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ブレンドなしのワインってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~

(第二十三回)ブレンドはワインをサステナブルにするために不可欠です!!

前回の「誤情報・偽情報」対策、とっても重要な話だと思います

前回は、世界経済フォーラムが「誤情報・偽情報」を、今後2年間の最大のリスクだと指摘していることを踏まえて、企業として「誤情報・偽情報」対策もサステナビリティ課題にすべきだというお話をしました。ちょっと難しかったかもしれませんが、わこさんとしては重要な話だと思ったので書きました。そんなネタに反応して記事購入して下さった方々、ありがとうございます。その「偽情報対策」ってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~|わこさん

ワインの「ブレンド」がワインの「DEI」を体現している

前々回の話の最後で、ワインにもDEI(多様性、公平性、包摂性)が溶け込んでいるんです、と思わせぶりな書き方をしました。実は答は単純で、ワインはブレンドによって作られている、ってことです。当たり前と言えば当たり前なのですが、それがワインメーカーの表現するワインスタイルとも密接に関連しています。そのDEIってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~|わこさん

今回は、前半で企業経営におけるDEIとワインのブレンドのアナロジー、後半は直近やらせていただいたワインセミナーのお話をします。

ワインの「ブレンド」でのわこさんの試験失敗談

自分自身の話で恐縮ですが、WSETのDiploma試験で、D4という科目があります。これはスパークリングワインについての試験で、セオリー(理論)とテイスティングに分かれていて、合計点で合否が決まります。2023年1月の試験で、セオリーに「シャンパーニュのワインメーカーにとってのワイン造りのオプションについて書け」といった問題が出ました。

ワイン作りのオプションで「ブレンド」を書き忘れるとは…

畑の選定から始まって栽培、醸造、ボトリングまで各段階でいろんな意思決定をしてワインが出荷される、という過程を記述していくわけですが、私はその中でなんと「ブレンド」を書き忘れました。

「ダメな例」でも指摘されましたが、それで骨身に沁みました

そのせいかどうかはわかりません。セオリー不合格でした。テイスティングが合格だったので合わせ技で合格できたのですが、昨年発表された「Examiner’s Report」(これは過去の試験について、どのあたりがポイントだったかとか、ダメな例とかを指摘するものです)で、しっかりと「ブレンドを書き忘れている受験生がいた」と書かれてしまいました。今から振り返ると、というかワインを考えると、ブレンドって必要不可欠です。ブレンドがないとワインはできません(よっぽど少量生産のワインは別ですが)。

ワインのブレンドについて、企業経営とのアナロジーで読んでください

ワインに興味がなくても企業経営に興味のある方は、想像力を働かせながらこの先を読んでください。
WSET Diplomaの栽培・醸造の科目(D1といいます)のテキストで、ブレンドには、様々なワインの組み合わせが含まれる場合があると書かれています。
•異なるブドウ品種からできたワイン
•様々な場所から(異なるブドウ畑、異なる地域、さらには異なる国から) 持ってきたワイン
•様々なブドウ栽培者またはブドウ、果汁またはワインを販売する企業から 集めたワイン
•異なるヴィンテージのワイン
•ワイナリーで異なる方法で作られたワイン(例えばオーク樽で熟成されたワインとステンレス鋼またはコンクリートタンクで熟成されたワイン)
といった具合です。ほーら、DEIの匂いがしてきませんか?

何のためにワインはブレンドするのか?

さらにお勉強的なことを書きますと、WSETの教科書では、何のためにブレンドをするのか、ということについて(それぞれ重なる部分はありますが)以下の7つの理由を挙げています。
①    バランスを取る(例えば、果実味と酸味のバランスを取るために複数の品種で作ったワインをブレンドする)
②    同じ作り手のワインとして一貫性を持たせる(例えば、同じ年のワインだけど樽が違うと味わいも違うため、そのままボトル詰めするとボトルごとに味わいが異なって、その作り手のワインってどれがホントなの?ということになる)
③    作り手のワインのスタイルを表現する(ワインのはずなのに香りをかいだ瞬間ほうじ茶のような香りがするとか、作り手によって独特のスタイルがあったりするのでそれを醸し出す)
④    様々な要素をブレンドすることでワインに複雑性をもたらす(ブドウの熟し方によって赤系果実の香りがする樽と黒系果実の香りがする樽があったとすると、それをブレンドして複雑な香りになる)
⑤    一部に欠陥があったとしてもそれを補うことができる(やや欠陥の感じられるワインであっても他の正常なワインと混ぜることで全体として希薄化できる)
⑥    ブレンドすることで同じクオリティのワインの量を確保することができる(平均的な質のワインが樽の数だけできる)
⑦    その結果として価格を平準化(通常下げる)することができる。

それぞれについて、詳しく説明していくとワインの教科書になってしまうので、Diploma受験生はD1のテキストに戻って下さい(笑)。

企業経営とワインに通底する要素を感じてください!!

でも、ここまで来ると企業経営とのアナロジーをさらに感じてもらえるのではないでしょうか?

様々なバックグラウンドの人達が会社という同じ樽の中に(望むと望まざるとに関わらず)ぶち込まれ、お互いの個性を活かされたり殺されたりしながら、最終的には企業として付加価値を生み出し、利益を上げていくんです。その中で、活かしたり殺したり、折り合いをつけたり、ってのが、ブドウのセレクションだったり、発酵温度だったり、熟成期間だったり、海外からタンク詰めで持ってきたワインだったりする訳です。そしてそうしたワイン造りに関わる様々な意思決定を行うのがワインメーカーなわけですよ、全世界の経営者の皆さん!!

多種多様な要素がまとまると「複雑性」に富むと評価

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