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おすすめの本~ステロイドの虎~

おすすめの本シリーズ第15段です。
今回ご紹介するのは、みんな名前は知っているけれど、いざ使うとなると躊躇うことが多いであろう『ステロイド』に関する本です。

この本を読んだ率直な感想は、「まさに求めていたステロイドのハウツー本」でした。ステロイドの用量や投与期間について明記された文書を今まで見つけられず、先輩や専門科の先生に質問しても曖昧な回答だなーと感じていたものが、この本を読んで腑に落ちました。


副作用と対策を知る

ステロイド開始後どのくらいの期間でどのような副作用が出るのか、既にご存知の方も多いかと思いますが、本書では副作用が“予防可能性”の観点からグループ分けされています。この考え方を知ることで、副作用に対する医師の心構えが変わると思います。また、それぞれの副作用に対して処方例を含め具体的な対策が記載されている点も心強いです。
医師が副作用を恐れて患者さんに過度な心配を与えてしまったり、良かれと思って処方したいわゆる「副作用予防薬」で逆にステロイド以外の副作用が出てしまったり、となっては本末転倒です。
具体的な分類・対策について知りたい方はぜひ本文をご覧ください。

製剤ごとの特徴を知る

各製剤の特徴がゲーム攻略本のように紹介されています。ステロイドの扱いにくさの一因となっているであろう、製剤ごとの糖質コルチコイド作用・鉱質コルチコイド作用の力価の差や製剤ごとの使いどころなどについて記載されています。また、経口剤と注射剤はどちらの方が良いのか、経口剤から注射剤に変更する場合の用量はどれくらいが適切なのか、という疑問にも答えてくれています。

ステロイド処方の型を知る

ケースごとに筆者の処方例が記載されていて、本を読んだ日から早速ステロイドを“適当に”処方できるようになれます。この疾患はステロイドも選択肢なんだよなぁ…と分かっていても、今まで極力ステロイド以外の方法で対応していた疾患(腎機能が悪い高齢者の偽痛風にステロイド関節注射、亜急性甲状腺炎にNSAIDsなど)に対して、次からは自信を持ってステロイドを処方できそうです。まずは型を覚え、実臨床で経験を積むことが大切だと思います。

感想

私個人としてステロイドを迷わず使える(=使い慣れている)場面は、敗血症性ショックに対するヒドロコルチゾンの点滴投与です。それはこれまでの臨床経験の中で重症な感染症に遭遇する機会が比較的多かったこと、状況的に緊急度が高く急いで対応しなければならないことが大きな理由と考えます。一方で、不明熱の精査をすることも多いのですが、例えば臨床的に巨細胞性動脈炎を疑っている患者さんに視力障害が出現した場合は、(敗血症性ショック同様急ぐ病態ですが、)膠原病科の先生に相談してからでないとステロイド投与に踏み切れていませんでした。「ステロイド投与によって今後確定診断がつかなかったらどうしよう」と言った気持ちが働いていたからです(敗血症性ショックを疑ってステロイド投与するときも確定診断が得られているわけではないのに…)。しかし、まさに本書に記載されている『完璧さに呪縛されない』という一文によって考え方が変わりました。

文章量も多くなく、リズムが良くて読みやすいので、ぜひ読んでみていただきたい一冊です。

文責:平山 果歩(自治医科大学附属病院 総合診療内科)

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