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宗教や信仰についての雑記 #45

◯花の喩え

新約聖書の中に好きな言葉があります。それは、
「野の花は働きもしなければ紡ぎもしない。
しかし、栄華を窮めたソロモンでさえ、この花一つほどにも着飾っていなかった。
今日は在っても明日は炉に投げ込まれる花でさえ、神はこれほどまでに装ってくれる。」というところです。
とても美しい文章です。
どうやらイエスには高い詩作の才能があったようです。

昔、「世界で一つだけの花」という歌が流行りました。
この歌には様々な批判があるようですが、私もこの歌を初めて聴いたときに「残念だけど世の中そんなに甘くないよな」と思いました。
そしてまた、それとは別に、歌詞に多少の違和感を感じました。
花屋の店先に並んでいる花はみな園芸品種で、それぞれが何年にも渡る厳しい選抜を経て、これなら売れる、金になると判断されたものだけが店先に並んでいるのです。
この喩えでは、ナンバーワンにならなくてもいいという、この歌の伝えようとするメッセージとは真逆なような気がしました。

この歌の作者は、個性を大切にしてほしいという思いを込めて、この歌を書いたそうなのです。
しかし、個性、さらに言えば代替不可能性といった事柄は、いわゆる世俗の価値観とは異なる次元に属するもののように思えます。
現代の社会では、人は「従事者数」とか「利用者数」とかいった、個性の剥ぎ取られた数字で捉えられ、表されることが多いようです。
それとは別次元の異なる価値観を、市場で取引される商品としての性格を持つ花で喩えても、歌に込められたメッセージが伝わりにくいかもしれません。
この歌が多くの批判にさらされたのは、そのことにより、世俗的な価値観と、それとは別次元の価値観とが混同されたことが原因だったような気がします。

ならば、店先に並ぶ商品としての花ではなく、イエスが喩えたような野の花ならばいいのでしょか?
それについては次回にしたいと思います。

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