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Instagramで推し活アカウントを運営する社員が語る、推しと旅の関係

3人に1人は推しがいるという昨今、推し活は経済をも動かすビッグコンテンツとなりました。推しが移動すればファンもまた移動する…ということで、推し活と旅は切っても切り離せない関係にあります。

そんな「推し活遠征」を応援するのが、JTBのインスタグラム「@rurubu.travel_live。運営しているのは、自身らも熱心に推し活を行っており、年間80回以上(!)もライブや舞台を観に行くというJTB 社員のおすしさんと、ひよこまめさん。そんなお二人に、推し活遠征を通して生まれる新しい交流のカタチについてお話を聞きました。

「@rurubu.travel_live」なかの人 おすし
ライブや舞台を年間80回は観に行く推し活のプロ。約7年間、店頭での接客業務に携わった後、現職に。普段は「るるぶトラベル」のサイト運営を担当し、特集ページなどの制作や更新を行っている。インスタグラムでは投稿の他にイラストも担当。
「@rurubu.travel_live」なかの人 ひよこまめ
推し活遠征では、旅もセットで楽しむアクティブ派。2022年に入社し、おすし同様「るるぶトラベル」のサイト運営を担当しながらインスタグラムを更新中。主に投稿のデザインやリール動画の撮影、編集を担当。 

るるぶトラベルと“推し活遠征”の相性の良さに着目

――2022年に開設したインスタアカウント。開設のきっかけになったと言っても過言ではないお二人の「推し活」に対する思いを知るべく、まずは推し活遍歴について教えてください。

おすし:小中高生の頃はディズニーオタクで、年間パスポートで舞浜に行きまくっていました。中学生頃からは「いきものがかり」に傾倒しまして、音楽にのめり込むように。その後バンドにも興味の幅が広がり、特にハマったのが「パスピエ」と「UNISON SQUARE GARDEN」ですね。でも一昨年くらいから、STARTO ENTERTAINMENTにどハマりしちゃって。界隈を広げて、先月だけで15回以上観に行きました。

ひよこまめ:私の最初の推しは「AKB48」です。その後、友達の影響で「Hey! Say! JUMP」にハマりました。でも、次第にアイドルから離れていって、地元が同じ「Official髭男dism」を推すように。他にもいろいろと好きなバンドがいるのですが、アーティストの本当の魅力は現場に行かないと分からない。推し活のプロであるおすしさんを見習って「推すか推さないかは、一度ライブに行ってから決める」をモットーとしています。

――圧倒的な熱量ですね……!「推し活」がライフワークであることが伝わってきました。インスタも、そんな推し活への情熱によって生まれたのでしょうか?

ひよこまめ:きっかけのひとつではあるのですが、そもそもの背景としては、るるぶトラベルで「若年層ユーザーを増やしたい」という思いがありました。当時のユーザーはビジネス利用が多かったので、若い方にも知ってもらおうと。

おすし:若い方に知っていただくには日常で接点を持つことが重要だと考えました。とはいえ20~30代の女性って子育てをしていたり、バリバリ働いていたりと人によってライフスタイルがかなり違います。なのでどんな方に向けて発信をするか悩みました。

ひよこまめ:そんななか「推し活」をしている方は日頃から情報収集をしているはずなので日常で接点を持てるのではないかと考えました。そしてライブ遠征なら出張のように行く場所が決まっていて、近くのホテルを探しますよね。ユーザーと同世代である私たちも、リアルに推し活や遠征が趣味なので「お客様の立場に立って考えやすいし、楽しく発信できるはず!」ということで開設に至りました。

――そして晴れてアカウントを開設。最初はどのような思いや意図で投稿を作成していきましたか?

ひよこまめ:コロナ禍の最中だったので、まずはスモールスタートでやってみようという感じでしたが、SNS運用は誰も経験がなくて。セミナーに参加したり調べたりしながら手探りでスタートしました。

おすし:今も手探り状態ではあるのですが、最初は「自分たちがライブ遠征に行くなら何の情報を知りたいか?」と考えました。会場の情報やホテル選びのポイント、現地での過ごし方のモデルコースなんかもあるといいよねと意見を出し合いながら、少しずつ形にしていきました。

 ――2022年の開始から2年経ちましたが、フォロワーの反応に変化は感じられますか?

ひよこまめ:DMをもらう回数が増えました。コメントには必ず返信するようにしているんですが、「このライブに行ってきました!」とか「ホテルのおすすめありがとう、実際に泊まって良かったです!」みたいな嬉しい報告をもらえるようになりました。役に立つ情報を投稿できているのかな、と手応えを感じています。

おすし:フォロワーさんの数や投稿への反応もグンと増えました。いいねや保存が増えるということは、フォロワーさんに良い投稿だと評価されて、アルゴリズムで多くの人に広められているということなので、数字の伸びはモチベーションになります。

――特に反応の良かったコンテンツはありますか?

