
逆関数が存在する条件
$${y=f(x)}$$の$${y=x}$$について対称な$${x}$$と$${y}$$の式が、「$${y}$$が$${x}$$の関数である」定義を満たしているとき、逆関数が存在します。
例1
$${y=x^2 (x\ge0)}$$
まずこの式を$${x}$$について解くと、
$$
x=\sqrt{y}
$$
$${x}$$と$${y}$$を入れ替えて
$$
y=\sqrt{x}
$$
これは、$${x}$$の1つの値によって、$${y}$$の値が1つ決まるので、逆関数になります。
例2
$${y=x^2}$$
まずこの式を$${x}$$について解くと、
$$
x=\pm\sqrt{y}
$$
$${x}$$と$${y}$$を入れ替えて
$$
y=\pm\sqrt{x}
$$
$$
y^2=x
$$
これは、$${x}$$の1つの値によって、$${y}$$の値が2つ決まるので、逆関数になりません。
よって、逆関数は存在しません。
練習問題
以下の関数には逆関数が存在するかどうかを調べ、存在する場合は、その逆関数を求めなさい。
1)$${y=x^3}$$
2) $${y=e^x}$$
3) $${y=x^4}$$
4) $${y=x^2 (x\le0)}$$
逆三角関数(大学生以上向け)
大学でも数学を学習する場合、逆三角関数というものを定義します。
高校生は飛ばしてしまって構いません。
三角関数は、実数全体の定義域では逆関数を持たないため、以下のように定義域を定め、その範囲での逆関数を逆三角関数として定義されます。
i. sin
1)$${y=\sin x}$$の、$${-\frac{\pi}{2}\le x \le \frac{\pi}{2}}$$の範囲を切り抜きます。
2) 切り抜いた部分を$${y=x}$$について対称に移動させます。
この関数を$${y=\sin^{-1} x}$$または、$${y=\arcsin x}$$として、$${y=\sin x}$$の逆関数とします。
例)
$${\sin \frac{\pi}{6}=\frac{1}{2}}$$なので、
$${\sin^{-1}\frac{1}{2} = \frac{\pi}{6}}$$
となります。
ii. cos
1)$${y=\cos x}$$の、$${0\le x \le \pi}$$の範囲を切り抜きます。
2) 切り抜いた部分を$${y=x}$$について対称に移動させます。
この関数を$${y=\cos^{-1} x}$$または、$${y=\arccos x}$$として、$${y=\cos x}$$の逆関数とします。
例)
$${\cos \frac{\pi}{4}=\frac{\sqrt{2}}{2}}$$なので、
$${\cos^{-1}\frac{\sqrt{2}}{2} = \frac{\pi}{4}}$$
となります。
iii. tan
1)$${y=\tan x}$$の、$${-\frac{\pi}{2}\lt x \lt \frac{\pi}{2}}$$の範囲を切り抜きます。
2) 切り抜いた部分を$${y=x}$$について対称に移動させます。
この関数を$${y=\tan^{-1} x}$$または、$${y=\arctan x}$$として、$${y=\tan x}$$の逆関数とします。
例)
$${\tan \frac{\pi}{3}=\sqrt{3}}$$なので、
$${\tan^{-1}\sqrt{3} = \frac{\pi}{3}}$$
となります。
逆関数の微分
$${y=f^{-1}(x)}$$の微分は、
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{1}{\frac{dx}{dy}}
$$
で求まります。
【証】
$${y=f^{-1}(x) \Leftrightarrow x=f(y)}$$なので、
$$
\frac{dx}{dy}=\lim_{\Delta y \to 0}\frac{\Delta x}{\Delta y}
$$
$$
=\lim_{\Delta y \to 0}\frac{f(y+\Delta y)-f(y)}{\Delta y}
$$
ここで、$${\Delta x=f(y+\Delta y)-f(y)}$$なので、
$$
f(y+\Delta y)=f(y)+\Delta x=x+\Delta x
$$
$${\Delta y \to 0}$$の時、$${\Delta x=f(y+\Delta y)-f(y) \to f(y)-f(y)=0}$$
更に、
$${ x=f(y)\Leftrightarrow y=f^{-1}(x)}$$より、
$${ x+\Delta x=f(y+\Delta y)\Leftrightarrow y+\Delta y=f^{-1}(x+\Delta x)}$$
$${\Delta y=f^{-1}(x+\Delta x)-y=f^{-1}(x+\Delta x)-f^{-1}(x)}$$
これらより、
$$
\frac{dx}{dy}=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{\Delta x}{f^{-1}(x+\Delta x)-f^{-1}(x)}
$$
$$
=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{1}{\frac{f^{-1}(x+\Delta x)-f^{-1}(x)}{\Delta x}}=\frac{1}{(f^{-1}(x))'}
$$
$$
\therefore \frac{dy}{dx}=(f^{-1}(x))'=\frac{1}{\frac{dx}{dy}}
$$
【証明終】
例
$${y=\sqrt{x}}$$を、逆関数の微分法によって微分します。
$${y=\sqrt{x}}$$を$${x}$$について解くと、
$$
x=y^2 (y \ge 0)
$$
$$
\frac{dx}{dy}=2y
$$
より、
