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全部、セミのせい
昼休憩を終えてすぐの仕事中。
上司は外出。
後輩たちは少し遅い休憩組と他部署へ行っている子とでいない。
クールビューティーな先輩と温和な先輩の2人がキーボードを打つ音だけが響く3人だけの室内。
暇だ。
本当は暇じゃないけど、上司がいないと気が抜ける。
少しボーっとしてたら音に気付いた。
何の音かと思ったら、セミの声。
そういえば、通勤途中にも聞こえるようになってきたなと思っていると、
セミ → 夏 → サマー → サマーウォーズ
こう連想していき、明日の金曜ロードショー「サマーウォーズ」だったと思い出した。
数年に1度じゃなくて毎年7月の第〇週はサマーウォーズ放送とかにしちゃえばいいのにとか考えてたら、
“ Blu-ray買えば、いつでも観られるな ”
と、思い、ヨドバシドットコムを開いてサマーウォーズで検索。
すると、期間限定スペシャルプライス版というものがあり、定価2,979円が2,680円に。
『え?やっす』
思わず声が出てしまい、マスクしてるのに口を手で隠した。
先輩たちがいる方を見るとクールビューティーな先輩は変わらずパソコンに向かっていたが、温和な先輩が声に気付いて手を止めて、こっちを見ていた。
何て言えばいいか思い付かないでいると、
「ユリアン君、仕事…しなさい」
笑顔で子供に言い聞かせるように言われた。
『…はい』
そう言って先輩に頭を下げた。
帰りに聞いたら、あからさまに動揺してたので仕事の何かを見てるんじゃないと一瞬で分かったと言われた。
隣の席の先輩が声を発したことに気付いたクールビューティーな先輩が、
「はい?何かありました?」
「ううん、何でも」
温和な先輩はクールビューティーな先輩にまた笑顔で言っていた。
クールビューティーな先輩は集中していて、僕の声に気付かなかったらしい。
あの人は本当に仕事の鬼というか孤高の人だ。
いい歳して、仕事しろって注意されるなんて。
全部、セミのせいだ。
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