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拝啓 精神障害者雇用をしている弊社へ
我が社では障害者雇用を「集合職場」という形で実現しています。特例子会社を作るのではなく、社内に障害者+それを監督するスタッフのチームを作り、他部署から簡単な業務を切り出し、集合職場へ委託してもらっています。
グループ会社全体でこの制度を導入しており、拠点は複数あります。同じ拠点内でも身体障害、知的障害、精神障害と、障害の種別でチームは分かれており、それぞれ障害特性にあった仕事を与えられています。
ある日、お話を耳にしました。
管理監督者が電話口で別の拠点の方と話をしているようでした。私は障害特性故か、仕事に集中していても他の人の話がはっきりと聞こえてしまいます。
「体調が悪いのにカレーとうどん食べたんでしょう?カレーなんて刺激物だし2人前は食べすぎでしょう。それはお腹壊しますよ。夕方お腹空くのが不安で沢山食べちゃうのはわかるけど、言うしかないんじゃないの?」
ああ、そういう人もいるんだな、大変そうだな。その方もしんどいだろうな。そう思っていた数週間後です。また管理監督者が話しています。
小さな声で私の拠点の指導員に「ほら、体調不良なのに食べすぎて具合悪くなってるの、指導員の指導不足だって。」
この会話、みなさまはどう受け止められましたか?私は「食べすぎ」と言われている方も、その方を指導する指導員も理不尽な目にあっていると感じました。
「夕方になるとお腹が空くのが不安」であることがわかっているならその不安を取り除かない限りその方は2人前食べ続けてしまうのでは?と思うのです。そしてその不安は「指導」により解消されるものではありません。
精神障害者ということは何かしらの治療を受けているはずですし、障害者雇用で働いているということは支援者がいるということです。会社から客観的に見て指導員が本当に何もしていなかったのならわかりますが、管理監督者に報告、相談しています。なんだか会社が罰する人を探し出しているような気がしました。障害を理由に障害者の評価を下げれば、それは「不当な差別」になってしまうでしょうし、支援者や主治医など社外の人のせいにもできません。社内で障害者の面倒を見ている指導員に責任を負わせることしかできないのです。
しかし、これってどうですか?障害者の管理するの嫌になりませんか?障害者に関わりたくないなってなりませんか?
精神障害が原因で起こしてしまう行動は様々です。しかしそれらは脳機能の障害によって起こされている行動であって、自由意志でやっていることではありません、と、少なくとも、当事者の私は感じます。指導されてすぐ治れば苦労しません。発達障害の私は会社で問題を指摘されたことを主治医に伝えても薬が増えることは基本的にはありません。会社に障害特性を理解してもらい、問題は今後も繰り返し起こること、それだけで評価しないようにしてもらうよう伝えるよう言われます。私のケースでは障害者支援機関(いわゆる中ポツ)の担当者と会話が成立しないので難しいですが、支援者からも積極的に働きかけるべきでしょう。そして何より支援員は、障害者が抱える「治らない」障害特性により、不当に評価を下げられないように会社に理解してもらう必要があります。
私がもっとも強調したいのは「会社が障害者を言うこと聞かせられないからと言って、彼らの監督を任せられている支援員等の評価を下げるべきでない」ということです。
障害者を積極的に雇う体制を敷いているからといって、評価制度が障害者に関わる人全員に公平なものとは限らないと感じます。会社側、会社全体の理解が足りていないと感じます。
俄然恵まれている方ではあります。大手グループ企業で倒産リスクも低く、仕事もいわゆる軽作業以上のレベルのものを任されています。短時間労働かつ最低賃金ですが私としては時給は過去最高額ですし不満はありません。
ただこの会社で直接私たち障害者に関わっている人々が、会社の「軽い」障害者観のせいで不利益を被り、巡り巡って障害者に不満を持つようになるのではないかと心配です。
時折ですが、「障害者への配慮は当たり前」という態度の方をお見受けします。サービス業の方にに事前連絡もなく突撃していって、配慮が足りないと騒ぎ立てるとか。
しかし違うんです。当たり前ではありません。人々に心や時間や金銭のゆとりがあって、お互いへのリスペクトを持てて初めて成立するのです。
もっと大きな話をすると、当たり前のことなんてありません。「してもらえること」は全てありがたい(有難い)のです。例えそれが社会福祉というシステム化されたものであっても。
私は会社が私を含めた障害者に対して、定期的な面談など、できることをしていることはとても歓迎しています。ありがたく思います。当たり前だなんて到底思いません。
ただ「障害は指導で治る」という勘違いを正してほしいのです。その勘違いによって障害者嫌悪を増長させないでほしいのです。
特に精神障害者は障害によっては、そして人によっては本当に関わりたくない対象かもしれません。そこには複合的な理由があるでしょう。
わかり合って暮らせる日はとても遠いと感じます。しかしその日ができるだけ早くやってくることを祈っています。
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