見出し画像

ワインの発がん性警告ラベルってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~

(第二十六回)飲酒は健康に悪い。わかっちゃいるけどやめられない。あソーレ♪

前回はアクセスが伸び悩み。試行錯誤が続きます

前回は、自分としては結構大事なネタを書いたはずだったんですが、アクセス数が伸びませんでした。タイトルがあまりにもタイムリー過ぎて中身に関係なく埋もれちゃったんですかね。それでもご購入いただいた方、お読みいただいた方、ありがとうございました。読者層を広げるための試行錯誤を続けてまいります。

WHOからバレンタインデーに出てきた無粋なレポート

さて、今回ですが、バレンタインデーに、思いっきり無粋な話が出てまいりましたので、それをネタにワインを飲ませていただきます。WHO(世界保健機関)ヨーロッパがAlcohol health warning labels: a public health perspective for Europe(アルコール健康警告ラベル:ヨーロッパの公衆衛生の視点)というレポートを発行しました。Alcohol health warning labels: a public health perspective for Europe

飲酒の健康リスクを警告ラベルでもっと訴求しましょう、というお話

ご賢察の通り、飲酒が重大な健康リスクに繋がっているので何とかしましょう、というお話です。このレポートによれば、EUでは、2019年の成人一人当たりのアルコール消費量は世界平均の2倍で、成人の19人に1人がアルコールに起因する原因で死亡し、アルコールに起因する死亡の3割は癌が原因だそうです。当然のことながら、アルコールによる健康への影響をもっと知らしめるべく、警告ラベルによる啓蒙を進めなきゃいかん。QRコードなどによるデジタル警告は訴求力が弱いので、やっぱりラベルで警告しなきゃいかん、ってお話です。

タバコのパッケージの警告は凄いですよね

これで連想するのはタバコのパッケージですね。欧米のタバコパッケージをご存知であれば、箱の半分くらいの面積使ってSMOKING KILLS とか書いてあります。あと、ニコチン・タールで真っ黒になった臓器の写真とかも載せて、タバコ吸ってるとこんなになるぞ、と脅しつける訳です。日本のタバコの箱にもいろいろ書いてあります。表現はそこまで直接的ではないですが。

政府にとってタバコやアルコールはプラス・マイナス両面ある

タバコやアルコールは、各国政府にとってはプラス面、マイナス面があります。プラス面としては、たばこ税、酒税といった税収を通して歳入に貢献します。だとすると、タバコやアルコール消費を抑えようとするのは財政赤字拡大に繋がることになります。一方で社会的にみるとマイナス面が大きくなっているというのが一般的な見方です。医療費の拡大が財政支出の増大につながっているとか、DVなんかも含めて酒飲んで暴れる奴らが社会不安を引き起こしうる、ということなんでしょうね。

バランスをどう取るか、がサステナビリティを考えるうえで重要

だったら全面禁止すりゃいいじゃん、ということなのですが、そうなると、これはこれでいろんな既得権益が害されるとか歴史や文化を蔑ろにするのか!!とかいう反論などいろんな問題を引き起こします。以前にも書きましたが、そのバランスをどう取っていくのかは今後の「ESG」であるとかワイン産業を考えていくためには避けて通れません。それがわこさんの連載の根底にあるわけです。

WHOのレポート、当局の戦略が結構しっかり書いてあります

そうした中で、改めてWHOがレポートを出したということは、ワインをはじめとするアルコール飲料のボトルにも健康リスクの話をもっとしっかり書け、という話は今後さらに強まると思った方が良いのかもしれません。実際、このレポートに目を通してみると(ざっとですが)、啓蒙の必要性、重要性、その結果として社会的コストが下げられる、ってストーリー(政策当局としての戦略?)が結構しっかり書いてあります。

飲酒の健康リスク、ラベルに書いてもイチイチ読まないよね

ただ、飲酒の健康リスクについてはもうレベルに表記されている、というのをご存知の方も多いと思います。例えば、以前EUのワインラベルに栄養表示が義務化されるというお話をした時に、アメリカのRidge Vineyardsのワインの裏ラベルの写真を拝借して表示しました。ここにもちゃんと健康リスクについては表記されてます(Bの部分です。妊娠中の飲酒は胎児に悪影響を与えるリスクがある、アルコール消費によって車の運転や機械操作の能力に影響を及ぼし健康問題を引き起こすかもしれない、って書いてあります)。

ただ、コレじゃ誰も読まないし、D欄のように飲みながらワインと会話できそうなイメージの膨らむ文章と方向違うし、飲んだら読めないですよね。どう考えても健康への警告にはならんですよね。

Ridge Vineyards のウェブサイトから拝借してきた裏ラベルの説明です。横向き(?)のBの部分にアメリカ政府から言われた健康警告が書かれていますが、読みにくいし、読まないですよね。

ラベルで警告を強める参考:アイルランドの規制

どうやってラベルの警告を強めるか?1年ちょっと先に施行されるアイルランドの規制が参考になりそうです。というか、コレがデファクトにされちゃうかもしれません。そうなるとホントに無粋ですぜ、ダンナ。

アイルランドのラベル規制の中身

ここから先は

2,566字 / 3画像

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?