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腸内細菌と私 第4章 微量元素と生命活動



微量元素と生命活動


鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン、セレンなどは、人体のわずか0・02%を構成しているにすぎない微量元素ですが、人間の生命活動においてきわめて重要な働きをしています。亜鉛も鉄もカロリーでは表されないけれども、食べ物が分解、吸収されてさまざまなエネルギーに変わっていくためには、これらの微量元素が必要です。
鉄はすべての生物にとって必要なミネラルで、微量元素の中で人の体内に最も多く含まれているものです。酸素と結合しやすい鉄は赤血球のヘモグロビンの中核にあり、酸素の運搬係として働いています。私たちは血液中の酸素をとり込み、エネルギー代謝を行っています。
 

亜鉛の濃度

がもっとも高いのが内分泌腺、とくに生殖腺です。亜鉛はテストステロン(男性ホルモン)の代謝に不可欠の元素で、亜鉛の不足は前立腺の障害を招きます。
最近の報告では、この亜鉛は精液の中に多量(19・5mg/dl)に含まれ、尿でも1日の排尿中に0・045mg±0・015mg含有されています。1回の射精量5mlとしますと1mgを排出することになります。これは、莫大な量です。亜鉛は、1日15mgが必要とされ、鉄と同じように補給する必要があります。また、核酸(DNA)合成酵素やその他たくさんの酵素の材料として、細胞の修理や修復に欠くことができません。特に亜鉛はインシュリンの主要な成分になっています。
亜鉛はいくつかの方法で、免疫システムが細菌をやっつけるのを手伝います。まず、ヘルペスや風邪の原因であるウィルスに直接働きかけ、増殖力や感染力を弱めます。さらに、侵入してきた病原菌を発見して破壊する免疫細胞の働きを促進して、免疫システムの大事な機能を支えます。
また、亜鉛は抗酸化反応(活性酸素が細胞に与える悪影響を制限する)にもかかわり、ビタミンAとともに白血球が体内の細菌を攻撃するのを手助けします。胸腺から分泌されるホルモンを活性化させる働きも担います。
十二指腸では膵液と胆汁が分泌されます。そこで脂肪は膵液中のリパーゼという酵素によってグリセリンと脂肪酸に分解されます。亜鉛はそのリパーゼの活性基です。タンパク質は膵液の中のペプチターゼという酵素によって分解されますが、このペプチターゼの活性基も亜鉛です。
銅は鉄や亜鉛と比べてもごくわずかな量です。血管の裏などにあるエラスチンはゴムのような弾力のあるタンパク質で、これが整然と配列されているので血管は柔軟に生長することができるのですが、銅イオンはこのエラスチンを合成する働きがあります。また、銅はヘモグロビンが運んできた酸素を細胞に渡す重要な役割を持っています。


マンガンは愛情ミネラル

は炭水化物、タンパク質、脂肪を消化吸収する役割を持つ2~3種類の酵素が機能を発揮するための重要な働きや、肝臓が脂肪肝にならないように働くコリンをつくるのに必要です。不足すると糖代謝が乱れ血糖値を上げるとともに、血中脂肪酸の量を増し動脈硬化をもたらします。また、セックスも弱くなるなど、生殖機能の維持に関係し、マンガンが不足すると女性の受胎率が非常に悪くなるといわれています。

日本綜合医学会理事長の中嶋常允先生は、マンガンは生殖機能の維持に関係があるため「愛情ミネラル」と称され次のように述べられています。
マンガン不足の酪農地帯では受胎率が悪くなり、乳牛の場合1年に1頭産むのが3年に1頭程度になり、乳牛のお乳を搾ろうとすると乳房に触れられるのを嫌がり、蹴ろうとする牛がいます。そのような牛は発情期が遅れたり乱れたりしますから、自ずと受胎率が悪くなります。牛ばかりでなく昨今では人間も同じく、マンガン欠乏は女性の受胎率を非常に悪くし、性的不感症症候群に代表される男性を好まない女性が増えています。またマンガン欠乏は子供に対しては愛情がなくなり、赤ちゃんが生まれてもかわいがらない。例えば、子供の虐待、産み捨て、子供が泣くと無性に叩きたくなるなどの症状。これらもマンガン欠乏が一因になっているのではないかといわれています。
モリブデンはある種の酵素が酸化するのに働き、赤血球をつくる際にも役立っています。不足すると血中の尿酸値を高め痛風をもたらします。
セレンは男性の精子が合成されるときの活性基になります。男性が射精する時に精液と共に失われる微量元素。精力を増強する作用があり補給摂取が少ないと性機能が低下します。またセレンは、活性酸素(フリーラジカル)と戦う力強い物質である補酵素のグルタチオンペルオキシダーゼの活性化を促進します。昭和女子大大学院の木村修一教授(生活機構研究科)によると、

セレンなどが不足すると

、がんになりやすくなる可能性もあるといわれています。
ホウ素は摂取不足になると骨関節炎および骨粗鬆症の発生が見られます。
ヨウ素は脂質、糖質、タンパク質の各代謝を促進させ、余分な体脂肪を燃焼させ肥満を防ぎます。人間には必須成分で、1日0・014~0・033mgが必要量とされ、体の中のヨウ素の半分は甲状腺に集まり、甲状腺ホルモンを構成しています。ヨウ素が欠乏すると甲状腺機能の低下が起こり、発育障害、小人病、脈拍低下、体のむくみなどが現れます。また、性的興奮減退、不妊、肥満などが起こり、髪、皮膚、爪につやがなくなり活力がなくなります。
コバルトは主にヘモグロビンの成分となっています。欠乏すると悪性の貧血になります。

ケイ素

は体内では皮膚に最も多く分布し、爪、毛、髪、そして結合組織、骨にも比較的よく分布しています。また、ムコ多糖類やコラーゲン組織を強靭にしているエラスチンとして寄与しているため、動脈保護の役割もあります。
以上微量元素のことを述べてきましたが、これらの元素は腸内細菌が活動していくためには必要不可欠なもので、これらの微量元素がバランス良く体内に補給されてこそ、腸内細菌が喜んで働くことができ、必要な役割を果たすことができるのです。

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次回は
第5章 元気なおなかづくり微量元素と善玉菌で お楽しみください

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