旅は娘との濃密な時間。旅好きの社員が語る「忘れられない旅」
「忘れられない旅は?」と聞かれたら、どんな思い出が浮かびますか?
そこでしか見られない美しい景色、おいしいご飯、お世話になった人の顔など、世界は広く、思い出もさまざまです。
旅好きが集まるJTBグループ社員が「忘れられない旅」のエピソードを語る、本企画。第2回目に登場するのは、Web販売事業部の長野 紗綾香。
子どもが4歳の頃から母娘2人旅をしてきた長野は、多い年には年に9か所も足を運んだことも。そんな長野の「忘れられない旅」とは?
私たちにとって旅行は「ちょっと行ってくる」くらいの感覚
——まずは、長野さんの“旅歴”をお聞かせください。
小さい頃から父の誕生日に毎年グアム旅行に出掛けていました。大学時代なども人並みに旅行はしてきましたが、たくさん旅に出かけるようになったのはJTBの社員になり子どもが生まれてからなんです。
育休中で時間の融通がきくうちにと、生後まもなくパスポートを取りに行きました。写真には私が頭を支えている指が写り込んでいます(笑)。
最初は家族3人で旅行をしていたのですが、娘が旅そのものに慣れてきている様子を見て、「2人でも行けるかも!」と思ったのが母娘旅のきっかけでしたね。2人で行くほうが気楽だなと思って(笑)。私の「どこかに行きたい欲」に娘に付き合ってもらうところから始まりました。
——これまでどんなところに行きましたか?
本当にいろんなところに行きましたね。娘が保育園のころは、私はシフトで働いていたのでお休みが不定期だったのですが、小学生になるころには私も娘も土日祝がお休みになったので、基本的に1泊2日で行けるところを選んできました。
海外も何度か行きましたし、日本国内であれば、土曜日の早朝の飛行機で移動して終日観光を思う存分満喫して、夜はいわゆるスーパー銭湯で疲れを癒してから深夜バスで帰ってくることもしょっちゅう。日曜には私は家事を、娘は宿題をやれるので、気軽に行けていいよねと。
——すごくパワフルな弾丸旅行ですね!
うどんが食べたいから香川に行ったこともありますし、テレビで見て「これが食べたいな」「この景色が見たいな」と思ったら、すぐに予定を組みます。私たちにとって旅行は「ちょっと行ってくる」くらいの感覚なんですよ。
——今では娘さんも中学2年生とのこと。お2人の旅行のスタイルに変化はありましたか?
小学校高学年くらいになると「ここに行ってみたい」と娘から提案してくれることが増えましたね。夏休みの自由課題を「平和学習」と称して、沖縄や長崎、広島に行ったこともあります。
今は宿題よりもとにかくK-POPアイドルに夢中なので、好きなアイドルグループが所属する事務所の前で写真を撮ることも。私はカメラマン役としてついていってます(笑)。
いつまで一緒に行ってくれるかわかりませんが、今のところは「この日はお休みだから、お母さんとどっか行きたい」と娘から言ってくれるので、そう思ってくれているうちにたくさん思い出を作りたいですね。
その場所でしか感じられない気持ちがある
——長野さんにとっての「忘れられない旅」のエピソードを教えてください。
コロナ禍明けに娘と福岡に行ったんですね。何をするでもなく、とにかく「久しぶりに飛行機に乗りたいね」という話になって。伊丹までの1時間じゃ物足りないから、福岡だったら本数も多いし時間もちょうどいいから福岡にしようと。
太宰府天満宮などを巡り、いざ帰ろうと空港に行くと、家族や友人との別れを惜しんで泣いたりハグをしている人たちの姿を目の当たりにしました。全然知らない人たちなのに、その姿を見て私も娘もなぜか泣いてしまって…(笑)。
コロナ禍の2年の間は、旅行が不要不急のものと言われていて、「別に旅行なんてしなくても生きていけるじゃん」という風潮があったと思うんです。でも、遠出をして誰かに会いに行くことってすごく尊いことだし、会いたくても会えない人たちもいるんだなと、しみじみとした気持ちになってしまって。
