マガジンのカバー画像

シロクマ文芸部

4
シロクマ文芸部さんの企画に投稿させて頂いた作品です。主にエッセイ。
運営しているクリエイター

記事一覧

【夕焼けは】落ち着かない【ブロマンスファンタジー】

【夕焼けは】落ち着かない【ブロマンスファンタジー】

夕焼けは落ち着かない。

「村が焼かれた日を思い出す」
「いや理由おっも!」

暮れなずむ王都のはずれ、冒険者用第八訓練場。ーー要約すれば“だだっ広い空き地”。
つい先程まで木刀を手に打ち合っていた二人の男、名前をジェイドとアレクという。
先代勇者の息子の後見人と兄貴分である。

「と言っても俺は母方の叔父だから先代とは赤の他人だが」
「ノアのかーちゃん、家族とはちっちゃい頃に生き別れたって言って

もっとみる
【海の日を】漁師町の思い出 #シロクマ文芸部【エッセイ】

【海の日を】漁師町の思い出 #シロクマ文芸部【エッセイ】

海の日を知っている?
7月の第三月曜日で、“海の恩恵に感謝し、海洋国家日本の繁栄を願う日”であるらしい。

ーー海開きの日とか、そういうのだと思ってた。

昔は7月の第三週なんて、まだ泳ぐには肌寒い年もあったんじゃがのう……と、謎にご老人ムーブをかましてしまうが、昨今の暑さを思えば致し方あるまい。

子どもの頃は夏休みの度に母の実家がある漁師町へ行き、海でもよく遊んでいた。
そもそも祖母の家の目の

もっとみる
【雨を聴く】ベランダの話 #シロクマ文芸部【エッセイ】

【雨を聴く】ベランダの話 #シロクマ文芸部【エッセイ】

雨を聴くと夜のベランダを思い出す。
実家で暮らしていた頃、私の部屋は二階にあり布団を干す為のベランダが付いていた。
何せ田舎の閑散な住宅地である。見えるのは空と電線位だったけど、逆に言えば人の目も気にしなくて良い場所だった。近くのローカル線を走る電車の音が心地よく、寝苦しい夏の夜などはビニールシートを敷いて涼むのが好きだった。

ところで私の部屋には一つ欠点があった。ベランダに面した窓のカーテンレ

もっとみる