上尾シティハーフマラソン2022.11.20
先日出走した上尾ハーフについて主観を軸に振り返ります。
今回のレースは駅伝が終わりマラソンに向けてのスタートという位置付けで、テーマは3'10/kmでどこまで行けるかと、ペースダウンしてから3'15/kmで粘れるか。3'15/kmはマラソンの目標ペースであり、直近のロードレース10kmと駅伝9.5kmのアベレージ。
客観的にみればそのペースで21kmは持たないが、主観的調子は悪くない。
以上の前提条件を念頭にこの物語を読んでいただければ幸いに存じます。
スタート〜5km
12秒。号砲からスタートラインまでのロスタイム。学生のすぐ後ろ、Aブロックだった僕は想定よりスムーズなスタートが切れた。
時計を何回も見ながら感覚を合わせ3’10ペースを作る。しかし感覚が合わない。楽なのだ。「今日は3'10がキツくないぞ…」そう感じながら逸る気持ちを抑えて、丁度いい集団を探す。
だが、なかなか良い集団が見つからない。1.5kmの曲がり角で見つけた集団も、2km過ぎの直線で追いついた集団も追いつくと3'15ペースで落ち着いてしまう。それもそのはずだ、3'10で追いつける集団は3'10より遅いに決まっている。
前に追い付いては少し休憩して、また前の集団を追いかけるを繰り返して徐々に前へ。前ばかりを見すぎると上体が起きてしまうから、目標を定めたら下を向く。4km付近の大通りで薬科大の大グループを見切って、少し先の集団を追った。
「今日のうち1回だけ、3'05を使うならココだ!」そう思い、呼吸が苦しくなるもフォームを維持。徐々に前の集団が大きくなっていく。
5km通過15'59。細かなペース変動はあるものの、12秒のロスを除くとほぼ3’10ペース。まだ行ける。
5km〜10km
179。20km以降のスパートを除いてはこの日の最大心拍数をマークしながらも、なんとか集団に追いついた。この1km、3'06"。立体交差の坂があってのこのペース。呼吸は荒く、かなり乳酸が出ている。しかし心には余裕があった。この展開を予想して1週間前に対策練習をしていたからだ。
1.9km×4周(7.6km)のペース走。1周目は15秒先にスタートしたチームメイトを追いかけ、そこから粘る練習。1周目3'01/kmで、残り3周は 3'08/km。この練習のおかげで、3'08/kmでも呼吸を整えられることが分かっていた。
上武大と山学の選手が引っ張る10人の集団の後方について呼吸を整える。心拍数は172まで下がり余力が出てくる。想定通り。ペースはほぼ3'10で落ち着いており、この流れに乗るしかない。
そのまましばらく進むと9km過ぎの折り返しに近づき、先頭が見えて来た。山学のムルア選手が1人抜け出していた。そのあとは集団、集団、大集団。これを見る限りは単独走になる心配はなさそうだ。折り返して何人かが遅れ、今いる集団が4人に絞られた。だがペース変動はない。
10km通過31'49。この5kmは15'50。完璧なペースだ。
10km〜15km
3'24"/km。「今日のレースはこれまでか…。」
そこまでずっと3'15以内では来ていたが13kmで急激なペースダウン。競っていた拓大の選手に置いて行かれるが反応できない。大した傾斜でもない登り坂が、反り立って見えた…。
遡ること8分。中間点を33'26で通過したところから集団がバラけ始める。前の選手との差が徐々に開く。この先の田んぼ道で1人になるとキツイ。なんとか堪えたいが、足が動かなくなってくる。
「ブゥーーー!」GARMINが11km地点を知らせてくる。「そうか。中間点から500mもないもんな。」この1km3'11。「落ちてない!前のペースが上がっていたんだ。」その証拠に、目の前の選手との差は広がっていたが、さらに奥に見える集団は近づいてきていた。まだ行けると思うと急に体が軽くなった。ここで後ろから追い上げてきた拓大の選手に喰らいつく。
12km地点、この1kmも3'11。粘れている。ここで前に名前入りのゼッケンをつけた選手が見えてきた。川内優輝選手だ。どうやら練習として参加しているのか、そんなにペースは速くない。一瞬、後ろに付こうかという考えが脳裏によぎったが、拓大の選手ともに前を追う。
そして13km地点。上り坂に差し掛かり、ついに足が止まった。完全に動かない。だがここで終わったらこれまでのレースと何も変わらない。「まだ終わってたまるか。」そう思いながら懸命に走る。だがこの坂の悪魔には多くの選手が捕まっているようだった。他との差も開かない。何人かと抜きつ抜かれつ競いながら走るうちに足がまた動き出した。坂を抜けたんだ。
動き始めた集団の流れに乗ってペースアップするとむしろ体が楽になる。これだ!ハーフはこの復活があるんだ!
