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修行と木魚とおばあちゃん

ここ2日ほど、母方のおばあちゃんのことを書いて色々、思い出したので思い出した分だけ書いていく

おじいちゃんはお坊さんだった。
お坊さんは煩悩。分かりやすいものだと“ お金が欲しい ”といった欲望から離れないといけない。
しかし、おじいちゃんはまだ自分に煩悩があることに気付いた。

おじいちゃんは自分を恥じて“ 修行が足りない ”と本堂に籠り、木魚を叩きお経を唱え、自ら再修業した。

普段は朝6時と夕方4時に1時間、本堂でお経を唱え、日中はその他の仕事をするがこの時は1日中、お寺に籠って木魚を叩き、お経を唱え続けた。
食事はご飯と味噌汁とお漬物。食事を終えると、すぐに本堂に戻りお経を唱える。それを夜の12時まで続けた。

翌日は4時に起きて食事は昨日と同じ。
この日も1日中、本堂に籠り夜の12時までお経を唱え続けた。

翌日も4時に起きて、本堂で木魚を叩きながらお経を唱えてると家から本堂に繋がる引き戸が勢いよく開いて、

「こんな朝っぱらから木魚叩きやがって!近所迷惑だろうが!」

鬼の形相のおばあちゃんに怒鳴られた。
おじいちゃんの再修業はここで強制終了させられた。

お寺は市街地にあり周囲に戸建てやアパートがあったので、おばあちゃんの言う事は正しいけど、自分が起こされたことにイラっと来たんじゃないかと思えてならない。

この事件が起きた数日後の夏休みに遊びに行った時、おばあちゃんが夕飯の買い物に出掛けると、おじいちゃんがいる方から音がしたので見ると、さっきまで読んでいた本を机に置き、右手で頬杖を付きながら何もない宙を見つめ、

「この世で一番、恐ろしいのは神でも悪魔でもねえ。おめえのばあちゃんだ」

“ おめえの ”という表現を使ったのにおじいちゃんはこちらを見るでもなく、視線を宙に向けたまま呟くと本を手に取りまた無言で本を読み始めた。

この時は再修業事件のことを知らず、いきなりどうしたのかと思ったが、おじいちゃんの“ 話しかけるなオーラ ”がすごかったので訊けなかった。
家に帰り母に話すと事件のことを教えられて理解した。

おじいちゃんは嘘を言わない人だったので、おばあちゃんの恐ろしさがこの世で一番という言葉は事実だと思っている。

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ユリアン
ジュースが飲みたいです('ω')ノ