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【オススメ書籍】正しいコピペのすすめ
正しいコピペのすすめ
宮武久佳著 岩波ジュニア新書
わかりやすい文体で,著作権について考える解説本です。
Instagramなどの画像主体のSNSが増えるにしたがって,私たちは日々さまざまなものをコピー(撮影)しています。それは,自分自身だったり,風景だったり,料理だったり,グッズだったりします。しかし,「そのコピーやってもいいの?」という質問に,理由を説明して善し悪しを語ることは意外と難しいものです。本書は,わかりやすい文体で,そうした問題について考える機会を与えてくれます。
1 実例を用いて著作権について考える
本書は,私たちの日常のコピーについて実例を取り上げて考え,著作権法に照らした善し悪しだけでなく,どうあるべきかを考えるための解説本です。
書籍の中の例示として興味深かったのは,お店での記念撮影です。お店で店員さんに記念撮影してもらったときの著作権は店員さんにあり,私たちが撮影をお願いしたにもかかわらず,SNSで公開すると著作権法の違反になるのです。しかし,実際には記念撮影の画像をSNSで公開しても,著作権法違反と言われることはありません。その理由は……という形で,実例に沿って著作権について解説しながら,私たちの日常にあふれるコピーについて考え直す機会を与えてくれます。
2 模倣から創造が生まれる
私は研究倫理教育や研究指導法の研究をしていますので,第4章の「コピーと創造性」で取り上げられた「見たことのないものは創り出せない」という点が非常に興味深かったです。
たとえば,鵺や麒麟などの空想の動物は,いくつかの動物の集合体です。見たことも聞いたこともないものを生み出すことはできません。私たちが何かをつくるときには,かならず参考になるものがあるのです。つまり,誰もが模倣しているのです。では,どうやって「新しいもの」を生み出すのか。それは鵺や麒麟が示してくれます。いろいろなことを知り,体験して,たくさんの引き出しを持つからこそ,それを組み合わせて,新しいものを創り出せるのです。つまり,模倣から創造が生まれるのですね。
3 読んでみて
表現を噛み砕いてくれていますので,中高生から読めると思います。新しいものを創り出すには模倣が必要です。しかし,無原則な模倣は研究不正行為になります。研究倫理上は,この模倣と創造の線引きがとても大事になるのだと,改めて,研究倫理教育について考える機会になりました。誰もが発信者になる時代,コピーとは私たち一人一人が考えなくては行けない問題です。本書に書かれた内容について,多くの国民が知り,みんなで議論することが大事だと思います。
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