タスマネで定時退勤しよう!③
~シャローワーク撃退編 ~
大切なことに集中するために
教育実践の開発や教員自身の職能開発など深い思考と集中を必要とするディープワーク。
教員としての本質を重視するならば、ディープワークの時間を最大化したいものです。
そのためには、深い思考・集中を必要としないシャローワーク(※)いわゆる雑用・雑務は、できるだけ短時間で撃退したいものです。
撃退策1【シャローワークそのものを削減する】
ニューポートは,「シャローワークの中には、その組織の中で習慣的に「やるのが当たり前」になっている作業が多くある」と言います。
とりわけ学校は、前例や暗黙の風習を大切にする傾向があります。
教員は、基本的にマジメで従順な人たちの集まりなので、形骸化したシャローワークであっても、すべて完璧にこなそうとします。
しかし、不要なものであれば、果敢に削減を試みたいものです。
削減には廃止・縮小・統合の3つの方法があります。
●廃止:すっぱりやめる
時間外勤務や休日出勤など、個人で取り組めることから始めましょう。
「そんなことしたら、仕事が終わらない!」という声が聞こえてきそうですが、本当に重要な業務(たとえば授業や子供と過ごす時間など)は勤務時間内に決着がついているはずです。
つまり、勤務時間外にはみ出たものの中にこそ廃止すべき業務が隠れています。
そんなにテストをする必要があるか?そんなていねいな会議資料は必要か
?など、問い直せばいくらでも削減のヒントが出てきます。
●縮小:回数・内容・人数を減らす
あなたが任されている校務分掌があれば、その会議の回数・内容・参加人数を減らしてみましょう。
以前私が勤めていた学校では、特別支援委員会の会議があって、そこには特別支援学級担任、各学年代表の教員、支援員など全教員の半分にあたる参加者がいて、しかもその一人一人が担当する子供について話をするので、いたずらに会議が長引いていました。
そこで、参加者は各学年1名に限り、また情報交流も特に必要なもののみに限りました。
連絡内容は持ち帰り各学年で共有することで、会議の回数が激減しました。
また、特に集まる必要がない場合は、会議を開かず紙面交流・紙面検討で済ませることで、それぞれの教員が、本当に大切な支援の準備に勤務時間を費やすことができるようになりました。
●統合:複数あるものをひとつにまとめる
以前は、「学校行事が子供を育てる」といったよくわからない理論がまかり通っていて、際限なく学校行事が増えていく傾向にありました。
普段の授業にこそ価値を見出さなくて何が教員だ!?と言いたくなります。
特に6年生の3学期は、卒業に向けて卒業制作・お別れ会準備・お別れ遠足・卒業を祝う会練習・卒業式練習・・・など次々と行事をこなさなくてはならず、子供も教師も小学校最後の時間を慌ただしく過ごす学校は多いのではないでしょうか。
よく似た行事はひとつに統合することで、6年間の学びの振り返りや仲間との思い出作りに集中することができるのではないでしょうか。
撃退策2【マルチタスクでやっつける】
シャローワークを整理・統合することによって複数のタスクを同時進行すること(マルチタスク)が可能になります。
私は、いつも複数の業務を同時進行で行うようにしています。
・テスト監督をしながら、掲示やそうじなどの教室環境整備を行いながら、パソコンでデータ書き出しを行うなどマルチタスクは当たり前のように行っています。
こうしたマルチタスクのスキルを高められたのは、育休中に家事・育児で鍛えたことが影響していると考えています。
家事は、高いマルチタスク能力が求められます。
洗濯機と炊飯器をスタートさせ、子供とおかずを買いに行くついでに、英会話のラジオを聴きながら、ウォーキングをする。(洗濯、炊飯、買い物、子供と過ごす時間の確保、英会話、ウォーキング・・・6件のマルチタスク!)
ぜひ、生活の中でマルチタスクの訓練をしてみてください。
ただ注意点として、あらゆるシャローワークをマルチタスクで行えばいいかというと、そうではありません。
気を付けるべきは、その組み合わせです。
深い思考と集中を要するディープワークをマルチタスクでやろうとすると、集中力や生産性がガタ落ちします。
シャローワーク同士であっても、同時進行が困難なものも多くあります。
そのためには、事前にある程度ざっくりとした段取りをしておく必要があります。
同時進行が可能な業務の組み合わせであるかどうかを見極める必要だと思います。
よい方法としては、やらなくてはならないシャローワークをToDoリスト化して、マルチタスクのざっくりとした見通しをもっておく必要です(あまり緻密にやりすぎると、それ自体がシャローワーク化してしまいます)。
また、マルチタスクの中に、締め切りが厳密なタスクを入れ込むと、うっかりやりそこねていたり、重大な見落としをしたりするおそれがあります(寿々丸の経験談)。
スケジュール帳(アプリでも可)に残したり、同僚と進捗を共有したりなどの対策が必要です。
撃退策3【「元気玉作戦」でやっつける】
報告書や会議資料の作成は、みんなの力をちょっとだけ借りて仕上げる、名付けて「元気玉作戦」が有効です。
私が目安としているのは、6割ほど仕上がったところで同僚とシェアします。だいたいの方向性が納得いくか確認してもらいます。
おおまかな方向性が共有できていれば、そのあとの作業でも助言が得られやすいからです。
そして、9割ほどできたところで管理職のチェックを受けます。
管理職に目を通してもらい、問題がないかチェックを受けます。
同僚とも連携していることを伝えれば、それほど根本的なやり直しは言われないでしょう。
あとは、修正箇所を直して正式に提出するのです。
一人で何度も見直しをして最後まで作るよりも、他者の意見も反映し、ミスも少なく、かつ早く仕上げることができます。
また、一人で最後まで仕上げてしまってから根本的な間違いがあって、最初からやり直しになるなどのリスク回避にもつながります。
お手伝いしてもらった分は、別の機会に恩返しすることで、互いの業務について共通理解し、協力しあえる関係も築けます。
よりよいタスマネ実践者として
かくいう私もタスマネ実践者の一人にすぎません。
今年度はコロナ対策で行事を見送る学校が多くあると思います。
今こそ、それぞれの業務の価値を問い直し、削減できるものは削減してくチャンスだと思います。
よりよい情報があったら、実践交流していただき、充実したディープワーク・ライフをともに追究していきましょう。
※何度も申し上げていますが,ディープワークとシャローワークの違いは,深い思考と集中を要するかどうかであって,仕事の重要性とは関係ないと考えています。
たとえば,ペーパーテストの丸つけは,だれがやっても同じ結果が得られます。
つまり,成績をつける上で重要な業務ではあるものの,深く考える必要がない作業なのでシャローワークといっていいでしょう。
参考文献
カル・ニューポート著 門田美鈴訳(2016)『大事なことに集中するー気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法ー』(ダイヤモンド社)
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