宗教や信仰についての雑記 #327
◯ダイエットと罪悪感
様々なメディアで時々、ダイエット中に甘いものなどを食べると罪悪感を感じる、ということが言われるようですが、誰も傷つけてもいないのになぜ罪悪感を感じるのかと、以前より私は違和感を感じていました。
ダイエットをする人の心理にはどのようなものがあるのか、私にははっきりとはわかりません。
しかしおそらくそこには、社会的な美の基準と自己管理という社会規範が内面化された、理想の自己イメージと自制心や自己規律、といったことが関わっているように思います。
そしてこの理想の自己イメージと自制心や自己規律、自己の欲望を抑えて高みを目指す心理といったことが、宗教的な心理とも共通しているような気がします。
心理学者のナタリー・ファインブラット氏は、ダイエットと宗教の類似性を以下の5点にまとめているそうです。
自己の変化に気づかせない: ダイエットでは、体重という目に見える変化に注目が集まりがちですが、身体的・精神的なダメージは軽視される傾向があります。
他のことに費やす時間を減らす:ダイエットに多くの時間を費やすことで、人間関係や趣味など、他の活動がおろそかになることがあります。
無力感を与える:特定のダイエット法がなければ痩せられないというメッセージが、ダイエット業界から発信されることがあります。
賞罰システム: 痩せると褒められ、リバウンドすると責められるなど、ダイエットには明確な賞罰システムが存在します。
絶対的な正しさ: ダイエット法は常に正しいとされ、失敗は個人の責任とされる傾向があります。
どうやらこのような宗教の類似性(特に賞罰システム)が、ダイエット中に甘いものなどを食べると罪悪感を感じる、という心理につながるようです。
一方、ダイエットが極端になると拒食症になってしまう危険性があることはよく知られていると思います。この拒食症には自己認識の歪みが深く関わっているそうです。
私はこの「自己認識の歪み」という言葉から、うつ病を思い浮かべました。そこでうつ病と拒食症に共通する要因について調べてみたところ以下のものがありました。
・低い自尊感情 :どちらも、自分自身に対して否定的な感情を抱き、価値を感じにくいという共通点があります。
・強いストレス: 生活環境の変化、人間関係の悩み、パーソナリティなど、様々なストレスが引き金となることがあります。
・完璧主義: 何事にも完璧を求め、自分自身に高い基準を設ける傾向があります。
・孤独感: 周囲の人とのつながりが希薄になり、孤独を感じやすいという特徴があります。
・抑うつ症状: どちらも抑うつ気分、意欲の低下、無気力感などの症状が見られます。
実際に、うつ病と拒食症はときに併存し、互いに症状を悪化させることもあるそうです。
そして以前の投稿(#324)で、うつ病が宗教の発生の要因のひとつとなった可能性について述べました。
以上のことをまとめると、
①ダイエットと宗教には類似性がある。
②ダイエットが極端になると拒食症になってしまう危険性がある。
③うつ病と拒食症には共通する要因がある。
④うつ病が宗教の発生の要因のひとつとなった可能性がある。
ということになります。
さらにそれらのことから考えると、
・うつ病と拒食症に共通する要因が宗教の発生と深く関わっている可能性がある。
・その付随的な結果として、拒食症の要因となりうるダイエットに宗教との類似性が観られる。
・ダイエットと宗教には類似性があるため、ダイエット中に甘いものなどを食べると罪悪感を感じてしまう。
ということになると思います。
なお、上記のダイエットとの類似性として挙げられた宗教的な要素は皆、宗教の負の側面のようです。
ダイエットを行う際はそのような危険性を常に留意して、注意深く合理的に行う必要があるようです。
ただ、ここでまた疑問が生じてきました。
以前の投稿(#324)では、うつ病の人々が、健康な人々よりも現実をより正確に把握しているという「うつ病リアリズム」という考え方について書きました。
しかし今回ではうつ病を「自己認識の歪み」という側面で捉えていて、矛盾するように思えます。
その点についてはまた次回に考えたいと思います。