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「こういう男になりたい」私感

 地元の友人のLINEグループで「名古屋オクトーバーフェスト2024」に誘われたのだが、愚かな私は「行きたいのはやまやまだが翌朝あさイチで検査があってうんぬん」というようなことを書いてよこした。

 尿検査と血液検査。そんでもって肝臓の数値がどうのこうの。そこそこ早起きもせねばならない。その前夜にビール飲みまくりってどうなんだ、というのは嘘ではない。嘘ではないのだがLINEグループに書くことだったのか。

 しかも底抜けに愚かな私は、「職場の同僚の親がいまにも亡くなりそうでいつ臨時出勤になるかわからない」「でも行きたい気持はある」「前回ドタキャンしてしまって申し訳なく思っているのでなるべく行きたい」等ぐだぐだ書き連ね、なんちゅうかまあそういうメンタルの調子だったんだろうけど、タイムマシンで会いに行けたらまじはっ倒してやりたい。

 ようするに「行けば行ったで楽しいんだろうけど行くまでが億劫」という誰もが知るあの葛藤を、後付けのリクツで捏ね回していたのだ。
 自分一人で葛藤しているならまだいいが、それをそのまま(わりと親しい間柄だということを差し引くとしても)表に出すというみっともなさ。

 *

 そんなおり、ジョルジュ・サンドの祖母の回想というのを読んで深い感銘を受けた。サンドの祖母いわく、

 あの時代には、だれ一人として年寄りではなかったのよ。革命がこの世に老年をもたらしたのね。
 貴女のおじいさんはね、美男でエレガントで、服装に非のうちどころなく、上品で、香りがよく、陽気で、親切で、情愛が深く、死ぬ瞬間まで機嫌にむらがなかったの。

『十八世紀パリの明暗』

 「革命がこの世に老年をもたらした」。そんなことはないと思うが、なんだか素敵なフレーズである。
 そして美男とか服装とか香りはまあ措くとして「機嫌にむらがない」。これ。これは憧れる。こういう男になりたい。

 しかし、とくに感動したのはその後で、サンドの祖母は続けてこう言っている。

 当時の人びとはいかに生きるか、いかに死ぬかを心得ていました。折りあしく身体の具合が悪いなどということはなかった。通風になっても、それでも歩いたのよ。顔をしかめたりしないでね。苦しみは隠すようにと育てられていたの。
 (中略)
 四本のロウソクを見るも不愉快な黒衣の男たちに囲まれてベッドで死ぬよりは、舞踏会や劇場で死ぬほうが良いと思っていたのよ。

同書

 これだよ、これ!

 *

 思うに、男が(注意! ここでいう「男」は男性全員を指すものではなく、そういうのを自発的にやっていこうとする人のみを対象とした話なので「押し付けるな」といった類いのツッコミは不要です)手元不如意みたいなことを口にしてはならない、というのは村上春樹もどこかで言っていたが、まあこれは一番わかりやすい話だろう。
 実際オクトーバーフェストのビールも、今年は円安の影響でか一杯1600円とかして内心「マジかよ・・・」となるにはなったが、そういうことはおくびに出してはいけないのである。
 まあこれに関しては、僕も一応、腐っても昭和生まれなのでガキの頃からしっかり心得てはいる。

 それに加えて、メンタルの調子がどうのこうのというのも「男」という文脈では推奨されないことはだいたい見当がつくだろう(なお今回のような特殊な「男」という文脈抜きで、逃げることや弱音全般について以前に考察した記事は下記参照)。


 今回のキモは、「懐具合」「メンタル」に加え「体調」、それに僕の思いつきだが「忙しさ」も「男がごちゃごちゃ言ってはいけないリスト」に加えたい、ということである。

 まあ、何か誘ってもらった時が特にそうだというだけで、日常会話からして厳格にそれを禁ずるというのではないが。
 というのも、日常会話においては普通に知ってもらう必要がある場合もあるし、そういう「弱み」が話のネタになる場合もある。加えて親しくなれば当然、理解と安息を求めてある程度の自己開示もするだろう。
 何か誘ってもらった時は、出来るかぎり明確に「行く」か「行かない」かを言え(だが、可能なかぎり行け)! ということである。

 *

 さてそんな話をふまえて、ぼやんと今考えてる「こういう男になりたい」という僕なりのイメージはこんな感じです。

 ①機嫌にむらがない
 ②親切で他人の感情に寄り添う
 ③体調、メンタル、お金、忙しさの都合などをごちゃごちゃ言わない(誘ってもらった時は特に)
 ④自制心。自分の感情や行動をきちんとコントロールする(酔っ払ってやらかすことが多いので)


 こういうことを今後は目指してゆきたい。
 ではみなさん、今回はこんな感じでした(・ω・)ノ マタネー

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安田鋲太郎
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