土木学会事務局です。
大人が読んでも面白い、ためになる児童書を紹介する不定期掲載「土木技術者も読みたい児童書 #土木の本 」シリーズ、今回紹介するのは「かわ」(刊 福音館書店・かこさとし さく/え)です。
この「かわ」。初版の発行は1966年9月と55年も前のことで、小さい頃に見たことがあるという方もたくさんいらっしゃると思います。いまも発行されているロングセラーです。
高い山の雪どけ水や、山に降った雨から生まれた小さな流れは、谷川となって山を下ります。小さな流れは、ダムに貯められて発電所で電気を起こしたり、激しい水の勢いで岩をくだいて小さな石ころにしたりします。そして、やがて平野に出るとゆるやで大きな流れになります。田んぼを潤し、水遊びや魚釣りの場となり、いつしか大きな川になって、最後に海へとそそぎます。一つの川をめぐる自然と人間の営みを横長の画面いっぱいに細部まで描き込んだ絵本です。
源流から河口までの流域の姿を、上中下流の地形や河道形状の違いも感じられるよう、見開きのページいっぱいに描き込まれています。また、流域の人のくらしや産業なども描かれており、川と社会の関係も気づくことができます。近くに川が流れていても日常的に目にする場所以外の様子というのは大人でもなかなかイメージしにくい面もあるので、あらためて気づきを得られるのではないでしょうか。
近年の気候変動による水災害リスクの増大に備えるため社会で「流域治水」への取り組みが進む中、流域というものを改めて感じる機会になる絵本ではないかと思います。
50年以上前の作品なので、描かれた生活や産業については隔世の感もありますが、ダム・堤防・橋梁・港湾など土木構造物の姿は今も変わらず。
今と違うこと、今も変わっていないこと、これから必要になることなど、考えながら読んでみても面白いのではと思います。
さてこの「かわ」という絵本。冊子形式の通常版だけでなく、一枚に繋げた「絵巻じたて」という特別版も出されています。
すべて広げたその長さなんと約7メートル!
7メートルがどれくらいかというと、アフリカゾウの体長とかマイクロバスの全長やサッカーのゴールマウスの幅がだいたいそれくらいとか。
ホームページでは『源流から海までの川の旅が一望できます』と紹介されていますので、全部広げるとどれくらいになるか、外に出て実際に広げてきました。
判りにくくてすみません・・・(汗)
ちょっと説明を追記してみました。
家の中で広げられるサイズではありませんね。が、一枚に繋がっていることで、川の長さ、大きさ、流域の連続性をより感じられるようになっています。なお外で広げるとちょっとした風ですぐにめくれあがるので注意が必要です。
絵本じたては通常版(900円+税)と比べるとちょっとお高い(3000円+税)ですが、普通の絵本のようにページとしてめくったり、屏風のように立ててみたり、広げたり、GoogleMAPや地理院地図で実際の川と比べて見たりと、大人も楽しめると思います。
引き続き「土木」に関連するこども向けの本を大人向けに紹介していきたいと思いますので、絵本クラスタ・児童書クラスタのかた、絵本・児童書の出版社の中の人のみなさま、土木・建機・防災など、弊会の方々が興味をもちそうなオススメの絵本・図鑑・児童書があったら「#土木の本」のタグをつけて、noteやtwitterでご紹介ください!twitterDMで情報をお送りいただいても結構です。
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