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腸内細菌と私 第4章 元気を支える腸内善玉菌



善玉菌と悪玉菌


私たちの腸の中にはさまざまな細菌がすんでいます。その数は約100種類100兆個といわれる膨大なもので、この細菌が私たちの健康面で非常に重要な役割を果たしているのです。私たちの体にとって大切な良い働きをするのが善玉菌、悪い働きをするのが悪玉菌です。
◎善玉菌とは
善玉菌とは、有害物質をつくらず、タンパク質をアミノ酸や脂肪酸など、小さな分子になるまで分解し、私たちの体に良い働きをしてくれる腸内細菌です。
これらの菌はPH5~6の弱酸性の環境で活発に活動すると同時に、腸の環境整備をしてくれます。その代表的なものが乳酸菌です。
では、乳酸菌群はなぜおなかに良いのでしょう。
乳酸菌はおなかの中で活躍する過程において乳酸を出しています。この乳酸菌が腸の中で働き、つくり出す物質が、人体に有効なのです。乳酸菌がつくり出す乳酸は、腸内を弱酸性に保ってくれるため、他の善玉菌が暮らしやすい環境を提供してくれます。腸内が弱酸性になると、他の悪玉菌が繁殖しにくい環境になるため、悪玉菌の勢力を弱めます。また、殺菌力もあるので、他の悪玉菌のような有害な菌を殺します。その他、乳酸の産生物質が腸内を刺激するため、腸のぜん動運動が活発になりお通じも良くなるなど、多くの働きをしています。その上、人に悪影響を与える物質は産生しません。
悪玉菌に対して善玉菌が多いと、健康を維持することができますが、反対に悪玉菌が多いと食中毒(O・157など)や便秘、下痢、心臓病、脳卒中、ガンなど、色々と大変な病気を引き起こす原因になります。
また、欧米風の食生活、加工食品や食品添加物のとり過ぎ、ストレスや運動不足など色々な要因が腸内細菌のバランスを崩し病気へと移行していきます。健康維持には腸内細菌のバランスを良くすることがいかに大切かおわかりでしょう。

乳酸菌を増やす納豆菌


善玉菌は、繁殖する過程において酵素をつくります。例えば、納豆菌でいえばアミラーゼ・プロテアーゼ・リパーゼなど、たくさんの消化酵素をつくり出します。この酵素が消化活動の偉大なる主役だということは前にも述べました。この酵素がタンパク質やでんぷん質を小さな分子(アミノ酸、グリコーゲンなど)になるまでしっかり分解してくれるのです。また、納豆菌をたくさんとる人はとらない人に比べて、乳酸菌やビフィズス菌が10倍ぐらい増えるということです。乳酸菌や常在細菌など、おなかに非常にいい菌に対して、納豆菌はそれを抑えるわけではなく、むしろ増やしていきます。
人間の体にとってあまり良くない病原細菌に対しては、大変強い阻害をかける一方、これら乳酸菌群をはじめ有益菌を増やす応援団のボス的存在なのが納豆菌です。その他にも、腸内で私たちが食べた物の分解を行いながら、ビタミンなどもつくっているのです。
 
・良い働きをする菌(善玉菌)
 納豆菌、乳酸菌群など
・悪い働きをする菌(悪玉菌)
 ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌(毒性株)、バクテロイデス(毒性株)など

日和見菌(場合により善玉菌にも悪玉菌にもなる)


 大腸菌(無毒株)、バクテロイデス(無毒株)など
腸内環境の良し悪しは、多くの場合善玉菌の代表であるビフィズス菌と悪玉菌の代表であるウェルシュ菌とのどちらがどれだけ勢力を持っているかによって決まるのです。ビフィズス菌が伸びれば腸内環境は良好、ウェルシュ菌が増えれば腸内環境は悪化ということになります。私たちは自分の腸内環境を善玉菌優勢の状態に保つ、あるいは回復させなければ健康であることはできないのです。
では善玉菌(ここでは納豆菌)の働きを見てみましょう。
・病原菌の増殖を抑えて感染症を防ぐ。
・腐敗菌の増殖を抑えて腸内環境をきれいにする。
・ビタミンB群やビタミンKをつくる。
・消化酵素をつくる。
・乳酸菌やビフィズス菌を増やす。
・便秘を防ぐ。善玉菌が腸内で増殖すると代謝産物として乳酸や酢酸などの有機酸がつくられる。これが腸のぜん動運動を促進し便意を促す。
・免疫機能を刺激して体の抵抗力を高める。

悪玉菌とは


私たちの体に有害な物質をつくり出す菌を悪玉菌と呼んでいます。
タンパク質を分解する過程で、アンモニアやホルムアルデヒド、硫化水素など私たちの体に有害な物質をつくり出す悪玉菌は、アルカリ性の状態で活発に活動します。
アンモニアやホルムアルデヒド、硫化水素などが血液の中に多く含まれると、体調がおかしくなり、機能障害を起こし始めます。しかし、アンモニアや硫化水素がすべて悪いのかというとそうではありません。きちんと、これらの状態まで分解できたら、体にはさほど影響はないのですが、アルデヒド類やジエチルアミン、スカトール、メルカプタンと、タンパク質をきちんと分解できずに、その途中経過で分解するのを止めてしまう菌がいます。これらの有害物質が、私たちの体に大きな影響を与えてしまうのです。みなさんになじみの深い悪玉コレステロールも悪玉菌のつくった一つです。

