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意外と知らない労働法

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知っているようで意外と知らないことも多い労働法。労働者にとって「労働法を知る=自身の権利を守る」ことにつながり、知っていると役立つ場面も多い重要な法律をわかりやすく解説します。
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意外と知らない労働法① 労働法の基礎知識

そもそも、労働法って何? 実は、「労働法」という名前の法律は存在しません。 ・労働基準法 ・労働組合法 ・労働関係調整法 ・最低賃金法 ・労働契約法 ・男女雇用機会均等法 など、労働に関する様々な法律の総称として「労働法」と呼ばれています。 労働法が担う役割 労働を開始する際、労働者(被雇用者)と使用者(雇用主)との間で労働契約が結ばれます。契約内容については労働者と使用者の合意で決定するのが基本ですが、契約内容について何のルールも無かったとしたら、どのような弊害の発生

意外と知らない労働法② 労働契約時に気をつけること

労働契約を締結するときのルール みなさんが転職活動されるとき、求人票で仕事内容や給与、勤務地や福利厚生などの諸条件をチェックして、自分の希望に合う条件の企業を探しますよね。 しかし、いざ実際に入社してみたら、求人票や面接で伝えられた条件とは全く異なっていた、なんてことが起きたら一大事です。このような事態を防ぐため、労働法では労働契約を結ぶ際には、使用者(企業)から労働者へ労働条件の明示が義務付けられています(労働基準法第15条1項)。 また、労働条件の中でも特に重要な次の

意外と知らない労働法③ 就業規則と各種保険制度

就業規則を見たことありますか? とある企業で働くときの労働条件は、その企業に所属する人全てに共通する場合が多いですが、そのような共有のルールは「就業規則」にまとめられています。常時10人以上の労働者を雇用している使用者(※)は、就業規則の作成と労働基準監督署長への届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。 ※人数は企業単位ではなく事業場単位で計算し、従業員が10人以上在籍していても事業場単位で10人を下回る場合は条件に該当しません 就業規則は掲示や配布するなどして

意外と知らない労働法④ 賃金に関するルール

賃金額のルール  転職先を選ぶ際、給与(法律では「賃金」と呼びます)の額を重要視する方は多いと思います。転職エージェント大手のリクルートエージェントが発表した転職者調査では、約半数の転職者が給与額を重視していると回答していました。 このように多くの方にとって重要な賃金額は、「最低賃金法」によって企業が支払わなければならない賃金の最低額(最低賃金)が定められています。 「最低賃金」は正社員、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず全ての労

意外と知らない労働法⑤ 労働時間のルール

法定労働時間と36協定 以前のnoteに書いたように、始業時間・終業時間は就業規則で決められていますが、労働時間は、1日8時間以内、1週間で40時間以内と法律によって定められています(労働基準法第32条)。 こちらの制限を「法定労働時間」といいますが、法定労働時間には当然ながら残業時間も含まれます。 所定労働時間が7時間の企業で1時間残業した場合は法定労働時間内に収まるため問題ありませんが、1時間以上残業するのは法定労働時間を超えてしまう(法定時間外労働)ため違法です。

意外と知らない労働法⑥ 休憩・休日のルール

休憩・休日のルール 使用者(企業)は労働者に、1日の労働時間が ・6時間を超える場合、45分以上 ・8時間を超える場合、60分以上 の休憩を労働時間の途中に与えなければいけません(労働基準法第34条)。 「労働時間の途中」と定められているため、労働開始前もしくは労働終了後に休憩時間を与えるのは違法行為です。 もしも休憩中に電話対応や来客対応を指示された場合、それは休憩時間ではなく労働時間とみなされます。 また、休日についても最低日数(法定休日)が決められており、 ・毎週

意外と知らない労働法⑦ 退職・解雇のルール

退職のルール 退職は労働者の自由であり、「職業選択の自由」として憲法で保障されています(日本国憲法第22条1項)。 しかし、予告もなく突然会社に行かなくなる、いわゆる「バックレる」行為は社会人としてマナー違反であり、その後の転職活動においても多大なるマイナス影響を与えます。 もしも「バックレ」てしまった場合、使用者(企業)は「労働者が2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」、解雇予告なく労働者を即時解雇できる(厚生労働省通達、昭23年11月11日 基