ひよこまめ:ホテルの選び方の投稿は反応がすごく良かったです。会場へのアクセスが良い駅から探すとか、セルフロッカーがあるとか、自分たちにとっては当たり前のことでも一般の方からすると新鮮に感じられたようです。保存数が何千という投稿もあって驚きました。

おすし:あとは飛行機に持ち込めないものとか、新幹線のグリーン車と普通車の違いとか。意外と知られていないというか、豆知識系の投稿は伸びましたね。

ひよこまめ:意外と知られていないというより、ほとんどの人は知らないんですよ(笑)。おすしさんが詳しすぎるんです!

おすし:私は現職に異動になる前は店舗で働いていたので、その頃の知識が役立ちました。例えば、新幹線の何号車の何番が先頭で、何番が後ろ……とかが全部頭に入っているんです。

 ――確かに新幹線など「乗っていた●号車は駅の出口から遠かったんだ…」と降りるときに初めて気付いて絶望することがあります。細かいけれど、リアルに役立つ情報はユーザーとしてとても嬉しいですね。

ひよこまめ:そうなんです!推し活遠征って、調べることが山ほどあるんです。ライブのチケットが取れたら、いや取れることを想定してホテルを調べたり、現地での行動を計画したり…と本当に大変なんです。

おすし:地方だと交通の便や会場までのアクセスがあまり良くなかったりしますし、現地でお昼ご飯何を食べよう?とか、お手洗いはどこにあるのか…とか気になることがいっぱい。なので、冗談抜きで、下調べや準備は当日の勝負を分けます

ひよこまめ:そこで私たちのインスタの出番です「@rurubu.travel_live」をフォローしていれば、推し活遠征について知りたいこと網羅できちゃうよ!といったコンセプトでやらせてもらってます。

おすし:うまくまとまりました(ニッコリ)。

 ――経験や知識を生かして投稿をつくられているんですね。他にもコンテンツ作りで意識していることがあれば教えてください。

ひよこまめ:コミュニケーションは大切にしています。DMやコメントにはマメに返信して、接点をもつように心掛けています。現在は、週1回の投稿と、かなりゆっくりペースになってしまいましたが、それでもフォロワーさんに飽きられないように飽きずに見続けてもらえる有益な投稿を意識しています。また、「とりあえず投稿する」ということが目的にならないようにしています。

上質な音響や客席での飲食。Kアリーナ横浜は推し活がはかどる!

写真:株式会社ケン・コーポレーション

この日インタビューを行ったのは横浜市にあるKアリーナ横浜。2023年9月にオープンした、世界最大級の音楽特化型アリーナです。ここからはKアリーナ横浜の広報担当者様を交えながら、Kアリーナ横浜の特徴や魅力についてご紹介してもらいます!

Kアリーナ横浜広報:Kアリーナ横浜の特徴は、なんといっても音楽に特化した設計です。音響設備やステージはもちろん、客席に至るまでライブ鑑賞と設営に最適化された作りになっています。まず、常設のステージ上には大型スピーカーとモニターを完備。通常のアリーナだと、その都度組み立てる必要があるんですが、Kアリーナ横浜では通常は持ち運んでくるような機材が全部揃っています。

もう一つ特徴的なのが建物の形です。アリーナと聞くと円形の建物のイメージしがちですが、Kアリーナ横浜はアリーナと言いつつも劇場型。扇形に配置していることで全席からステージを正面に感じることができるので推しを確実に見ることができます。

収容客数2万人。約200個のハイクラススピーカーが設置してあり、全席で大迫力の音を楽しめます。(写真:株式会社ケン・コーポレーション)
写真:株式会社ケン・コーポレーション

ひよこまめ:推し活目線で見ると、お手洗いの数が多くて綺麗なのが嬉しいです。古い施設だとまだ和式のところもあるので、綺麗かつ数が充実しているのはありがたいですね。あと、洗面台も豪華で、推しに会う前に身だしなみを整えたい私たちとしてはテンションが上がります!

Kアリーナ横浜広報:ありがとうございます。お手洗いにはかなりこだわりました。トイレ休憩時は女性のお客様が長蛇の列を作ることが多いじゃないですか。それを解消するために、男子トイレを女子トイレに切り替えられるつくりにしています。アーティストのファン層を見極めて、変更しています。

おすし&ひよこまめ:助かる〜!!!