「旅行会社で働く意義を感じた」というとちょっと大袈裟かもしれませんが、それでも「あの人に会いたい」と思ったときや「この景色が見たい」と思ったときに、それが簡単に叶えられる世界ってすごいことなんだなと。そしてその交流をお手伝いできる仕事ってやっぱりいいなと。あらためて感じるきっかけになりました。
娘はただのもらい泣きだったのかもしれませんけどね(笑)。それでも「いまの光景、なんかよかったよね!」と同じ感動を共有できたことはすごく嬉しかったです。
——旅を通じていろんな気持ちを共有できることが、母娘旅の良さかもしれませんね。
見たいもの、食べたいものを一緒に体験することも旅の醍醐味ですが、ただ楽しいだけではない、多様な気持ちが生まれることも旅のいいところだと思っています。
例えば、先ほどお伝えした「平和学習」をテーマにした旅では、普段の生活では目にすることのない戦争の歴史を一緒に学びました。やはりテーマとしては重たいので、娘のテンションもすごく下がっちゃったんですよね。
「旅行=楽しいもの」というイメージが娘の中にあったと思うので、「旅行に行くよ」と言っておきながら、そういう思いをさせてしまったのはちょっとかわいそうだったかなという気持ちもありますが、でも「きちんと見なければいけないもの」もあると思っていて。
楽しいものだけではなくて、その場所でしか感じられない気持ちを、旅を通じて感じさせてあげられているのかなと思っています。
帰ったあとも旅は続いていく
——母娘2人旅は、長野さんと娘さんにとってどのような時間ですか?
こうしてフルタイムで働いていると、どうしても一緒にいられる時間が限られますよね。子どもが小さければなおのこと、一緒にいられる時間を十分に取れないことに、負い目を感じている親御さんって多いんじゃないかと思うんです。
旅行でその穴埋めをしていたというわけではないんですけど、でも当時、休みの日はできる限りべったり一緒に過ごしたいと思っていました。どうしても家だと家事やご飯の準備をしなくちゃという気持ちになって、娘に100%時間が使えない感覚があって。でも、旅行であれば、そういうのは一切不要。娘との濃密な時間にできるんです。
長い時間一緒にいられるのが理想かもしれないけど、でも長く一緒にいるからと言ってその時間が濃密とは限らない。じゃあ、「一緒に旅行に行けばすべてが解決」というわけではないけれど、少なくとも私はそこで折り合いをつけてきたのかなと感じています。
——なかには、本当は旅行が好きだけれど、子どもが生まれてから我慢しているというお父さん・お母さん方もいるかもしれません。
たしかにお客様と店頭でお話ししていると、そういったご相談は多かったですね。例えば、「東南アジアに行きたいけれど衛生的に子どもを連れていっても大丈夫ですか?」とか「飛行機で泣かれたらどうしよう」など、心配される親御さんたちは本当に多かったです。
そんなときは「こういう対策をしましょう」と私の経験談を通じて背中を押すことがよくありましたね。やれる対策はやり切って、あとはどうにかなるものだと思っています。
娘が小さい頃、飛行機で全然寝てくれず、周りになるべく迷惑をかけないようにとずっとあやして大変な思いをしたこともありますが、それでも娘が生まれてからのほうが旅行を楽しんでいると思っています。
——改めて、長野さんが感じる「旅行の魅力」とは何でしょうか?
「次はどこに行こうか?」「どこ行きたい?」と娘と計画を立てるのも楽しいし、帰ってきた後に思い出を振り返るものも楽しいですよね。私たちはいつも2人旅なので、同じ構図の写真がどんどん溜まっていきます(笑)
「あの時、あんなものを食べたね」「あんな服を着てたね」と思い出を振り返る。旅は旅をして終わりではなくて、その後も続いていくものなんだと思います。
娘が中学生になり学校や自分の予定で忙しくなってきた今、そしてこれから一緒に過ごせる時間がだんだん少なくなってくるであろうことを考えると、この先の2人旅は、私自身にとって、いままでよりもっともっと貴重で大切な時間になるはず。娘が付き合ってくれるうちに、その場所でしか体験できない思い出をたくさん作っていきたいです。