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例えの見極め
食堂で座ろうとした先輩が言った
「よっこいしょ」
特に気にしてなかったが先輩自身が
「言わないように気を付けてるんだけど、意識してないと声に出ちゃうな。言うたびに年取ったって、落ち込むんだよね。
「よっこいしょ」とか言葉以外に年取ったって、思う時とかある?
若いから、まだない?」
先輩の言葉に、先輩と同年代のパートさんが、
「ジャニーズとかアイドルが好きだったのに、新しいグループの名前が覚えられないし、顔の区別がつかない」
他の先輩は、
「若い頃はたくさん化粧品を買ってたから、お金がかかってたけど今は高品質で値段が高い化粧品になって、若い頃より買う化粧品の種類は少ないのにお金が若い頃以上にかかる。お肌のケアに時間とお金がかかる」
後輩たちは、
「高校生くらいの女の子の服装を見て、あの色や柄の服はもう着れないと思った時ですかね」
「この前、バスに乗り遅れそうになって走ってバス停に着いた後、呼吸が元に戻るのに時間かかって、ヤバいと思いました」
「彼が「すき焼きしよう」って、霜降りの和牛を買ってきたんですけど、「美味しそう」より「胃もたれしそう」を、先に思っちゃった時ですね」
それぞれの年を感じる時に、
“ なるほど ”や“ そういうもんなのか ”
色んな考えがよぎった。
『若い子の顔が覚えられない…
うちのおばあちゃんが姉と話してるのに僕の名前を呼んだのも、それだったのかな?』
「それは絶対、違うしバカにしてるよね?」
ふと思ったことを口にしたら、パートさんにたしなめられた。
後輩の一人があからさまに笑いを堪えてたら、
「笑わないようしてるでしょ?それも同罪だからね」
「え、待ってください。耐えてましたよ」
「耐えたって、言い方がおかしいからね」
僕の発言から後輩vsパートさんに移行し、
「余計なこと言うから」
後輩に怒られた。
「ユリアン君は?」
言い出しっぺの先輩に訊かれたので、
「スーパーの買った商品を袋に詰め替える台に設置してある透明なビニール袋を取って、袋の口を広げようとした時、手の水分が無くなってるのか中々、開けられない時とか」
後輩たちは「へー」みたいな実感があるようなないような。
先輩たちは「はいはい」みたいにうなずく。
共感する先輩陣の中で言い出しっぺの先輩が、
「それ、すごい分かるんだけど今日の帰りにスーパーに寄って、それが起きたら、とどめを刺される気分になりそうで怖いから、もう言わないで」
先輩の心をえぐったようで、それ以上の発言を禁止された。
年を取ったと感じる時。
このナイーブなテーマでは、例として挙げる内容も慎重にならないといけないらしい。
先輩はビニール袋の口を一発で開けられただろうか。
気になるけど、
「開けられました?」
って、訊くのは野暮とかじゃなく、自ら地雷を踏みに行くのに等しい。
週明けは好奇心は抑えて、黙っておこう。
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