15km地点48'15、この1km3'14。立て直した!
15km〜20km
12℃。レース時の気温。若干肌寒いが、ハーフマラソンを走るにはベストコンディション。15kmあたりから微かに雨が降り始めるも、熱の籠った身体には心地いい。16km地点3'12。完全に立て直していた。
ペースが上がった方が体幹に圧が入り、楽に走れている。逆に言うと、ひとたびリズムを崩せば一巻の終わりだ。そんなギリギリのところでせめぎ合っている。
17km地点、なんと川内選手が上がってきた。それも12km地点では1人で走っていたのが、今や10人以上の選手を引き連れてビルドアップしてきている。先ほど並走していた上武大の選手や山学の選手も含まれている。川内選手を一度見送り、大集団の後ろに位置取る。(こうやってどんどん人を吸収してきたのだろう。)
ペースが速い。だがここで乗り遅れたらゴールまで取り返すことは不可能だ。そう思い食らいついて行った。これが判断ミスだった。数百メートル進んだところでオーバーペースがたたり、猛烈な差込に襲われた。堪らず集団から遅れ出す。いくら痛みを無視して走っても、フォームが崩れて出力が上がらない。
3'16かかって18kmを過ぎたところで、序盤に通った立体交差が見えてくる。だが、その坂に備えようにも今走っていることで精一杯だった。しかしこれ以上ペースを落としたら、今度こそ終わりだ。
ここで勝負に出る。立体交差の下りを利用して一気にペースを立て直す。「動くぞ⁈」やはり、このペースに嵌めてさえしまえば走れるんだ。その勢いのまま一気に立体交差を駆け抜けた。
完全に動きを取り戻した。もう後戻りはできない。残り2.5km、攻め切るしかない。
ここにきて序盤で置いてきたはずの薬科大の選手が2人、さらに速いペースで追い上げてきた。周辺の選手たちも釣られてペースが上がる。20km通過64'29、この1kmは3'10だ。
20km〜ゴール
1.0975km。残りの距離。この距離が実は大きな差を作る。ここまでに20kmを走ってきた状態で約1.1kmは勢いだけでは乗り切れない。ここでペースを上げられるか、下げてしまうかで20秒は変わってくる。
そして68分を切るには3'30"以内でゴールする必要がある。1km換算3'10"、つまり今のペース。
やはりと言うべきかここで流れが変わった。仕掛けたのは薬科大の2人。負けじと横に並び立つ。ここまで来たら、もはや意地の勝負。このスピードに耐えられなくなるのが先か、その前にゴールするか。
もう時計を見る余力もないが、後から振り返ると心拍数は180を超えていた。最大心拍186の僕にとってはほぼMAXに近い。
そして競技場が見えてくる。ラストはトラックをおよそ350mほど走ってゴールとなる。
競技場の門を通過した瞬間に何人かが同時にスパートをかけるのをあえて見送った。トラックに入って残り300mから極限のスパートを仕掛ける。大外から一気に抜き去った。67'49。1.0975kmは3'01"/kmペース。ラスト200mは30秒で回っていた。
エピローグ
終わってみればアベレージ3'12/km。ここ最近のレースの中では良い方だと評価して差し支えないだろう。ハーフ以上の距離になるといわゆるランナーズハイがある。だがそれは神の気まぐれなどではなく、最後まで諦めずに攻め続けた時にのみ現れる必然の偶然。今日のタイミングでこの感覚を思い出せて良かった。
駅伝が終わってから練習量を増やしているのも少しずつ効果が出てきたのかもしれない。残り3ヶ月、大阪マラソンでの自己ベスト更新に向けてやれべきことが見えた、そんなレースだった。