宗教や信仰についての雑記 #87
◯ヒューマニズムの中の宗教や信仰
前回、ヒューマニズムの視点から宗教や信仰を理解することについて言及しました。
ヒューマニズムとは、人間性を尊重し、さまざまな束縛や抑圧による非人間的状態から人間の解放を目指す思想のことで、「人間主義」とも呼ばれているものだそうです。
このヒューマニズムの思想は現代では主流、というよりも言うまでもない当然のものとなっています。そのためか、様々な宗教や信仰に関する記述の中に、ヒューマニズムの視点からの理解によると思われるものが散見されます。
それらヒューマニズムの視点からの記述では、宗教や信仰は、倫理規定や行動規範、自己啓発といった観点で捉えられていて、それ以上のものとはみなされていません。そこでは宗教や信仰の重要な部分が見落とされてしまっているような気がします。
ヒューマニズムは人間の能力や可能性に大きな(ほぼ無限の)信頼を置いているため、それらの記述には超越者の視点や実存的な問題についての観点が欠けているように思えます。
無論、そのような超越者や実存的な見方が必要ない人(現代社会ではおそらく大多数)には、ヒューマニズム的な見方だけでいいでしょう。健康な人には薬が要らないのと同じことです。
しかし世の中の人はそのような人ばかりではありません。自分の存在や人生、そこで出遭う苦悩などの意味を宗教や信仰に求める人もいるはずです。そのことを無視して、超越者や実存的な見方が切り捨てられ、宗教や信仰とはそういうものだと決めつけられてしまうことを私は懸念しています。それは宗教や信仰の意義を矮小化して、新たな抑圧を生む危険性があるからです。
ダイバーシティ・アンド・インクルージョンという考え方がこの事柄にも必要なのではないでしょうか。
でも私自身も、知らないうちに何かを切り捨てて物事を考えている可能性もあります。ですからこのことは他山の石としなければならないとも思います。