悪玉菌の影響


悪玉菌が優勢になり、善玉菌が働けなくなった状態とは次の通りです。
・悪玉菌は腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて有害物質をつくり、これが血圧を上げたり老化を促進させる原因となる。場合によっては発ガン性物質をつくり出してしまう。
・下痢や便秘になりやすく、しばしば慢性化する。
・腸の排泄力が弱り、有害物質がたまりやすくなる。
・栄養消化吸収の機能が低下し、活力を失い老化が進行する。
・肝臓をはじめ、内臓に負担がかかる。
・口臭、毒血症、膣炎、イースト感染等。
・腸から吸収された有害物質が肌に影響を与え、ニキビ、肌荒れなどを起こす。
・善玉菌のつくる有機酸が減少して、ミネラルの吸収が阻害され、ミネラル欠乏症状を起こす。体の免疫力が低下し、さまざまな病気や感染症を引き起こしやすくなる。血液中のコレステロールが増加する。
・腸内の腐敗が進むと悪玉菌がつくるアンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質が、過剰に生産される。
・ホルモンや消化液が、悪玉菌によって毒性物質に変化する。
腸内環境が悪玉菌によって占拠されているような劣悪な状態だと、体全体がどれだけむしばまれてしまうかおわかりいただけたかと思います。
善玉菌の腸内フローラを育てる

腸の中の花畑



健康をとり戻すためには、まず有害な物質を体外に出すために排泄を促す食事をすることが必要です。腐敗物を排泄し腸内を浄化してバランスのとれた食生活に改めることで、体全体が徐々に浄化され健康になってきます。
約100種類あるといわれる腸内細菌は、同じ種類ごとに集まってすんでいます。その集まりを「腸内フローラ」あるいは「腸内細菌叢」と呼んでいます(フローラとは花畑のこと。顕微鏡で見ると草花が茂っているように見える)。
善玉菌のフローラが育つ健康な体をとり戻しましょう。乳酸菌群、納豆菌などの善玉菌のフローラがあるところには悪玉菌はすめないのです。なぜならそれらの善玉菌が繁殖しているときの腸内は酸性の環境に保たれているので、アルカリ性の環境で繁殖する悪玉菌は入り込めないからです。
赤ちゃんは初めて母乳を飲むのと同時に母乳の中に含まれるラクトース(乳糖)を体内にとり入れます。ラクトースによって赤ちゃんの腸は酸性の環境になります。乳酸菌(ビフィズス菌)は腸内に根を下ろしてフローラをつくり出します。ただし赤ちゃんのときに全体の99%を占めていたビフィズス菌も、幼児期になると10%まで減ってしまい、いろいろな種類の腸内細菌が増えていきます。それでも健康な人はビフィズス菌がもっとも優勢な腸内細菌として活躍しています。
年齢を重ねるとともに善玉菌は減っていきます。例えば60歳を過ぎると、ビフィズス菌はわずか1%程度になるといわれています。長年の生活習慣により腸内環境を悪化させてきたことによってますます病気になりやすくなるのです。生活習慣を改善し、食生活を見直し、腸内の代謝機能を回復させ、善玉菌が優勢な環境をとり戻す。おなかという大地を浄化し豊かにするとはそういうことです。その大地を維持することがいつまでも生き生きと生きられる秘訣なのです。
 

血液の汚れとは ベタベタ血液・ドロドロ血液


ドロドロ血液の原因の一つは腸内悪玉菌が多いために、タンパク質の分解がきちんとできず、体内でろ過されずに、血液の粘度が上がったためです。体内でろ過されると、血管壁から脂肪酸やアミノ酸などの栄養分が出ていき、筋肉細胞に入りエネルギーやいろいろな組織になりますが、分解されずに大きな分子(悪玉コレステロール)のまま血液の中に入り込むと、血管壁を通れないため、ドロドロした血液になり体に悪影響を及ぼします。
悪玉コレステロールと呼ばれるものは脂肪酸の一種ですが、これはきちんと分解されていない状態で(多分子)血液に吸収されたものです。腸内に悪玉菌を多く持つ人は、食べた物がきちんと分解されないため、悪玉コレステロールなどが血液にたまり、ドロドロした血をつくってしまうのです。
このように栄養分の分解不足がさらに増えるといっそう粘性が強まり、「疲れやすい」「集中力の低下」「冷え性」などの症状を訴えながら、5~10年もするととり返しのつかない病気を発病することになってしまいます。
善玉菌が増えると善玉菌が出す酵素は、タンパク質をアミノ酸に変え、また他の食べた物をおなかの中できれいに分解するので、悪玉コレステロールが減り、サラサラしたきれいな血液がつくられるのです。このように腸内悪玉菌の勢力が旺盛になる原因は、ストレスの多い生活と動物性タンパク質や脂肪、砂糖のとり過ぎなど、日頃の生活習慣からきます。

元気のもとはおなかから


すでにできてしまったものを排除することばかりを考えるのではなく、なぜそうなってしまったのかという原因を考えなければ、悪循環から抜け出すことはできません。何ごとも原因あっての結果です。腸内細菌の善玉菌味方群をどんどん増やし、健康な体を大切にすることを考えましょう。「急がば回れ」。善玉菌を応援してあげることが、私たちの健康につながっていく最大の近道なのです。

1分でわかる健将グループの理念
https://www.youtube.com/watch?   v=9u_K37jzI00&list=PLvvlO1rJRqzkdENcD5H1XVIP1s-UO1qWK&index=2

次回は
第4章 元気を支える腸内細菌、微量元素と生命活動です、お楽しみください。
 

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