7階のバーラウンジ。アリーナの中にこれだけ大規模なバーがあるのはレア!

Kアリーナ横浜広報:ライブ前後には、ぜひ7階ホワイエのバーラウンジ(Arena Bar 7)を利用してみてください。終演後は余韻を楽しまれる方や遠征組同士の交流の場として活用してくださる方も多いです。もちろん、ライブを観ながら飲食を楽しんでいただくのもおすすめです。

座席にカップホルダーが2つ付いているので、飲み物やカップシウマイなどを入れられます。11ヶ所ある売店は、どの席からもアクセスしやすい場所にあります。

公演がない日でも一般開放しているので、横浜のシティな景色を満喫しに来るのも◎。夜景も最高です。

推し活女子の本音に迫る!遠征時のこだわりとは?

――お二人が遠征する上で、特にこだわることや譲れないことを教えてください。

ひよこまめ:私はホテルのベッドのシーツにこだわりがあります。色は白で、ビシッとハリがあること。シーツに色がついていたり、ふわふわしていたりするとなんか嫌なんですよ…。

おすし:私もホテルにはこだわりがありますね。潔癖症なところがあるので、まず清潔であることが大事。本音が知りたいので口コミはあえて悪いほうをチェックします。「髪の毛が…」「トイレにカビが…」とか書いてあると別のホテルを探します。

ひよこまめ:おすしが潔癖症なのはアカウントでも有名なんです(笑)。なので、そんな潔癖症の「おすしが泊まる、選ぶホテルはここ!」「おすしおすすめ!」みたいな感じで投稿もしています。

おすし:やっぱり自分が泊まることで、ネットには載っていない細かい部分まで知ることができるのは仕事にもつながっていますね。実際にそういったリアルな情報の紹介はユーザーからの反応も良いです。アカウントを運営するまでは写真とか一切撮らないタイプだったのですが、今ではしっかり撮るようになりました(※掲載許可はきちんと取っています)。

ひよこまめ:おすしは年間80回以上参戦して内20回くらいは宿泊込みの遠征をしているので、おすし情報の信頼度はハンパないです。「こういうときどうしていますか?」と私が質問して、おすしの答えを聞いて「いや、普通しないですよ(笑)」といった雑談から生まれる投稿も多いです。

――年間80回以上ライブを観に行くとなると、経済面も気になりますが……推し活遠征のためのやりくりや、節約術などはあるのでしょうか?

ひよこまめ:私は会社にお弁当を持っていくとか、飲み物はできるだけ買わないとかそれくらいなんですけど、おすしさんは結構ガチですよね?

おすし:そうですね、毎週のようにライブに行くため節約は必須です。ランチはお弁当、どこへ行くにも水筒持参であることは基本で、遠征時にはとにかく比較してコスパを重視。それから、クレジットカード機能付き交通ICカードを使用してポイントを貯める。そしてそのポイントで新幹線に乗る。推し活が推し活費を生むのです。

ひよこまめ:推しの為なら節約も苦じゃないですよね!

 ――お二人が推し活アカウントに取り組む意義はなんでしょうか?

ひよこまめ:私たちファンは推しのためならどこへでも行きますし、推し活のパワーってすごく強い。それこそ地方を盛り上げ、観光を促進し、ひいては日本経済を動かしている自負があります(笑)。だから推し活アカウントを通して、フォロワーの皆さまと一緒に「新しい旅のカタチ」をつくっていけたらいいですよね。

おすし:ひよこまめの言う通り、推しに会うためには全国各地に足を運びますよね。その際、会場周辺の観光スポットを巡ったり、グルメを楽しんだりと、ライブ以外の時間も有意義に過ごしたいと思う方は私を含めて多いと思うんです。だから自然と旅行に関する情報にもアンテナを張るようになるかなと。そんな推し活から広がる旅のニーズを私たちのアカウント情報で満たすことができたら嬉しいです。

――ずばり、お二人にとって推しの存在とは?

おすし:趣味を超えてライフワークみたいな存在です。なくても生きていけるけど絶対にあった方が良いもの。ライブに行ったり、応援したりすることが日常みたいな感じです。

ひよこまめ:私の心を豊かにしてくれて、コミュニティを広げてくれる存在です。イライラしたときや落ち込んでいるときに推しの曲を聴いたりライブに行ったりすると元気が出ますし、このアカウント運営を通じて感じたのは推しがいることによって人との会話や話題も増え、つながりも広く深く築くことができると思いました。

――おすしさん、ひよこまめさん今日はありがとうございました! 

写真:  鍵岡龍門
文:   大西マリコ
編集:  花沢亜衣
撮影協力:Kアリーナ横浜