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放射線科医が患者になって|造影ダイナミックCT検査について思ったこと
私はアメリカに来て、妊娠・出産を機に一気に
「医療を提供する側」から「医療を受ける側」となった。
実際、両者の気持ちは大きく異なるんだなぁと感じた。
今回はそのことについて書いてみようと思う。
***
みんな知ってるか知らないか、知らないが、私は放射線科医だ。
放射線科医は、画像診断の他にIVR (Interventional Radiology)
地味な仕事として
検査の時に必要なルートをとったり、それを確認したり
検査に立ちあったり、副作用が起きた時に対応したりする。
あと、造影CT検査を初めて受ける患者さんには
「造影剤が体の中に入ると、体がカーっと熱くなります。でもそれはお薬のせいで、皆さん起こります。気持ち悪くなったり、息苦しくなったら、すぐにお知らせください」
と、よく説明していた。
私はこのセリフを何回言ったかわからない。
脳を使わずに口だけで言えるので、ものすごい回数言っているだろうと思う。
***
私がまだ駆け出しの放射線科医で、大学病院の分院に勤めていた頃の話だ。
読影室のすぐ横にCT室があり、そこでバンバン検査が行われていた。
病院のシステムによるが、そこの病院は基本的にナースがルートをとってくれ、ナースがルートをとれなかった場合に、若手の放射線科医にルートとりが回ってきた。
ある日、ルートとりで呼ばれた。
もう数回失敗されたようで、腕にはたくさんのテープが貼られていた。もちろん正中はもう失敗されている。
「ダイナミックなので、20Gでお願いします。」と言われる。
※20Gは太くて長いため、太くてまっすぐな血管を探さないといけない。
とる側には少しハードルが高い。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44605628/picture_pc_ec57306d72933c5090fbd248f535624c.jpg?width=1200)
見たところ、手背が一番良さそうだったので、手背からルートをとった。
※往々にして既に検査はおしており、私達には手早くとることも要求される。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44606147/picture_pc_be85609b088091dcfa03e125148ba2cd.jpg?width=1200)
するとナースが
「先生、この人ダイナミックなんだけど。手背からダイナミックの検査したら、痛いの知ってる?」
と言ってきた。
そのナースは若手の放射線科医に、何かといちゃもんをつけてくることで有名だった。
(でももういい血管残ってないし。そんなの言うんだったら、他の血管潰さないで欲しい)
と内心思っていた。
***
さて、このnoteで造影CT検査について、詳しく語ってもしょうがないが
造影CT検査には【ヨード造影剤】という造影剤を使用する。
なぜ造影するかというと、画像にコントラスト(白黒の差)をつけたり,特定の臓器を強調するために使い、画像診断しやすくする。
ヨード造影剤は副作用も少なからずあるため、造影が必要と判断された場合のみ行われる。
熱く感じるのは、造影剤の注入による血管の拡張が理由とされている。
造影剤の使用量は体重によって決まり
また検査によって注入速度と撮るタイミング、回数も変わる。
ダイナミックCTは、造影剤が目的領域に到達するタイミングを見計らって、同じ部位を複数回撮影する。
その場合、大抵太い20Gでルートをとり、3-4ml/secで造影剤を注入しなければいけない。
また検査前には、検査に求められる速さで、生理食塩水を入れてみて、血管が耐えられそうか、というのも確認する。
***
やっと前置きが終わった!
時は流れ、私はアメリカで娘を出産後、翌日に退院。
その後、産後4日目に呼吸困難で救急搬送された。
産後の呼吸困難ということで、肺血栓塞栓症は否定しないといけない。
「PE studyか・・・」
(※PE studyはダイナミックstudyです)
造影CT検査を受けるのは、人生で初めてだった。
そしてERでとられた私のルートは手背の20G。
ERで告げたため、私が放射線科医だということを、撮影を担当してくれる技師さんは知っていた。
「先生はもうわかっているから、説明はいらないね。始めるよ。」
勢いよく、造影剤が私の中に入ってくる。
ひー!
熱いー!
痛いー!
わかってはいたものの、衝撃だった。
そして
「◯◯(前述のナース)さん、患者さん、ごめんなさいー!」と、心の中で詫びたのであった。
いい?
みんな覚えといて!
手背の20Gダイナミックは、痛いわよ!
【おまけ】
20Gのルートをとることは、医療従事者にとってちょっと気合いがいることだと、わかりやすく書いてあるnoteの記事を見つけたので、貼っておく↓
最後まで読んでいただきありがとうございます❤︎
これからもどうぞよろしくお願いします!
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