AGC取締役会長 島村氏講演「両利きの経営 組織カルチャー変革への挑戦」から考えたこと
「経営者の仕事は事業ポートフォリオを変革することである」
私が担当する次世代経営幹部育成プログラム(CLP) において、元日本交通株式会社代表取締役社長の知識賢治氏が述べた言葉で、今回の講演で島村氏も同様のことをお話されていた。
島村氏によれば、事業ポートフォリオの変革とは「視点を変えること」。言い換えれば、販売地域を変えることも、事業の目的を変える(利益を追求する事業として明確に位置付ける)こともポートフォリオの変革に含まれる。
今回の講演を聞き、これまで事務局として担当した多くの内容を思い出した。その中から特に記憶から思い起こされたものを3点挙げると
① 経営者の仕事は事業ポートフォリオを変革することである。
(知識賢治 元日本交通株式会社代表取締役社長@次世代経営幹部育成プログラム CLP)
② 変化の時代には、変化を最も感じる現場の人々が自ら動き、ボトムアップ型の組織をつくる必要がある。
(内野崇 学習院大学名誉教授@A社一社内研修)
③ 組織変革において、次世代の経営幹部候補にビジョンを作成させ、社長と次世代経営幹部候補の間の役員層に変革の意識を植え付けることが効果的な手段となる。
(佐々木圭吾 椙山女学園大学教授@同CLP)
これらは経営者の話であって、自分には関係ないと聞き流してしまってはもったいない。自分の仕事に置き換えたときの示唆は何かと考えることが重要だ。
① 経営者の仕事は事業ポートフォリオを変革することである(知識賢治 元日本交通株式会社代表取締役社長)
事業ポートフォリオ変革とは自社がどの事業で稼ぎ、どの事業に投資し、どの事業から撤退するのかを環境変化を考えながら変革していくことである。 AGC・島村氏の講演から、このポートフォリオ変革を「視点を変えて考える」ことだと理解した。
現場の我々に置き換えれば
・担当する商品のラインナップやアイテムは20年前から変化に合わせて変わっているだろうか。
・時代と共に顧客の求めるものも変わってきているはずだが前年踏襲になっていないだろうか。
・商品は同じでも顧客を変えて 売り方をBtoCに変える/学生や高齢者をターゲットに売る 等視点を変えることができないだろうか。
このような視点を常に持ち、時代に合わせて変革していく必要があると考える。
② 変化の時代には、変化を最も感じる現場の人々が自ら動き、ボトムアップ型の組織をつくる必要がある。
(内野崇 学習院大学名誉教授)
自身が感じた変化に対して打ち手を考え、行動しているケースはあると思われる。
しかし、本講演の内容から考えると、一人ひとりの行動を超えて、個人が感じた変化を組織としての知にできているかを考える必要がある。
組織としての知にするためには、現場の我々からすると弊害は多々ある。
たとえば、普段の業務で忙しい/変化を感知した際にどうすれば良いかわからない/ボトムアップで提案をしてもどのように生かされているかわからない…
このような理由から積極的に動くことは難しい。
自身のリソースを使ってまで組織の知に貢献するには、ある程度強制的に集約した上で、自身が集めた知が役に立っていると実感できる仕組みが重要だと考える。
・変化の兆しと自身が考えたことを記載するシートを週1回記入
(現場で感じた変化や新聞からの情報などを記載)
・変革室や変革委員会を設置し、個人の力だけでなくチームや組織で集約し
た上で、新規事業や方向性を検討
・現場も巻き込み変革を開始
このような仕組みを整えたら、ボトムアップで変化に対応して動ける組織になるのではないだろうか。
③ 組織変革において、次世代の経営幹部候補にビジョンを作成させ、社長と次世代経営幹部候補の間の役員層に変革の意識を植え付けることが効果的な手段となる。
(佐々木圭吾 椙山女学園大学教授)
これについては、あくまで「組織変革」に於いてという前提を外してはならないと考える。
個人の意識改革ではこの手法は使いにくい。
例えば新卒入社後4年目の社員に意識変革を促すため、後輩である新卒1年目に 重要な役目を負わせることで4年目の社員の意識は改革されるだろうか?恐らくそううまくはいかない。4年目の社員の方はモチベーションも下がって辞めてしまうかもしれない。
このような変革の手法を取るためには
・個人ではなく組織単位
・ある程度の年次と役職
という条件があれば、効果的な手法ではないだろうか。
今回のように様々な研修での様々な先生の講義がつながることが多い。
事務局業務を普通のタスクで終わらせるだけではもったいなく、色々学べる業務であると改めて実感した講演であった。