見出し画像

インプットまとめ[2024年08月]

ようやく引っ越しのどたばたがひと段落して、落ち着いてインプットできるようになってきた。

ここ数か月、インプットがめちゃくちゃ少ないのにも関わらず、アウトプットへの意欲が高まっていて、少ない栄養を薄めてうすめてどうにか形にしているような感じなので、良くないなと思っている。ほんとうは、たくさんインプットをして、そのなかから濾してこして、輝く一滴を作りたいんだけどな。

せめて量は少なくても質のいいインプットができていればいいかな。


映画

「ショーン・オブ・ザ・デッド」

シリーズの他2作の小ネタがところどころ入ってくるのが良い。

冒頭の、背景で不穏なニュースがずっと流れているのに、主人公はいつも通りの生活を淡々と送っているのが、そういうのいいぞ~という気持ちになった。ニュースの内容を総合すると、猿から入ってきたと思われる感染症が人間に移ってゾンビ化した、ということになっているみたいだったけれど、真相はロンドン上空で爆発した人工衛星のせいみたい。ただしそれが仄めかされているだけ、というのも好みだった。しかしゾンビものってどうして大概パンデミックものと合わせ技になるのだろう。どちらも好きだからいいけど。

ゾンビとの戦いは若干冗長で飽きたが、義父がゾンビになるシーンは良かった。

サイモン・ペッグの作品はいつも、人間ってそういう生き物だよね、と納得のいくシナリオになっているところが好き。荒廃した世界でも新しい社会が築かれていたり、ゾンビになった親友と一緒に暮らし続けたり。


「平成狸合戦ぽんぽこ」

実は初めて最初から最後まで観た。思っていたより民俗学的要素がてんこ盛りなのがおもしろかった。四国には祀られている狸がたくさんいるというのはほんとうなのだろうか?

たぬきたちは基本的にのんきな性格なので、シリアスなシーンもいまいち深刻になりきれない感じが良かった。わたしももしかしたら人間のふりをしているたぬきだったのかしらと思ったり。

人間に化けられないたぬきたちが死出の船旅に出るシーンが、楽しいのに哀しくて、とても好きだった。

「天空の城ラピュタ」

金曜ロードショウでやっていたので合わせて観た。

ふたりがドーラ一家に拾われて、海賊船で働くシーンが一番好き。シータが来る前の台所が汚すぎて、子どもの頃はどうしたらあそこまで汚くなるのだろうと思っていたけれど、今回は、男所帯ならさもありなん、と思った。

いつもパズーとシータのその後を妄想してしまうのだけれど、今回思いついた案としては、シータが都会に出て植物学者になるというのはどうでしょう。どうでしょうって言われても。

ドラマ

「地面師たち」

ネトフリのドラマはいつもそうだけど、続きが気になる仕様で最後まで一気に観てしまった。個人的な感覚としては、必要のないエログロが多かったので、あまり万人におすすめできる感じではないが、スリリングな展開でおもしろかった。

綾野剛の演技も良かったので、ちょうど話題になっている「MIU404」も観たくなった。放映当時バイトのシフトと被っていたのでちゃんと観れなかったので。

豊川悦司演じるハリソンが気持ち悪すぎて、こんなに気持ち悪い演技ができるひとだったのかと驚いた。これはどちらかというと褒め言葉です。ハリソンは「最もプリミティブで最もフェティッシュな」と言っていたけれど、フェティズムの違いを感じた。しかしハリソン、ひたすらウイスキーを飲みまくってるだけで、「アドリブで」しか言わないし、リーダーの仕事って何なんだと思ってしまう。まあ悪の親玉ってそんな感じだよね、という理想ではある。

くどうれいん『うたうおばけ』講談社

文庫本を読んでいる間、わたしはわたしにまつわる人間関係や、時間や歴史や責任や期待から、解放されている気がしていた。「本を読んでいる人」でいることで、文庫本はわたしの盾となってくれた。

文庫版あとがきより

この言葉がどういう意味なのか、分かる気がする。
他人からの評価や期待や、深い意味もなく無責任に投げかけられるアドバイスから、わたしはわたしを護りたい。ほんとうはSNSなんてすべて辞めてしまってもよくて、読書メーターに記録するために読むんじゃなくて、誰のためでもなく自分のために読む、つまり読書ってもっと孤独な楽しみだったはず。めまぐるしく変わっていく世界から自分を護るための盾であり、この身ひとつで闘うための武器が読書だ。だから電子書籍ではだめなのだ。鋭い刃や不意打ちで届く弾丸から、この心を護るためには、厚みとリアリティが足りない。

ハン・ガン『引き出しに夕方をしまっておいた』クオン

ある
夕方遅く 私は
白い茶碗に持った ごはんから
湯気が上るのを 見ていた
そのとき 気づいた
何かが永遠に過ぎ去ってしまったと
今も永遠に
過ぎ去っているところだと

ごはんを食べなくちゃ

私はごはんを食べた

「ある夕方遅く 私は」

裏表紙に抜粋されていたこの詩を読んだ瞬間に、これはわたしのための詩だと直感的に思った。そしてその直感は間違っていなかった。この本を買ったときと、その直後に行ったチェッコリで、惹かれる本がことごとくハン・ガンによるものだったのは偶然ではなかったのだ。

何かが永遠に過ぎ去ってしまっているのだとしても、わたしたちはごはんを食べなくてはいけない。そのことが、絶望でもあり希望でもある。ごはんから湯気が上がるのを見ながら絶望したことのあるすべてのひとと分かり合える気がする。

もうひとつ、「だいじょうぶ」という詩もすごく好きだった。というか、好きな詩が多すぎて、インプットノートに抜き書きをしようと思ったのだけれど、選びきれなかった。人生においてもとても大切な出会いをしたと思う。わたしは、ハン・ガンに出会った。出会ってしまった。ハン・ガンの言葉をもっとわたしにください。



毎月読んだ本や観た映画を記録しています。




いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集