2020年のコーヒーニュースを振り返る【科学編】
元記事:A Look Back at the Coffee Science News of 2020 - Daily Coffee News [Daily Coffee News Staff | December 28, 2020]
2020年は医学や政治のニュースに事欠かない一年だったが、コーヒー科学においても、コーヒーノキの健康や遺伝学、消費者の認識、感覚・知覚、抽出に関する科学、人間の健康に関連する研究など新たな発見は粛々と進んだ。
この記事では、2020年のコーヒーの科学に関するトップストーリーをいくつか振り返る。
【バイオロジー 生物学】
●ロブスタ種のコーヒーは気温の上昇に強くない、という研究結果
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東南アジアの約800のコーヒー農園で10年間に渡って収穫量を観察した結果、ロブスタ種(コフィア・カネフォラ Coffea canephora)の耐暑性はコーヒー業界において過大評価されており、ある温度のしきい値を超えると収穫量が激減する傾向があることがわかった。
●すべてのアラビカ種コーヒーは一組の「スーパー・ペアレント」から生まれた
あるコーヒーの木が、別のコーヒーの木を愛した時…新しい研究によってコーヒー世界の古い話の中でまた一つ物語が明らかになった。ブルボン品種をはじめ、アラビカ種のコーヒーは何千年も遡って、すべて一組の「スーパー・ペアレント」から生まれたというのだ。
ワインの品種ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンのように、ブルボンやパカマラ、ゲシャなどのコーヒー品種は単に識別材料としてだけでなく、マーケティング用語としても使われている。しかし、あなたのカップに入っている91点のゲシャのコーヒーが、実際には91点の...別の品種だったら?
●月の光がコーヒー植物の概日リズム(サーカディアンリズム)に与える影響
海の満ち引きや狼男の変身だけでなく、奇妙なことに月の光とその周期はコーヒーノキにも影響を与えているようだ。
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コーヒーの気候や害虫への耐性、さらには風味の特徴をも決定づける、これまでに知られていなかった指標は何だろう?トロントの科学者たちは、コーヒーの木の根と「パートナー」となるバクテリアや菌類についての新しい研究で、文字通りこの可能性の根に迫ろうとしている。
【ケミストリー 化学】
●ショート・ショット:私たちの知っている「エスプレッソ」に挑む
10人の国際的なチームが数学的なモデリングを行い、何百ものエスプレッソを抽出した結果、おいしいエスプレッソを一貫して作るために必要なのは、従来の方法よりもはるかに少ないコーヒーを粗く挽き、少ない水で速く抽出することだと結論づけた。
●コールドブリュー VS. ホットコーヒー:酸味と抗酸化物質の研究、その意外な結果
ホットコーヒーとコールドブリューコーヒーの化学組成物を研究した結果、二つの液体の酸味レベルはほとんど同じでも、ホットコーヒーにより多くの抗酸化物質が含まれていることが示唆された。
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UCデイビスコーヒーセンターの新しい研究は、抽出後の知覚プロファイルに影響を与える湯温の役割についての業界の通説に挑戦している。
【消費者の認識と味覚・知覚】
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科学雑誌「Food Quality and Preference」に発表された3つの研究で、ブラジル・サンパウロ大学 University of Sao Paulo 哲学科のファビアナ・カルバリョ氏とイギリス・オックスフォード大学 University of Oxford のチャールズ・スペンス氏が、それぞれ形状、色、質感が、飲む前、飲んでいる間、飲んだ後のコーヒーの様々な属性認識にどのような影響を与えるかを探った。
南米の研究者チームが主導した研究で、コーヒーを飲む人は、一般的に騒音がより小さい際にサンプルのコーヒーを好む傾向があることがわかった。またフレーバーや香り、苦味や酸味などの特徴にもより敏感になり、より静かな環境でのコーヒー体験はコーヒーの購買意欲を促進することも示唆された。
●バーチャルリアリティにおけるコーヒーの色の変化が実生活の知覚に影響を与える
今月初めに発表された研究結果で、デンマーク・オーフス大学 Aarhus University の実験心理学者 Qian Janice Wang 助教授とイギリス・ヨーク大学 University of York のチームが主導した研究は、食品・飲料企業にとって実用的応用の可能性がある。また、多感覚研究のスケールアップや強化のためにバーチャルリアリティを利用する方法も明らかにしている。
気分を高めるというカフェインの効果は、おいしいコーヒーの魅力の一つだ。科学者たちは、コーヒーが実際に「人生をより甘く」することを発見した。
●欲しい VS. 好き:コーヒーラバーはカフェイン中毒?研究
「コーヒー通」は「高級なものを愛すフリ」をしているだけ?新しい研究による解釈です。
【健康】
コーヒーを飲む人と飲まない人を比較した骨折のメタ分析を含め、コーヒーと骨粗しょう症についての研究に未だ決定的な結論は出ていない。しかし新しい研究で、コーヒーを習慣的に飲む人々には良いニュースがあるかもしれないことがわかった。
●健康的なミルクチョコレートが欲しい?じゃあコーヒーかすを入れよう
コーヒーかすやピーナッツの殻などの有機物は、一般的には食品廃棄物と考えられている。しかしうまくミルクチョコレートの成分として使用することで、その抗酸化特性を高められることがわかった。
研究誌 JAMA Oncologyで発表された新しい研究によると、コーヒーを摂取することで、大腸がんの悪化リスクの低減だけでなく、大腸がんと診断された人々の生存率を高める可能性があることがわかった。
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全ての項目でリンクは原文記事をそのまま貼っています。この note で取り上げて翻訳したものについてはそのリンクも貼っていますが、それ以外の記事に関してどれか詳細を読みたいという記事があればコメント残していって下さい。2020年11月・12月と更新を停止しておりましたが、また記事を投稿していきたいと思います。皆様のコーヒー生活がより豊かなものになりますように。今年もよろしくお願いします。
junko