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{1}{2y}=\frac{1}{2\sqrt{x}}
$$
練習問題
$${y=\log x}$$を、逆関数の微分法によって微分しなさい。
⒊ 媒介変数表示
$${x}$$と$${y}$$の関係式を、別の文字を用いて、
$$
\begin{cases} x=f(t) \\ y = g(t)\end{cases}
$$
のように表すことができます。
このような表し方を、媒介変数表示と言います。
例1
$$
\begin{cases} x=t \\ y = t^2\end{cases}
$$
は、$${t=x}$$を下の式に代入すれば、
$$
y=x^2
$$
を表していることがわかります。
例2
$$
\begin{cases} x=2\cos \theta \\ y = 2\sin \theta\end{cases}
$$
は、$${x^2+y^2}$$を計算してみると、
$$
x^2+y^2=4\cos^2 \theta+4\sin^2 \theta=4(\cos^2 \theta+\sin^2 \theta)=4
$$
となり、原点中心、半径2の円を表していることがわかります。
媒介変数表示の微分
では、媒介変数表示されている$${x}$$と$${y}$$の関係式の微分を考えます。
$${x}$$と$${y}$$の間に、
$$
\begin{cases} x=f(t) \\ y = g(t)\end{cases}
$$
という関係が成り立つ時、
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}
$$
が成り立ちます。
【証】
$$
\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\frac{\lim_{\Delta t \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta t}}{\lim_{\Delta t \to 0}\frac{\Delta x}{\Delta t}}
$$
$$
= \lim_{\Delta t \to 0}\frac{\frac{\Delta y}{\Delta t}}{\frac{\Delta x}{\Delta t}}=\lim_{\Delta t \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta t}\frac{\Delta t}{\Delta x}
$$
$$
=\lim_{\Delta t \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x}
$$
ここで、
$${\Delta t \to 0}$$の時、$${\Delta x=f(t+\Delta t)-f(t) \to f(t)-f(t)=0}$$なので、
$$
\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\lim_{\Delta t \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x}=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x}=\frac{dy}{dx}
$$
【証明終】
例題
$$
\begin{cases} x=\frac{e^t+e^{-t}}{2} \\ y = \frac{e^t-e^{-t}}{2}\end{cases}
$$
の、$${(\sqrt{2}, 1)}$$における接線の方程式を求める。
$$
\frac{dx}{dt}=\frac{1}{2}(e^t-e^{-t})=y
$$
$$
\frac{dy}{dt}=\frac{1}{2}(e^t+e^{-t})=x
$$
より、
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\frac{x}{y}
$$
これより、$${(\sqrt{2}, 1)}$$における接線の傾きは、
$$
\frac{x}{y}=\frac{\sqrt{2}}{1}=\sqrt{2}
$$
よって、接線の方程式は、
$$
y-1=\sqrt{2}(x-\sqrt{2}) \\ y=\sqrt{2}-1
$$
ちなみに、
$$
\begin{cases} x=\frac{e^t+e^{-t}}{2} \\ y = \frac{e^t-e^{-t}}{2}\end{cases}
$$
は、双曲線を表しています。
$$
x^2-y^2=(\frac{e^t+e^{-t}}{2})^2-(\frac{e^t-e^{-t}}{2})^2\\\frac{1}{4}\{(e^{2t}+2+e^{-2t})-(e^{2t}-2+e^{-2t})\}=1
$$
より、
$$
x^2-y^2=1
$$
となります。
練習問題
$$
\begin{cases} x=4\cos \theta \\ y = 3\sin \theta\end{cases}
$$
の$${(2,\frac{3\sqrt{3}}{2})}$$における接線の傾きを求めなさい。
ちなみに、この式は、以下のような楕円を表しています。
まとめ
今回は逆関数と媒介変数表示および、それらの微分についてまとめました。
媒介変数表示については、主に単純な$${x}$$と$${y}$$の式では表せないような関数(陰関数含む)を表す際にもよく使われるので、覚えておくことをお勧めします。
例えばサイクロイド
は、
$$
\begin{cases} x=\theta -\sin \theta \\ y = 1-\cos \theta\end{cases}
$$
と表されます。
次回は、置換積分について、複数回に渡って書いていく予定です。
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